5日前 ギルド
「昨日は何かあった?」
俺は[老騎士]のメンバーと酒場でテーブルを囲み、昨日の話を聞いていた。
「昨日はそれぞれβテストのときの友人達とギルドを作ってましたよ」
「ギルド?」
「《RMMO》では、1人のマスターと6人以上のメンバーがいればギルドが作れるんです」
俺の質問にアローが説明してくれた。
アローの説明によるとギルドはギルマス(ギルドマスター)とメンバーを含めた7人以上から結成でき、メンバー同士の遠距離でのチャットとコール(通話)ができる。
ギルマス以外にサブマスターを複数登録でき、ギルマスはサブマスターの任命・解任、メンバーの登録・抹消、ギルド内のルールの設定等ができる。
サブマスターは特に決まった権限はなく、ギルマスによって権限を与えられるいわば副官的な役割だ。
ギルド専用の住居となるギルドハウスを入手すればできることも増えていくらしい。
「で、僕とマウントで作ったのが【大地の腕】。マウントがマスターで僕はサブマスです」
「近接戦闘が好きな奴らを集めたギルドっす」
「あたしのギルドは【シロウサギ】っていいまぁす。あたしがギルマスの服飾系ギルドなんですよぉ」
「ボクの所は、ボクみたいなゲーマーの老人ロールプレイヤーを集めた【老練なる騎士団】です。技巧派戦闘ギルドとして名を上げる予定ですよ」
「マトバさんもギルマスっすよ」
「ギルマスばっかりだな」
「これでもβテストのときはトッププレイヤーでしたから」
確かに、それならギルマスを任されるだろうな。
って、そんなメンバーの中、俺は周りからどのように見えるのだろうか?
お荷物とか寄生なんて見られ方はしたくないなぁ。
「それでぇ、今日はどうするぅ?」
「今日はパーティーでマヨイイヌを狙おう。センパイもそれでいいですか?」
「俺はまだまだ初心者だからな。アローに任せるよ」
「しゃっあ! 腕が鳴るぜ」
「マウント君、まだ依頼を受けていませんよ。落ち着いてください」
「あっ! すいません」
方針が決まったと同時に外に向かおうとしたマウントがマトバさんに止めらる。
そのまま説教されるマウントを背中に、俺は依頼をカウンターへと持っていった。
----------
マヨイイヌ退治
ゴミを荒らすマヨイイヌを退治してください。
目標:マヨイイヌ10匹×人数
報酬:450B×人数
期限:3日
----------
「気をつけろよ」
マスターの変わらない一言を聞き流し、俺たちは南の平原へ向かった。
「センパイ、戦う前に注意点があります」
辺りを見回しマヨイイヌを探していると、アローが急に声をかけてきた。
「注意点? ソロとパーティーの違いについてか?」
「いえ。それに関してはソロに比べて若干熟練度があがりにくくなるくらいしか違いはありません」
「じゃあ、何だ?」
「マヨイイヌについてです。マヨイイヌはリンク、範囲内にいる同種の魔物が増援として襲ってくるタイプの魔物なので戦闘中も周囲の警戒が必要なんです。警戒に関しては僕が担当するんですが、新手が後ろから来た場合にルビーの守りについて欲しいんです」
「俺が?」
能力的に考えれば防御はマトバ、速さで考えるならアローが適任だろう。
なぜ俺に頼むんだろうか?
「はい。マトバさんでは素早く後ろに回れませんし、僕が守りにつくと周囲の警戒ができません」
言われてマトバを見ると一昨日はなかった木製のタワーシールドらしきものを背負い袋から無理やり引っ張り出そうとしている。
昨日買ったんだろうけど、無理やり背負い袋に入れなくても・・・・・・。
俺の視線を感じたのか
「センパイ君を驚かせたくて隠していたんですが、ちょっと無理がありましたね」
なんていってきた。
「まあ、そういうわけです。来る方向を大雑把に言いますんで、左右後方から来た時に対応してください。マヨイイヌ自体の攻撃手段は引っかきと噛み付きになります。剣で受け止められる程度の威力のはずなので、1人でも十分に抑えられると思います。その間にルビーの魔法で優先して攻撃します」
「わかった。後方に敵がいない場合は俺も前への攻撃に参加して問題はないか?」
「はい、只いつでも動けるように注意だけしておいてください」
アローの立てた作戦を頭の中で反芻し、どう動くのが効率的かを考える。
その間にアローが獲物を探し出す。
よし! 狩りを始めるか。