三個目:真面目にて失恋中
「すまないが、今そういうのに興味ない」
いつもの無表情のまま、彼は冷淡に言った。
※
「フラれ、」
「フラれたか」
「せめて叫ばせてよ!」
自棄になって叫ぶ美衣に、いつかの日のように大爆笑する靖之。
それを傍観して和んでいるクラスメイト。今日は失恋相手が相手なため、仕方ないよと笑っている人もいる。
「――それで、今回は?」
「二個上の風祭先輩! クールな風紀委員長! 大人で紳士なところが好き! でも一番は真面目で秀才なところ! でも真面目すぎて何に対しても興味ないんだって!」
「ほーう、風祭先輩ねえ……また吉岡先輩とは離れたな」
「もういいの、あんな草食は! 真摯的な風祭先輩がいいの!」
「でもフラれたんだろ?」
「シャアアアアアアアアアアアアア!!」
更に勢いの増した威嚇は、耳に痛い。靖之は耳を塞いで呆れの情報で見ている。
クラスメイトは事前に用意した耳栓を取っていた。
「くそう……なんでフラれるんだ」
「理想が高すぎるんだろ」
「イケメンだったらいいんだもん」
「本音すぎ。てか、それが高いって言ってるんだよ。お前超絶美形だけ選ぶなよ」
「だって……だってええええ」
「はいはい、泣き止め泣き止め。飴やるよ」
ポン、とまた優しく頭を撫でる。
飴という単語に顔をあげた美衣。目が晴れている。
「次はいいヤツ選べよな」
これも、いつも通りの一つ。




