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プレイヤーキラー  作者: 狗
欲望と野望
17/75

ブユウ・アロー・ユウキ



「やめろ」



「え? 兄さんなんて? あぁお先どうぞ当然の権利ですよね」



 気のきかせたような、下種な笑い顔にしゃくれた顎。シレネが俺に話しかける。

俺はふぅーっと息を吐き、傭兵達を見回す。

俺は礼の満面の笑みで、頭で作った設定トークをしていく。

アローはユウキを抱き寄せ震えながら俺を見上げている。



「あー兄さんたち済まないね、領主に頼まれてその親子を生け捕りにしろって言われてんだ」



「成程、まぁ味見してからでもいいじゃん?」



「いやいや、人語しゃべれるから変に話されても問題になるんだわ」



「ふーん、あんた真面目だね。モンスターのいう事信じないでしょ、モンスターは人じゃないから人権なんてないんだよ? 安心しなよお兄さん」



 そこまでして、オークとやりたいのかこいつらは。

俺とした事が、嫌悪感が顔に出てしまったようだ。



「あーもしかしてむかついちゃった?」



「いや、全く。とりあえずこのオークの権利は俺の物だから」



 ッシュとロングソードが俺の頬の横を掠める。

俺は手を振りながら、憤怒を後に誓い営業トークを続ける。

ここはトラメル、人を殺せば自動的にファルッカ行きだ。



「おぃおぃ、物騒だなシレネさんなんの冗談だいファルッカ送りになるよ」



「このオークを賭けて決闘しようじゃないか、そもそも黒弓のアローだ。手柄奪う気なのわからないかな? 馬鹿なのかな?」



「決闘で、死んでもファルッカ送りにならないんですか?」



 シレネは懐から赤い手袋を出して俺に投げた。

そして右手に赤い手袋の片方を装着して、しゃくれた顎をさすって脅す。



「左手につけるか、逃げるか選びな。こっちはフル装備6人戦っても死なない程度に半殺しだよ」



 手下の傭兵が笑いながら野次を飛ばしている

相当このシレネという男、腕に自信があるのだろう。



「これを付けたら相手が死んでもファルッカ送りにならないのか?」



「あんた図体でかくてドンくさいとは思ってたが、馬鹿な上に無知とは哀れだね。これは決闘アイテムで相手を殺してもカウントされない。何より無知なのは俺を100殺のシレネとしらない事さ!」



