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お兄ちゃんとの貧乏生活を守り抜く99の方法  作者: 日々一陽
第三十二章~終章 お兄ちゃんとの貧乏生活を守り抜くたったひとつの理由
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第32章 第5話

 四月も終わり。

 五月の連休も過ぎて。

 人の流れが明らかに変わった。

 イベントホールやショッピングセンターからの人の流れが出来た。


 商店街が動いて、街にフリーの無線スポットが出来たり。

 正面の雑居ビルにモニサンのアイドル公式ショップのオープンが決まったり。

 最新の情報ではイベントホール近くにあった県内最大のアニメショップが手狭になったらしく、この中吉商店街へ移転することが決まったらしい。


 僕たちは勝利を確信した。

 勿論、ウィッグも激しく反撃をしてきた。

 今もテイクアウトカウンターの真横ではずっと無料の試飲カップを配っている。しかも甘めのラテにしてうちの味にかぶせてきた。それでもオーキッドのスイートコーヒーの売り上げは伸び続けている。


 ウィッグの店内無料試飲コーナーの席数も激増した。それでも週末の来客増加が激しすぎて全く対応出来ないようだ。路上ライブは話題が話題を呼んで、最近はモニサンの新人アイドルがライブに参加するに至っているのだ。


 僕たち兄妹に対する誹謗中傷のビラもかれた。僕が私生児で何も知らない健気な妹に手を出し、二股三股掛ける女ったらしで…… と、いい大人が高校生相手にそんなこと書くか? と言う内容。最初は頭に血が上ったが、教養高い通行人の皆さんは誰も本気にはしなかった。むしろそんなビラを撒くウィッグに対する信用だけが落ちていった。


 打つ手が尽きたのか、最近月守さんの顔色が悪い。

 多分、八つ墓村支店への左遷をチラつかされているのだろう。


「八つ墓村ってどこにあるんですか?」


 先日路上でばったり会った月守さんにそう尋ねたのだが。


「うるさいうるさいうるさ~い!!」


 彼は耳を両手で塞ぎ、商店街を全力で駆け抜けていった。

 僕は純粋に八つ墓村がどこにあるかを知りたかっただけなのだが。


 今日は土曜日。

 時間は昼過ぎになろうとしている。

 よく晴れた空、今日も通りはとても賑やか。

 勿論、店内も満員御礼だ。


「悠くん、携帯が鳴ってるわよ!」


 横で皿を洗う麻美華に言われ、棚に置いていた携帯を取る。


「はい、神代ですが」

「やあ悠也くんか。なかなか調子に乗ってるようじゃの」

「桂小路!」


 久しぶりに聞く桂小路の声。

 負けを認めて和解を申し入れようというのか?

 僕がそんなことを思っていると。


「席の予約を頼む。四人じゃ。当然ゆったりしたソファーの広いVIP席でな」

「えっと、うちは予約とかは受け付けておりま……」

「じゃあ一時間後にな」

「あっ、ちょっ! ちょっと!」


 電話は一方的に切られた。


「お兄ちゃん何だったの? 桂小路からだったの?」

「ああ、一時間後に来るってさ。四人席予約だって」

「誰と、何しに来るのかな?」

「僕たちの勝ちを認めて和解、とか?」

「そうかな? 桂小路は往生際が悪いからね」


 確かにイヤな予感しかしない。


「追い返そうか?」

「追い返しても問題が先送りなるだけだよ」

「そうだな」


 礼名はお客さんが帰ったあとの四人席に「Reserved」の札を立てる。


「どんな手段を使ってきても負けないよね、お兄ちゃん!」

「ああ、勿論だ」


 そして彼は電話通りきっちり一時間後に現れた。


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