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イン・ジ・アイランド  作者: ハルヤマノボル
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⑫ なんという欠陥、しかし引っかかるものがあった

 人は夢を見ている時、すなわち眠りの浅い状況下にある時、これまでの記憶の中に存在する他人と短期間共に何かを経験したような感覚を得る。

 それはもちろん全て脳内が作り出した虚構であり、実際にはあり得ないことが起こったりする。目が覚めることで初めて自分がその創造された世界に居たことに気付く。必死になって走ろうとしているのに足が上手く動かない。そんな夢を見たことはないだろうか。夢は人に時には絶望や恐怖を体験させたり、時には幸福や快感を経験させたりする。

 興味深いことは夢の中で音が聞こえるという点である。もちろんそこには夢の中で出会った人物の声が聞こえるということも含んでいる。

 音は発生源があり、そこから耳に届いて初めて脳内で音として捉えることが出来る。当たり前だが、夢の中で、つまりは脳内で音を出すことなど出来るはずもなく、夢の中では音が聞こえるような感覚を得ているだけに過ぎない。

 夢の中で音が聞こえるひとつの要因としては、その夢の中で出会う人間の音声や会話のクセを一種のデータとして脳内に記録しているからである。その記録が何らかの作用によって経験や記憶が脳内で再生され、夢の中で音が聞こえるような感覚を得るのである。

 そしてそれを応用したのが現在、入嶋とケインの間で行われているテレパシーを用いた会話である。

『まず僕が、いわゆる発信源が伝えたいことを脳内でデータ化し、入嶋さん、つまり転送先の脳内にあるチップに送ります。そこで入嶋さんの脳内に記録された僕の音声データを用いて再生することによってテレパシーを成り立たせているんです』

 脳内にチップが埋め込まれているという事実に多少の不快感を持ったが、現在この青年とテレパシーという高度な科学を体験しているという実感とそれに伴う高揚感であまり気にならなかった。

 たまたま読んでいた本の挿絵には、被験者が円型の装置を頭に取り付けられて脳波のようなものを測っている様子が描かれており、何の実験なのか分からなかった。しかしこういった研究の成果として完成したものを体験していると感じると思わず笑みがこぼれてしまう。これはノーベル賞に値するほどの発明だと入嶋の興奮は収まらなかった。

『入嶋さん』とまた音声が再生される。『興奮しているところ申し訳ないのですが、このテレパシー装置の欠点は思考が意図せず暴発することがあります。入嶋さんは特にその傾向が強いようで、先ほどからの思考のほとんどが僕に送られてきています』

 なんという欠陥、しかし引っかかるものがあった。私はこの部屋に入ってから一言も発していないはずだ。このテレパシー機能は音声データが無いと再生できないはずではないのか。

『その通りです。ですがそれ関して入嶋さんの音声データはゲイルから取得しています』

 入嶋は何もかも相手が知っていることに落胆し「はあ」とため息を解読不能の文字列にこぼした。しかし今までの思考を読み取られるという不快感の原因が分かったことでも十分である。自分に無理やりそう言い聞かせて腑に落とそうとした。

 そういえばダリアと言ったか、あの黒人ナースとの会話はテレパシーだったのか。いや、彼女の口が動いていたことは覚えているし、自分も声を出したことを覚えている。あれはいったいどういったことなのだろうか。入嶋は届いているはずだろうと言わんばかりの目線を青年に向けた。

『入嶋さん、あれは脳内のチップで行われている翻訳機能です。私は日本語や英語など様々な言語が話せますが、この島内には多様な人種がいるため、どうしても双方でコミュニケーションを円滑に行うのが難しいのです』

 青年によると相手から聞こえた音声を脳内のチップで翻訳し、自らが最も用いる言語かつもっとも音韻的に安定した音声で再生させる機能らしい。そして違和感を生んでしまう原因はやはり言語によっての音韻体系が異なり、脳内の音声データでは再現するのが難しい音があるためである。

『入嶋さん、テレパシーを多用するのは構いませんが疑問ばかりぶつけられると僕のしたい話が一向に進みません』

 青年が少し笑っているように入嶋は感じた。

 そう言えばあの青年、ケインというのは世界を救うとかいった話をしていたような。つまり私がその世界を救う救世主なのか。

『そうです』とケインから聞こえた時にはまた心臓の鼓動が早まるような感じがした。一端のカメラマンであるが故にこのようなスクープ間違いなしの状況に気分が高まるのはもはや性である。

『その前になぜ自分はこの島に呼ばれたのかはっきりさせておきたい』

 入嶋はそのように強く願った。先ほど成功したようにこれもケインの脳内に届いているはずだ。

『もちろんそれも踏まえてお話します。心して聞いて下さい』

(筆者のひとこと)

ここ前後のパートで勝手に作った設定というか伏線?を回収してどうにか話をまとめようと思っていますが、どう運ぶべきか思いつきません(涙)書き直すうちに見つかるといいのですが…。夢の話は完全なる創作です、でも夢って不思議ですよね。

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