表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/32

4日前 少女

始めまして、作者です。

挨拶もない拙作にブックマークをつけていただきありがとうございます。

初めての小説のため筆が遅く不定期での更新となりますが、お楽しみいただけたらと思います。

「あの~・・・・・・」


 そこには剣を捧げるように持った中高生くらいの女の子がいた。

 俺が投げた剣を持ってきてくれたみたいだ。


「その、ありがとうございました! 助かりました!」


 そう言って勢いよく頭を下げる。

 なんか、すごい感謝されてるなぁ・・・・・・。


「気にしないでいいよ。たまたま通りがかっただけだから」

「何言ってるんですかぁ。あたし、センパイが急に走り出したから何事かと思ったんですけどぉ・・・・・・。こういうことだったんですねぇ」


 ルビーがニヤニヤしながら口を挟む。


「そうだったんですか! 本当にありがとうございます!!」


 先ほどの勢いのままにより深いお辞儀をする少女。

 ルビーめ、余計なことを喋りやがって・・・・・・。


「センパイ、剥ぎ取り終わりました。・・・・・・その子は?」

「うん? 今のマヨイイヌ達に追っかけられてた子だ」


 アロー達も剥ぎ取りを終え、俺達の元に集まってきた。


「み、皆さんもありがとうございました!」


 またも勢いのある深々としたお辞儀をする少女。

 なんとなく水飲み鳥を連想させるな。


「それで、どうしてあんなことになってたの?」

「それは」

「センパァイ。こんなところで立ち話ってのはどうかと思いますよぉ。依頼の報告もありますしぃ、町まで戻りましょお」


 確かにルビーの言うとおりだ。

 一旦、街に帰ることにしようか。


 町への帰り道、少女とルビーが楽しそうに喋っている。

 女性同士で話が合うようだ。

 おしゃべりに気を取られている今のうちに少女を観察しておこう。

 容姿は少し茶色がかった黒い髪は肩に触れない程度の短髪。少したれた目と下がった眉毛は見る者に守ってあげたいと感じさせる。

 背が低く全体的に小柄なのだが、そのせいで程々の大きさの胸なのに巨乳に見える。いわゆるトランジスタグラマーと呼ばれる体型だ。

 服装は俺らと変わらず、始めたときにきている皮製の鎧だ。

 武器らしきものも見当たらないが、魔法などの攻撃手段があれば不思議ではないか。

 あまりじろじろ観察するのも失礼かなと思い少女から視線をはずす。

 町はもう、すぐそこだった。




 町へと帰ってきた俺たちは、落ち着いて話せる場所としていつもの酒場へ向かった。

 依頼の報告をし、いつも使っているテーブルで報酬を分ける。

 俺と少女が対面する形ですわり、ルビーとマトバが少女の隣に座っていた。


「改めて本当にありがとうございました」

「さっきも言ったけど気にしなくていいよ。俺だけじゃ助けられなかっただろうし」

「逆に、僕たちだけだと気付かなかったですけどね」

「だからセンパイ君には、しっかりと感謝してあげて下さい」


 ルビーといいアロー達といい、なぜ余計なことを言うのか。

 そう思っていたらアローが俺の耳に口を寄せてきた。 


「センパイ前に彼女欲しいって言ってましたよね。これをきっかけにアタックしてみたらどうですか?」

「なっ!?」


 こいつは何を言ってるんだろうか?

