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3日前 トレーニング

スムーズに書けたので連日投稿。

この調子で早く道化師のプロローグを書き終えたい。

『こんばんわ、センパイさん』

「こんばんわ、シホちゃん。今大丈夫?」

『はい、大丈夫です』

「それじゃあ昨日と同じ酒場で待ってるよ」


 アロー達といつものテーブルで今日の予定を話し合う。

 途中でシホちゃんも合流して話し合った結果、今日の予定はオオウサギとマヨイイヌをひたすら狩ることに決まった。


「それでは皆さん、今日もよろしくお願いします」

「っと、その前に魔法を買いに行こうか。早めに買って回復魔法のスキルを成長させよう」

「はい!」

「センパイ、俺達は先に南の門に行って待ってるっす」

「何でだ? 一緒に行けばいいだろう」

「いやっすねぇ、言わせないでくださいっす」


 笑顔でそうのたまうマウントにアイアンクローをお見舞いしてやる。


「ははは、センパイ。ゲームの中では握力が弱いようっすね。全然痛くないっすよ」

「俺のアイアンクローが効かないだと!? ……って馬鹿なことやってないでさっさと行くぞ」

「乗ったくせにそれはないっすよ」

「冗談は置いておいて、実際魔法の売ってる店って狭いらしいじゃないですか。だからセンパイとシホちゃんで行ってきてください」

「確かに6人は多いが3・4人くらいなら入れる広さのはずだが……」

「全員でいけないなら買う本人と案内がいれば十分ですよ」

「だったらルビーが……」


 俺とアローがルビーのほうを向く。


「あたし今日はマウントと離れたくない」

「俺もお前と少しでも離れるなんて考えたくもないぜ」


 芝居がかった動作でガバッと抱き合う2人。


「だそうです」


 これ以上誰かに振るのもシホちゃんに失礼か。

 俺はシホちゃんに気づかれないように小さくため息をつく。


「わかった、南門で待ってろ」

「了解です!」


 くそっ、なんていい返事だ。余計にムカつく。


 シホちゃんを連れて魔法店へと向かう。

 後でからかわれないように早く済ませてしまおう。


「どうやって選んだらいいんですか?」


 説明は省くことにして、適当なスクロールを一枚渡す。


「おお、こうやって確認するんですか」

「3150Bまでのものにしてね」

「はい……って、それだとセンパイさんに借りることになると思うんですが」

「それくらい出すさ。そう高い額でもないらしいし」


 俺がそう言われたときは200Bだったけどってことは伝えない。


「うぅ、なんだか申し訳ないです」

「気にしない気にしない、シホちゃんが強くなれば俺達も楽になると思うし」

「わかりました! 私センパイさんに楽してもらえるように頑張ります」


 そういうと、回復の棚にあるスクロールを次々と手にしていくシホちゃん。

 あれでちゃんと選べるのだろうか?


