円盤らしい人影
(お題:ねじれた視力 必須要素:CD)
CDを拾った。たぶん、カラスが落っことしていったものだ。最近のカラスはとても頭が良くて、この程度の光物は驚かずに持っていくし、カカシには余裕で止まり、ゴミ袋は破かないで結び目をほどいて中身を探るようになった。全生物統一テストでも行って、イルカとかクジラとどっちが賢いのか、どっちが本当に守るべき動物なのか測ってやればいいのに、とか思う。
僕はCDの真ん中に穿たれた穴を覗き込む。ピンボール効果で、多少視界が良くなった。良くなった視界の先に、白衣の男がやってくるのが見える。頭にCDをくっつけてないから内科医では無いらしいが、きっとこのシチュエーションからして眼科医だろう。ランドルト環をぶら下げて、僕の目玉の能力を測定しに来る。頭の具合とか、目の具合とか、あらゆるものを測定されてばっかりでうんざりしてくる。
僕が目からCDを離すと、白衣の男は消えた。故意に歪められた視力に敏感に反応してやってきた公安かなんかだったんだろうか。不正な視力。自家製の貨幣が法律で禁止されるのと同じレベルで、自家製の視力矯正はあんまりいけないこととなっているのだろうか。まあ、そんなことには興味もなく、僕は穴に指を突っ込んで回してみせる。ちょっと上手く回転し始めたので、空いている手の指を記録面へ、レコードの針みたいに近づけていってみた。一秒ほど擦れた後、何の音も立てずにCDは止まる。まあ、当たり前だ。
僕はCDを思い切りフリスビーのように放り投げてみた。生まれて初めてフリスビー以外の円盤状のものを投げたけど、あんな軽快に飛ぶとは思わなかった。僕は目を眇めて、あの薄っぺらい円盤の行き先を見送る。と、どこからともなく飛んできたカラスが円盤を鷲掴みにした。そのまま滑空して僕の真上に来ると、ぽとりと落っことしてくる。僕はもう一度穴を覗きこんでみた。白衣の男は現れなかったが、代わりに僕の視力は悪いままだった。
原稿用紙二枚でまとめるとこうなります。