 俺は30手前のおっさん。見た目15、6歳の少女とは、話や趣味、嗜好などが合わないだろう。

 だいたい、ゲームで助けたくらいで惚れるなんて、そんな小説みたいなことが現実にあるわけがない。

 彼女が欲しいって言ったのも3ヶ月も前のことだし、そもそも半分冗談みたいなもので・・・・・・。


 と、思考を巡らせていると笑いをこらえるアローが目に入った。

 ・・・・・・なんだよ、からかっただけかよ。

 そう思って他の面々を見ると、何事かと不思議そうな顔をしている少女以外は全員親指を立ててこっちをみている。

 俺の周りには馬鹿しかいなかったらしい・・・・・・まあ冗談だろうが。


「どうかしたんですか?」


 少女の言葉で我にかえる。


「あ、いや、なんでもない」

「ええ、何でもありません。いつものことですから気にしないでください」


 マトバのありがたくないフォローも入ったので話を本筋に戻そう。


「まずは自己紹介しよう。俺はセンパイって呼ばれている。リアルでも知り合いで、一緒にパーティー組んでる」


 俺に続いてルビー以外が自己紹介する。

 ルビーは町に戻っているときにでも済ませていたようだ。


「私の名前はシホです」

「じゃあ、シホちゃんでいいか」

「ちょっとなれなれしくない!」

「距離感感じるよりはいいだろうが!」

「二人とも、イチャつかないでください」


 ルビーとマウントが言い合いを始めそうになるのをアローがとめる。

 ルビーの行動は嫉妬から来るものだったようで、アローがイチャつくと形容した途端に顔を真っ赤にして背けた。

 それこそいつものことなので、気にせず話を進めるとしよう。


「それで、何であれだけのマヨイイヌに追っかけられてたの?」

「・・・・・・あっ、はい。私のジョブの一つが〈魔物使い〉なんです、それでオオウサギを狙っていろいろ試していたんですけど」

「試してたってどうゆうこと?」

「センパイ君。それは、まだ魔物を仲間にする方法がわかってないからだと思うよ」

「はい、そうなんです」


 マトバ達言がうには、βテストをプレイしていたときは最初からジョブに合わせたスキルをいくつか覚えていたらしく、スキルを何も覚えていない状態で始まる正規版では取得方法がわからないスキルが結構な数のプレイヤーを悩ませているそうだ。


「なるほど。続けて」

「はい。・・・・・・それが上手くいかなくて、もー無理!!って後ろに倒れこんだらそこにマヨイイヌがいて、つぶしちゃって」

「それが攻撃と判断されたのかな?」

「そうです。1匹だけだったんで応戦したんですけど・・・」

「ちょっと待って、武器は持ってないようだけど素手で応戦したの?」

「そのときは杖を持っていたんです。逃げるときに邪魔だったんで投げ捨てましたけど。・・・・・・それで、しばらくは何とか応戦したんですけど、近くによってきた別のマヨイイヌが襲い掛かってきちゃったんで勝てないと思って走って逃げたんです」

「なるほど、あの数は逃げてる間に増えたって訳だね」

「はい」

「ちなみにジョブ構成は?」

「〈魔物使い〉〈治癒士〉〈料理人〉です」

「仲間は?」

「いつもは友達と一緒なんですけど家族旅行に行ってしまったんで、帰って来るまでは1人です」


 確かに不運であったことは間違いないが、そのジョブ構成は1人で戦うものとは思えない。一時的にでもパーティーを組むべきだっただろう。

 しかし、聞かれたことに何でも答えるな。ジョブ構成もそうだろうが、1人であることを出会ったばかりのプレイヤーに教えちゃだめだ。

 全体的に危機感が足りない。

 守ってあげたい容姿というのは訂正しよう、守ってあげないといけないタイプの子のようだ。


「・・・・・・友達が帰って来るのはいつ?」

「土曜日の夜です。なので、日曜日の朝からまた一緒に遊べます」

「そうか・・・・・・」


 これは、その友達が帰って来るまでは俺達で面倒を見たほうがよさそうだ。


「アロー・・・・・・」

「パーティーに誘うんですよね。わかってますよ」


 なぜ、名前を呼んだだけで俺が考えてることを言い当てるのだろうか?

 俺が考えてることは、わかりやすいんだろうか・・・・・・。


「ボクもマウント君達も問題ないですよ」


 そう笑顔で答えるマトバ。

 なぜだろう、何かよからぬことを考えている気がする・・・・・・。


「シホちゃん、よかったら友達が帰って来るまで俺達とパーティーを組まないか?」

「え? いいんですか?」

「こっちから誘ってるんだから良いも悪いもないよ」

「ありがとうございます! 助かります!」


 そうして勢いよくお辞儀。シホちゃんは感情が高ぶると動作が激しくなるようだ。

 パーティー参加の申請はアローが出しシホちゃんがそれを受諾。

 俺もパーティーウィンドウにシホちゃんの名前が追加されているのを確認した。


「センパイ、この後はどうしますか? まだ時間ありますけど」


 時間を確認すると21時少し前、いつもは23時くらいにやめているので後2時間くらいはあるな。


「シホちゃんは時間大丈夫?」

「はい。後1時間くらいですけど」

「それなら・・・・・・」

「あっ。あたし買い物に行きたいんですけどぉ」

「買い物?」


 今日行ったばかりなんだが、買い忘れでもあったのか?


