軍師ロビン
なかなか更新されないのに、毎日見てくださってる方々本当にありがとうございます。
励みになりますみたいな月並みな事しかいえませんが。
嬉しい気持ちでいっぱいです。
ガタガタガタ、ガッチャンガッチャン。
金属の鎧の音と馬車の騒がしい音で目が覚める。
義勇兵に、宿は用意されてなく。
馬車の中がそのまま宿舎だが要塞内なので安全とは言える。
「総司令官がいらっしゃったぞー! トリン正規軍全体整列! 列を乱すは軍の恥だぞ! 」
「義勇兵は邪魔だ! 道を開けろ! 手の空いてるものは道を整備しろ!」
義勇兵とはいえ、所謂農民や町民の寄せ集めだ。
ヒラエルキーは正規軍の下らしい。
戦時以外は軍に従う必要はないが、農民あがりの義勇兵達はせこせこと手足のように動いている。
立場を自分で作るとはこの事だな。
一方立場は義勇兵と何ら変わらない俺。
この砦ではパルスとドエムルのおかげで有名になり、顔の一人と言っても過言ではない。
正規軍の兵卒も俺を見ると頭を下げてくる。
パルスはトリンの町の方の牧草地に、馬を取りに行ってる。
俺は皮鎧を着て馬車から出ると、義勇兵達に混ざり井戸から水を汲み顔を洗う。
「プハー! 目覚めに顔洗うとさっぱりするぜ」
義勇兵が上半身裸で、井戸前で口々に、総司令官の噂をしている。
まさに井戸端会議ってやつだ。
「総司令官ってロビンさんだよな!? 俺ファンなんだよな!」
「俺も俺も! ロビンさんが総司令官だから、勝ち戦に金稼ぎに参加したようなもんだぜ」
どの傭兵も口々にロビンの賛辞を上げ、英雄譚を語る。
戦に強い将軍ってのは、千の兵より頼れるものだ。
俺ですらこの砦で情報収集している時、何度も耳にした。
ロビンって奴は相当できる将軍らしいな。
馬車に帰り、ドエムルから話を聞く。
なんでも全戦全勝、兵を手足の様に動かし無駄がない。
自身も高位魔法を自在に操り、平等かつ合理的な物に軍法を書き換えた。
冒険者でこの星の身分には縛られず、諸侯に気に入られ王にすら謁見できる。
容姿も伊達男。
「話半分でも、使えそうなやつだ。自然にコネを作りてぇ所だが、まずは面でも拝むか」
「団長なら間違いなく重宝されますよ!」
ドエムルは目をキラキラしながら俺についてくる。
別に話聞いただけで、ついて来なくてもいいんだが……
まぁ、何かと知ってるし便利だろう。
俺はドエムルと団員10名そこらを連れ、正規軍の整列している方に向かう。
案の定正規軍の列の後ろには義勇兵の人だかりが列になっている。
全員が興奮したように話しているので騒がしい。
マラソンなりパレードなりでも始めるかの様だ。
身長の高い俺は遠くからでも見えるが、どうせなら前に行くか。
「おぅ、通してくれ」
「あ? ……あ、狸さん、どうぞどうぞもう総司令官殿通られますよ」
「お、ありがとな」
名前も何も知らない義勇兵だが、相手方は俺を知っている。
右拳を握ってグーにしてお互い合わせる。
これが義勇軍流の挨拶らしい。
黒人のファミリーみたいな連帯感がある挨拶で俺は気に入っている。
顔の広いドエムル達も各々挨拶しながら、俺についてくる。
「ドン! ドン! ドン!」
大地を振るわすような、太鼓の音と義勇兵達の地を割るような歓声。
それと共に、赤い二足歩行の竜にのった真っ赤なフルプレート
黒いマントと黒槍を携えた兵士達が列をなす。
真っ赤な竜はは二本足で立っており、足と正面の3本指カギ爪と牙が鋭い。
ダチョウのフォルムで、体高は首まで入れて2メートル。
それに爬虫類を詰め込んだような見た目。
簡単に言うなら、翼の無い赤い恐竜って感じだ。
風に煽られ、旗がばたばたとたなびく。
真っ赤なフルプレートに、赤い二足歩行の竜騎乗で数をそろえた軍は威圧感だ。
数でいうと500程か、赤い鎧・黒いマントに黒い槍。
全てが統一されている。
なかなか雰囲気あるな、さて総司令官はどこにいるかな?
