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三個目:真面目にて失恋中


「すまないが、今そういうのに興味ない」

 いつもの無表情のまま、彼は冷淡に言った。



「フラれ、」

「フラれたか」

「せめて叫ばせてよ!」


 自棄になって叫ぶ美衣に、いつかの日のように大爆笑する靖之。

 それを傍観して和んでいるクラスメイト。今日は失恋相手が相手なため、仕方ないよと笑っている人もいる。


「――それで、今回は?」

「二個上の風祭先輩! クールな風紀委員長! 大人で紳士なところが好き! でも一番は真面目で秀才なところ! でも真面目すぎて何に対しても興味ないんだって!」

「ほーう、風祭先輩ねえ……また吉岡先輩とは離れたな」

「もういいの、あんな草食は! 真摯的な風祭先輩がいいの!」

「でもフラれたんだろ?」

「シャアアアアアアアアアアアアア!!」


 更に勢いの増した威嚇は、耳に痛い。靖之は耳を塞いで呆れの情報で見ている。

 クラスメイトは事前に用意した耳栓を取っていた。


「くそう……なんでフラれるんだ」

「理想が高すぎるんだろ」

「イケメンだったらいいんだもん」

「本音すぎ。てか、それが高いって言ってるんだよ。お前超絶美形だけ選ぶなよ」

「だって……だってええええ」

「はいはい、泣き止め泣き止め。飴やるよ」


 ポン、とまた優しく頭を撫でる。

 飴という単語に顔をあげた美衣。目が晴れている。


「次はいいヤツ選べよな」


 これも、いつも通りの一つ。



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