「はいぃ。結構な量になるんで荷物持ちを手伝って欲しいなぁって」

「わかった。それならみんなで・・・・・・」

「はい! 僕が手伝います」

「いや、だからみんな・・・・・・」

「ボクも手伝おうじゃないか」

「だからみんなで行けば・・・・・・」

「センパイはぁ、シホちゃんと一緒にぃ、シホちゃんの装備を買ってきてくださぁい」


 強引な会話の流れに作為的なものを感じる。


「それなら、女の子同士でルビーのほうが・・・・・・」

「いろいろと買うんであたしがいないと駄目なんですよぉ」


 まさか、俺とシホちゃんを二人きりにする気か!

 さっきは冗談だと思ったが本気だったなんて・・・・・・。

 言葉が出ずうなだれる俺の肩をマウントが優しく叩く。


「マウント、おまえは・・・・・・」

「センパイ・・・・・・。健闘を祈るっす!!」

「だと思ったよ!!」


 残念ながら味方はいなかった。

 なお、シホちゃんは終始おろおろしていた。




 俺とシホちゃんはアロー達と酒場の前でわかれた。

 俺の手にはルビーが書いた武器屋と防具屋への地図があり、その地図に従って歩いている。


「・・・・・・はぁ」

「・・・・・・あの、なんかすみません。私のせいで」

「え!? いやいや、シホちゃんは悪くないよ。こっちこそごめんね、こんなおっさんと二人っきりで」

「私はイヤじゃないですよ。センパイさんと二人っきりでも」

「そう? それならいいんだけど・・・」


 中央広場から東の大通りへ向かう。

 この大通り沿いに武器屋と防具屋が並んであるらしい。


「おっ、ここみたいだ」


 左手側に剣が斜めに描かれた看板の店があった。

 その奥の店には立てが描かれた看板があった。


「まずは武器屋からだな」

「はい」


 シホちゃんには1人で杖を選んでもらい、俺はその間に店の中を見て回る。

 さっきのこともあり予備の武器か遠距離用の武器を探す。

 そうして選んだのがベルト付き投げナイフ5本セット、お値段1000Bだ。

 補充用のナイフも1本150Bとそこまで高くない。


「センパイさん」

「なに? シホちゃん」


 他にも何かないかなーと店の中を回っていた俺をシホちゃんが呼ぶ。

 シホちゃんは杖のラックの前で1本の杖を手に持って立っていた。


「武器ってどう選んだらいいんでしょうか」

「どうって・・・・・・攻撃力で選べばいいんじゃないかな」

「それはわかっているんです、でも見ただけじゃ攻撃力なんてわからなくて」


 何を言ってるんだろうと思いながら渡されるまま杖を受け取る。

 すぐに目の前にウィンドウが現れるが、そこにはノーマルスタッフという名前しか書かれていなかった。

 そういえば、武器についてのウィンドウを見るのはこれが初めてだな。


「確かにこれじゃあわからないな」

「そうなんです・・・・・・」

「わかった、ちょっと待ってね」


 俺はマトバにフレンドコールした。

 マトバは槍を新調したようだったし、武器の選び方もわかっているだろう。


『おやおや、デート中に男に連絡するなんて、もしかしてセンパイ君はそっちのケが・・・・・・』

「デートじゃないし、そっちのケもない! それより聞きたいことがあるんだ」

『何ですか? あいにくこの町のデートスポットは知りませんよ』

「いい加減にしてくれ・・・・・・。今武器屋にいるんだが、武器のステータスが見れなくてな、何を基準に武器を選べばいいかわかるか?」

『ああそのことですか。僕達もさっきそれで余計な時間を使ったんですよね。とりあえずはどうしようもないので値段で決めるか、雰囲気で決めるかしかないです』

「雰囲気?」

『武器の造りや使われた素材の見た目、後は名前ですかね。シホ君は杖ですから攻撃力なら金属、魔法なら木等の自然のもののほうがいいかも知れません』

「わかった。ありがとうマトバ」

『はい。それではまた後で』