 俺は赤い手袋を受け取ると、左手につける。

赤く広い光の円ができるやいなや、シレネは剣を構え突きの様に突進してくる。

俺の獲物がハンマーだから、間合いを詰めればいいと思っている様だ。

俺が普通の人間で、このハンマーも普通なら良い戦法だ。



「串刺しさぁ!」



「あー茶番は終わりだな」



 俺は逆に前に走りだし、間合いを詰める。

ジョウシュヤ特性1.5倍スピードハンマーに俺の腕力を乗せる。

下段から上にフルスイングする、残像すら見える速さだ。



「な!?」



 大振りのハンマーがシレネの脳天を一瞬で破壊する。

首より上が吹き飛んだようだ。



「しゃくれた顎治してやったぜ、花火にしちゃ汚ねぇな」



 そして地を蹴り、唖然とするシレネの手下の兵士の真ん中へ飛び込む。

しゃがみながらハンマーを円を描くように振り回す。

傭兵5人の足が吹っ飛んだり、折れたりしている。




「ぎゃあああああああああああああ!」



「ぐおぁぁあぁ!」



 俺は傭兵の武器を蹴っ飛ばしていく。

飛び道具はなさそうだ。



「鎧着てるのに、随分もろいな……俺が強いだけか」



「た、助けてくれなんでもする!」


「痛い! 痛い!」


「がぁ、あああぁ」



 血の海の中傭兵達は、全員足を折れたりなかったりで。這い蹲っている。

俺は怯えたアローに近寄っていく。

アローの体がビクッと震え、斧を拾ってきたらしいユーキが斧を構える。



「こんな時に獲物離さないとは、やるじゃねーか! つっても人間の言葉わかんねーな」



 ゆうきは斧を持って、震えながら……

自分の母と俺の間に入る。

俺は満足したような顔で、バックパックからグレーターヒールの魔法を取り出す。

詠唱に少し時間を待たねばならないが、自動でスクロールが光ってくれる。

アローの右手が逆再生を見るように、治っていく。



「エ、ア……ナゼ」



 そして構えるユーキの斧を握ったユーキのこぶし毎握る。

身動きが一切できない、込められた俺の力で感じるはずだ。

しかし凛と俺を見据えたユーキの眼差しは、オークの子供とはいえ綺麗に見えた。

俺は地に這いつくばる傭兵を指さす。



「あいつら殺せ」



 意味は分からなくとも、言いたいことは伝わった様だ。

一歩ずつ傭兵に向かっていくユウキ。

母親の横に立つ俺に警戒はしても、逆らう気はない様だ。



「やめろやめろおおお!」



 無慈悲にユウキは足が動けない傭兵の命を、斧で摘み取っていく。

横から一人一人殺されていく傭兵達は、いつ自分が殺される番か正確にわかる。

逃げようと地を這う者、俺に命乞いする者。

最後張って逃げた者の真上に斧をふりかぶったユウキが到着する。



「グシャ」



 俺はそれを腕を組んで、見届ける。

最後の傭兵を殺し、血だらけの斧と体で俺によって来る。

俺に勝てないのが分かってるのか、斧を捨てた。



「アロ、ガ、ゲグ、アロ、タスケテ」



「あれ? 何で、おめー人語喋れるんだ?」



 次の瞬間ユウキの体が光を放ち、七色の光の線がユウキを包み大きくなっていく。

俺の膝くらいの小さな体は、170センチを超えるほどに。

筋肉が隆起して、持っていた片刃の手斧も両刃の大きなダブルアックスに。

そして頭は俺の殺したブユウのように羊の頭骸骨に覆われていた。

アロも口を開けて我が子を見ている。



「……進化ってやつか」



 ユウキは頭蓋骨の兜を脱ぎ、俺の前で座った。



「オマエ、チチコロシタ。シカシシンノキョウシャ。チチシアワセ、ハハスクッタカンシャササゲル」


「コノイノチホシイナラヤル」



 アローは口を開いた後に、つぐむ。

それを繰り返し、泣いていた。

オークの掟か、進化種族が偉くなるのか疑問が沸くが。

オークが仁義を通した。俺の器量が返答で問われるってもんだ。



「俺は強いか?」



「ツヨイ」



「強さってのはな、自分の我儘を通す力って事だ。大切な物を守ることも、欲しい物を得る事もすべて力しだいだ。男なら恋人と母親生涯この2人の女は守れるだけ強くなれ」



「セイレイガ、チチブユウノコエヲツゲタ。アリガトウ、ワタシモオナジキモチダ」



「いきなり人語うまくなりやがって、笑わせるぜ……ガラでもねーな。じゃあな」



 俺は何故か、こういうのに慣れてないのか走り出していた。

ユウキの親父は有名なオークだったんだよな、死体回収してくればよかった。

いや、それはかっこがつかない。しかし……



 気がついたら駐屯地に戻っていた。



 ドエムルとパルスがジャイアントスコーピオンに生肉を上げている。

遠巻きに人だかりが……そりゃできるだろ。

俺に気付くとドエムルがまた向かってきた。

パルスが止める前に俺の前に走ってきたドエムル。

こいつまだやる気か、と俺はドエムルににらみを利かす。



「あ?」



「この前のパンチもう一回お願いします!」



「あ? え? 何言ってんだおまえ」



「狸の親方! いや兄貴とよばせてください!」



 なんかドエムルの顔が赤く染まって、鼻息が荒い。

すねに傷を持つような傭兵団の頭とは思えない、なんというか変態のような顔だ。

何というか百戦錬磨の俺が、後ずさりしている。



「おねがいします! あんな凄いのオーガいやもっと、たまらないですハァハァ」



 いきなり上半身の皮鎧を脱ぎ始めた。

筋肉は締まっていて、歴戦の古傷が刻まれた戦士の肉体だ。

俺はどうしていいのか唖然として、口をあけたままドエムルを見てしまった。



「バシーン!」



 パルスの鞭がしなり、ドエムルの足に命中する。

跪くように倒れるドエムル。



「パ、パルス様!」



「人様の前に出るにはその卑しい餌豚の性格を、再教育してあげないとね」



「パルス様! 私は卑しい豚です是非罰を! 是非!」



 パルスのハイヒールで尻を踏まれたドエムル。

気がつけばドエムルの傭兵団、全員が調教済みのようだ。

皆涎をたらしてパルスを見ている。

最初の女をみる涎の方が正常といえるだろう。



「あ、た……狸。この子達の調教終わったら馬車戻るね。今日は何してたのかな?」



「あ、あぁ……なんか疲れたから寝るわ。今日はなんか全部調子狂うわ」



「そ、そなんだ。ゆ、ゆっくり休んでね」



 ドエムルがヒールで踏まれながらパルスを見上げる。



「パルス様は狸様の前だと、別人になられるんですね」



 ドエムルの背中に鞭がバシーンと振るわれる。

そしてドエムルの背に馬乗りになる、赤と黒の革ボンテージ女王様コスチュームのパルス。



「グッフ! ハァハァ パ、パルス様」



「お披露目も出来ない恥ずかしい豚だよお前は、豚が人の言葉しゃべってるんじゃないよ」



 パルスは太ももでドエムルの背中を締め上げる。

ドエムルの手下は羨ましそうにそのやり取りを見ている。

もはや駐屯地の名物になったといっても過言ではない。



「ブ、ブヒ! ブヒヒ!! ブヒーーーーーー!」



その声を馬車で聞き、耳をふさぎながら頭を抱えて寝る俺がいた。



「ガキのオークの方がマシって俺の手下どうなってんだ……」

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