馬車の屋根を取っ払い、赤い鎧を着せた大きな4匹の雄牛の後ろ。
兵に手を振りロビン様ロビン様と崇められる男がいる。
「ん? あれ、まさか! あの時のカウボーイじゃねえか」
「団長? まさかロビン将軍とお知合いですか?」
この星に来て、同じファーストクラスに乗っていた。最初に話した冒険者だ。
俺は義勇兵の中からずいずい前に出て、ロビンの方へ向かう。
「な! 団長! 流石に生き急ぎ過ぎですぜ!」
ドエムルが真っ青な顔をしてついてくる。
そして白目を向きながらドエムルの部下達も俺についてくる
俺やパルスが決めた事は、忠告しても止めはしないこれがドエムル傭兵団の決まりだ。
「お前らはいい、平気だと思うが戦闘になったら砦の様々な場所に火を放ち各自撤退。その後、スカライトの酒場に来な。どいつでもいいから狸に呼ばれたって言えばどうにかなる」
目を細くし、真剣な表情で頷くドエムル。
「命に代えても完遂いたします。……兵も何人か確実に死亡、よくてお尋ね者っすね」
腐ってもトランメル最大の軍だ。確かにそうなるだろうな。
下手するとトリン軍と敵対したらファルッカに移住せざる負えないかもしれない。
後で話を通してもらうことはできるだろう。
だが、トリン全市民全軍が注目している今だからこそリターンがでかい。
「臆したか?」
「差し出がましい事は承知していますが、死地に兵を送る故、成功の暁には褒美を受けたまわりたいっす」
拳を握り締め、震えながら決意した目で俺を見上げるドエムル。
こいつ根性はあるんだよな……確かに、言っている事は的を得ているし土壇場でも信頼に値する。
「そうだな、褒美を出そう金か?」
「パ、パルス様のつ、つ……」
つがい? パルスと結婚したいのか、パルス男なの知らないんだよなこいつ。
取引で嘘はつきたくない、しかし露見させるわけにも……どうしたものか。
「パルス様のつばをください!」
歓声が聞こえなくなるほどの静寂に、俺は精神から引っ張られた。
混乱の中から、一般的に命を賭けた男の欲しい物からかけ離れた提案。
長い無言の後、俺は口を開く
「……ん もう一度言ってくれ」
「パルス様のつばをください!」
こいつ本物の変な奴だ。
真摯な表情から本気で考え抜いて、畏怖している俺に勇気を振り絞って言っている。
その台詞がこれだ。
「お前はそれでいいのかもしれないが、部下達は……」
部下は皆下を見て震えている、こんな隊長持ちたくないよな。
てかよく今までついて行ったもんだ。
「ドエムル隊長! 一生ついて行きます!」
「おぉおぉぉぉおおおおおお! 隊長あんた最高の男だ!」
「隊長……あんた眩しすぎるよ、神だったのかよ」
周りの声援と別種の、ドエムル傭兵団にあがる声援。
ドエムル率いる10名全員が、一点の曇りもない戦にいく男の顔だ。
「分かった、約束する……頼んだぞ」
10名全員が一列に並び敬礼する。
「この命に代えましても!!」
兵達の中にバラバラに消えていったドエムル傭兵団。
ため息以外もう何も出ない、俺がおかしいのかとすら思える。
気を取り直して作戦実行だ。
列で道をを作ってた正規兵が、4人がかりで俺を止めに来る。
「おぃ、貴様列から出るな! ……あ、狸さん駄目ですよ。さすがにそれだけは駄目です!」
「ちげぇ、知り合いだ! いいから俺が優しいうちに道を開けろや」
「いや、でも……おぃ隊長呼んできてくれ!」
隊長来るまで待つはずもない俺は、正規兵の肩を掴みどかして進む。
後後、ここらで名を上げていたブユウを打ち取って、同じく有名なアロを追い詰めた事が分かり。
この前線基地じゃ俺は軽い英雄といっても過言ではない。
ちょっと進むと赤い陸戦型ドラゴンライダーとも言うべきか、近衛兵に囲まれる。
「間者だ! 密集陣形! ファランクスのB本隊は後退! 前衛回れ! 回れ!」
号令と共に、俺を中心に円を描きながら走る赤い兵士達。
サメのような包囲だが、どんどん走り出すドラゴンライダーは増える。
騎兵は走って初めて力を発揮する。このまま槍の竜巻でなます切りか。
「練度も中々なもんだ、噂通りの将軍ってわけだ。あのカーボーイ坊ちゃんがねぇ」
口から息を深く吐き出す。
そして大きく吸い込み、俺は大声で叫ぶ。
「俺の名は狸! スカライト市長の責務から、義勇軍としてはせ参じた! ロビン将軍とは縁あって旧知の仲だ確認しろ!」
低いが遠くまで通る声が広がっていく。
赤兵士の隊長格らしき人物が円から出てきた。
顔は赤いフルプレートで覆われていて見えないが、武器は先端が三つに分かれた槍。
海の神が持つ武器と形容するか、バースプーンの槍型というべきか。
統一された軍で武器違いが許されるのは、隊長格だろう。
「その言、信に値する証拠はあるか?」
「宇宙連合の制服アバターと、ファーストクラスと伝えてくれ」
隊長らしき男が左手を上げると、近くの赤兵士が本陣に走る。
確認に行ったらしい、隊長様は目は兜で見えないが熱い視線を俺に送っているだろう。
俺は堂々と腕を組み、相対する隊長だけを真剣な瞳で見つめる。
今の見せ方が今後に繋がる、舐められるわけにはいかない。
前線の英雄かつ、同盟町のスカライトの市長を切ることはない。
ここはトラメルだ、いきなり殺される事はないだろう。拘束されても、身元照会があるはず。
アバターの軍服が盗品なんて、情報が一切降りないこの星で露見するはずもない。
しかし、全て机上の理論であり博打だ。
俺の運命を握る、赤鎧が帰ってきた。
「将軍がお会いになる様だ、警備の任故、騎上からの口上で失礼する」
トリンドリームに繋がったようなだな。
パルスのつば、量聞いてなかったけどどれくらい出させればいいんだ。