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ラグナロク  作者: 古来通
召喚されし者
8/13

小島の城

 太陽は傾き、夕暮れになりつつあるなか、少年はえいと名乗る少女に少し古風な車に乗せられていた。

 車はガタガタと音を立てながら目的地へと向かっているようだ。


「あの~・・・衛さんでしたっけ?」


 少年が少しおどおどと聞くと、衛はこちらに視線を向けた。


「なにかご用ですか?・・・え~と・・・・・お名前聞きましたっけ?」


 どうやら名前を聞くのを忘れていたようで、少年は少し姿勢をただし名前を答えた。


「えっと・・・。浅尾一真といいます。」

「そうですか。で?一真さん。なにか?」


 一真と名乗った少年に、特に興味もなさげに、そして淡々と聞いた。

 一真はそんな衛に若干引きつつ、最初に言おうと思っていた質問をした。


「オリジナルとか・・・レグルス?とかってなんなの?」


 それは、少年が車に乗せられる前に、衛が発していた『ようこそオリジナルへ。そしてレグルスへ。』という言葉からの質問だろう。


「その話ですか。私はてっきりまだ強姦の話をするのかと思いましたよ。」


 それは、少年が車に乗った後に聞いた質問だった。


「まったく、『俺は強姦してないのか!?』『行くのは監獄なのか!?』って。少しは自分を信じれないんですか?」

「あれは!!パニックになってただけだって!!わかる!?パァニィック。」


 必死に身ぶり手ぶり、そして口で応じる一真を面倒くさそうに見ながら衛は口を開いた。


「まあ本題に戻りますと、『オリジナル』と『レグルス』の説明ですか。・・・ふぅ。」

「また、面倒くさそうにため息つくなあんたは。」

「黙っといてください。質問に答えるんで。」


 ジロリと睨みをきかせる衛に、一真は視線をずらして「はい。」と弱弱しく答えた。


「とりあえず、『レグルス』私たちがいる国の名前です。レグルスは緑が豊かで水も豊富。おまけに海に面しているので海の幸も美味しい、最高の国です。」

「なぜあんたはそんなことを、無表情でほとんど抑揚もなしに言いきるんだ?」

「黙っといてください。」

「ふぇい。」


 一真がそう答えると、車の中は再び沈黙に包まれた。

 車はガタガタと音を立てながら目的地へと向かう。


「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」

「・・・・・で!?オリジナルについては!?」

「ああ、忘れてました。」

「忘れんなよ!!」


 一真が乗り出してツッコミを入れると、衛は少し睨んできたがすぐに普通の顔になり、視線を窓の外に向けた。


「オリジナルについては、あそこにいる人が教えてくれますよ。」


 一真も衛が見ている窓の外に視線を向けると、町の数百メートル先に、下がまったく見えないほど深い崖があり、そのまた数百メートル先には盛り上がったように山があるのが見えた。

 その山の頂上には家がいくつかあり、その真ん中のあたりには、かなり高く聳え立つ城があった。


「ほら。あなたが逃げてきたところですよ~。祭壇からなのであのてっぺんからですね。」

「てっぺん!?あの高さから!?」

「そうですけど。」

「よく死ななかったな。俺。」


 一真が驚いていると、衛は一真の方を向き食いつき気味に聞いてきた。


「そういえば、あなたのことは門番も見かけなかったというのですが、あの橋は使わなかったのですか?」


 そう言って衛が指差しているのは、おそらく城の入口から伸びている橋だろう。

 その橋を見ながら一真は首を振って答えた。


「残念ながら。気が気でなかったせいかよく覚えてない。・・・でも橋は使ったかも。」

「そうですか。門番にはアルコール検査でもしておきます。」

「・・・・。で?なんでそんなこと聞くんだよ。」


 一真がそう聞くと、衛は再び窓の外に視線を向けた。


「この国は、海に面しているといいましたよね。」

「ああ、海の幸が美味いとか言ってたな。」

「ええ。・・・で、昨日が満月だったので、今日は満ち潮の日なんですよ。」


 衛がそう言ったすぐあと。地鳴りのような音が聞こえてきた。


「おい。なんか聞こえないか?地響きっていうか、そんな感じの?」


 一真が心配そうに衛に尋ねると、衛は窓の外を指差し、答えた。


「だから言ったでしょう。今日は満ち潮だって。」


 一真は衛の指差す方をみると、そこには驚きの光景が広がっていた。

 大量の水が押し寄せてきているのだ。どうやら地鳴りは水の流れる音のようだった。

 崖は大量の水で覆い尽くされ、城のある山は家のある頂上ギリギリまで水に沈み、こちらの陸も、崖ギリギリまで水が迫っていた。

 水の流れが止まった時、一真が崖だと思っていたところは海になり、山だと思っていたところは小島になっていた。


「もしあなたがいまの時間に城を逃げ出していたら、潮が満ちるのに巻き込まれていたでしょう。」


 その光景は一真をゾッとさせることを忘れさせるくらい綺麗であった。


どうも、投稿しました。

城の様子を書いてみたんですけど、想像できましたでしょうか?

どうしても想像できない。という方は、設定として参考にさせて頂いた【モンサンミシェル】というものを検索してみてください。

では、またお会いしましょう。(V)o¥o(V)

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