「これにします!」


 その声と共にスクロールを天に突き出すシホちゃん。思った以上に早く決まったな。

 不安に思いながら見せてもらう。

 詠唱は少し長いが3M内にいる単体を対象とした回復魔法で回復量も十分のようだ。

 値段を見るとぴったり3150B、なんという買い物上手。


「うん、問題なさそうだね。じゃあこれ」


 そういってお金を渡す。


「すぐに買ってきます!」


 勢い良くカウンターに向かっていく。

 なんだか今日はテンションが高いな。


 買い物を終え、南門へ向かう。

 そこでアロー達と合流し、今は南の草原だ。


「それじゃあ、まずはシホちゃんがどの程度戦えるか見せてもらおうか。そこにいるオオウサギ相手に1人で戦ってみて」


 そういってアローが指差した先には1匹のオオウサギ。


「は、はい! やってみます!」


 両手で杖を握り締めオオウサギに近づいていくシホちゃん。すぐ近くまでいくと杖を頭の上に大きく振りかぶって勢い良く振り下ろした。

 しかし、杖が振り下ろされた場所はオオウサギから20cmぐらい離れた地面だった。

 これはまさか……。


「シホちゃん、目つぶってないか?」

「多分そうだと思います。これで目を開けてるんだったら直接攻撃に関しては不可能と諦めるべきです」


 外したことに気づいたのか今度は横に振りかぶるとまた勢い良く振る。

 オオウサギは吹っ飛んだがその姿勢で止まっている。

 そうしている間にオオウサギが姿勢を整えシホちゃんへと跳びかかった。


「危ない!!」

「え!?」


 オオウサギの体当たりはシホちゃんの腹にクリーンヒット。

 シホちゃんは苦しそうな声を上げてうずくまってしまった。

 跳びかかったオオウサギは、綺麗に着地するとまた跳びかかろうと姿勢を整える。


「シホちゃん!!」


 俺は昨日買った投げナイフをベルトから、抜いた勢いのままに投げつける。

 ナイフはウサギの胴体をかすり、オオウサギは跳ぶタイミングを逃す。

 そしてこちらへと目標を変えるオオウサギ。近づいて来たところを剣で真っ二つにしてやった。

 切ったオオウサギをそのままにシホちゃんへと駆け寄る、剥ぎ取りはアローあたりがやってくれる。


「大丈夫?」

「うぅ、すいません」

「とりあえず、回復魔法をかけよっか」

「初めての回復が自分になるなんて……」


 シホちゃんはゆっくりと立ち上がり詠唱を始める。

 その間にアロー達の元へと戻る。


「アロー」

「はい。付っきりで鍛えるんですね。頑張ってください」

「ああ、そのとおりなんだが……」

「その間僕達は狩りでもしてますから、気にしないでください」

「悪いな」


 話が終わるとアロー達は二言三言交わし、南のほうへと歩いていった。


「――ヒール!」


 どうやらシホちゃんの回復も終わったらしい。


「あれ? 皆さんは?」

「シホちゃん、残念だけど今の君の実力では俺達の狩りには連れて行けそうにない」

「えっ!? そんな!! それじゃあ、お別れですか?」

「違う。今から君のトレーニングをする!」

「トレーニングですか?」

「そう。今日は何時まで大丈夫?」

「22時までは大丈夫です」

「それならせめてオオウサギ位は1人で倒せるように頑張ろうか」

「わかりました。私、頑張ります!」

「よし。じゃあまずは俺が壁になるから反対から攻撃して」


 辺りを見回しオオウサギを探す。

 見つけたら近づいて軽く蹴る。

 その後、シホちゃんに反対側から攻撃してもらう。

 そして、オオウサギがシホちゃんにターゲットを変えようとしたらまた軽く蹴ってやる。

 悪いところはそのつど注意しながら、これを繰り返そう。


「シホちゃん目つぶってる!」

「はい! すみません!」


 これは30分くらいで直った。


「ほら! 動きから跳ぶ方向を予測して!」

「はい! わかりました!」


 これは更に1時間くらいで出来るようになった。


「大振りなってるから気をつけろ!」

「はぁっ、はぁっ……。気をつけますぅ……」


 更に30分くらいで疲れが出てきたようだ。

 そこからはたまにオオウサギの攻撃がシホちゃんにいくようにした。


「オオウサギがそっち向いたぞ!」

「はぁ……はぁ……。はい……」


 そうして戦い続けること3時間弱、倒したオオウサギは全部で8匹だった。


「お疲れ様、これなら明日からは一緒に狩りができるな」

「はぁ……はぁ……。ほんとですか……」

「ああ、1体1ならマヨイイヌでも何とかなる位にはしたつもりだ」

「……私、後衛ですよね? ……そんなに鍛える必要……あったんですか?」

「もちろんだ。後衛だからって必ず守れるわけじゃないからな。いざという時に少しでも時間が稼げれば、その間に立て直しが出来るかもしれない」

「……そうなんですか?」

「そうなんだ。備えあれば憂いなしってことだな」


 途中から鍛えるのが楽しくなったのが本当の理由なんだが。これは言わないでおこう。


「……ところで、いつの間にか喋り方が素に戻ってましたね」

「そういえばそうだな。……丁寧な喋り方に戻したほうがいいか?」

「いえ……、そのままでお願いします」


 戻して欲しいと言われないでよかった。丁寧な喋り方が苦手というわけではないが、素で喋れるならそのほうが楽だ。


「ところで、そろそろ22時になるぞ」

「うわっ、ホントだ!?」

「それじゃあ、今日はここまでだな。明日もログインしたら連絡で良いか?」

「はい。それでお願いします」

「それじゃあ、おやすみ」

「おやすみなさい、センパイさん」


 丁寧にお辞儀をして消えていくシホちゃん。

 ……言葉使いは素でオッケーをもらえたし、ちゃん付けもやめていいか明日聞いてみよう。

 それじゃあ合流するかとウィンドウを操作しアローにコールするも出ない。

 他のメンバーにコールしても出てくれなかったので多分戦闘中だろう。

 今日は1人でオオウサギでも狩ってるか。


 その後1時間待っても返信がなかったのでログアウトすることにした。

 1時間で狩ったオオウサギの数は7匹。4日前に比べると成長してることが良くわかる。

 そのことにちょっと浮かれながらログアウト、明日は何を狩ろうかな。

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