 マトバさんはシホちゃんを君付けで呼ぶのか。

 まあ、あのキャラでちゃん付けは少し違和感があるからしょうがないか。

 それより、シホちゃんの場合はどういった杖がいいだろうか。


「シホちゃんの友達ってどんな戦闘用ジョブ持ってた?」

「確か・・・・・・〈槌使い〉〈斥候〉〈採掘士〉だったと思います」


 うわぁ、友達のジョブも全部喋ちゃったよ。

 これが信用されてるからなら良いけど・・・・・・いや、良くないか。もしそうだとしたら簡単に信用しすぎだ。


「・・・・・・センパイさん。どうかしましたか?」

「ん? いやなんでもないよ。武器のことだけどシホちゃんは木製の杖がいいんじゃないかな。その中で自分の持っているお金と相談して決めれば良いと思うよ」

「・・・・・・それでも、何本かあるんですけど・・・・・・」

「後はシホちゃんの直感で決めて良いと思う」


 そう告げるとシホちゃんは両手に持っていた杖を見比べうなり始める。


「その2本で悩んでるの? よかったら見せてくれる」

「はい、どっちも甲乙つけがたいんですよね」


 シホちゃんが持っていた杖を見せてもらう。

 右の杖は樫の木の杖、左の杖は樫の木の杖・・・・・・形も同じように見える。

 これは同じものなんじゃないだろうか。

 

「右の杖のほうが温かみが感じられて、左の杖のほうは持っていると気が引き締まるんですけど」

「俺にはその気持ちはわからないけど・・・・・・シホちゃんは〈治癒士〉だから温か味のあるほうがいいんじゃないかな?」

「そうですね、そうします」


 カウンターでそれぞれ支払いを済ませると隣の防具屋へ向かう。


「防具ですか・・・・・・私は何を買えばいいんでしょうか?」

「魔法使いだとローブが定番だけど、それに囚われずいろいろ見てみると良いと思うよ」


 こっちでも別々に商品を見る。

 俺はベビーリザードの皮製という手甲と脚甲を3000Bで買った。

 こちらもさっきの戦いで素手での戦闘をした時に必要だと思ったからだ。

 シホちゃんはソウゲンカラスのローブを買っていた。

 これで俺の手元には450Bしかなくなった。シホちゃんは2700B残ったそうだ。

 2人の所持金を足せば魔法がひとつ位なら買えそうだな。


「シホちゃんは回復魔法は買ってある?」

「いいえ、買ってません」


 魔法が売っていたのはどこだったかな。

 思い出そうにも浮かんでくるのはルビーのわかりにくい説明だけ、これはルビーに聞くしかないかな。


『あれぇ、デート中に他の女に電話なんて最低ですよぉ、セ・ン・・・・・・』

「魔法の店の場所を教えてくれ」

『ンもう、からかわれてくれても良いじゃないですかぁセンパイ』

「うるさい。で? どこにあるんだ」

『中央広場から北に行ってぇ、左手側の最初の角を曲がってぇ、右左と曲がったところでぇす』

「ありがとう、行ってみるよ」

『はぁい、また何かあったら連絡くださぁい』


 少しわかりづらいが行けばわかるか?


「ルビーから魔法の店の場所を聞いたから行ってみよう」

「あの申し訳ないんですけど・・・・・・」

「どうしたの?」

「そろそろやめないと・・・・・・」

「あっ、もうそんな時間だったのか。わかった今日はここまでにしよう。明日はどうする? シホちゃんの方が早くログインすると思うんだけど」

「マヨイイヌに気をつけてオオウサギを狩ってます。センパイさん達がログインしたら連絡ください」

「わかった。それじゃあおやすみ」

「おやすみなさいです」


 シホちゃんが目の前から消える。

 ログアウトするとこういう風に見えるのか。

 

 その後、店の位置を確認、少し迷ってしまいアロー達とは合流せずにログアウトした。

ご意見ご感想もお待ちしております。


少女の防具について修正しました

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