日没後の町
夜・・・いよいよカップル達で埋め尽くされるであろう大通りを抜け、少年は小道を歩いていた。向かう先はおそらく客の入りがあまり良くなく営業してるのかさえわからない、あのデパートだろう。なにか決意じみた顔をしながら歩く少年は過去を思い出す・・・
夜といえば、自分が初めて好きになった少女に告白をした時間だ。人伝に上手くメールアドレスを手に入れ、正直な自分の気持ちを伝えた。しかし駄目だった。少女は、少年が小学生の時に起こした事故を酷く飾り付けられた状態で聞かされていて、少年のことを恐れており、返事は他人からきいたものだった。こうして少年の初恋は散ったのだった。
そういえば今日はクリスマスイヴなのだが、少年は生まれてから16年クリスマスプレゼントを貰ったことはない。そもそも少年はサンタクロースなる人物を昔から信じていなかった。なぜなら「サンタは親」という子供の夢ぶち壊しの話を聞いたときに、なるほど納得した。母を亡くし、働いているのは父だけだった。お金が無いわけではないのだが、子供にはいろいろとお金が掛かる。成長するだけで自然と負担をかけてしまうのに、さらにサンタとなってプレゼントにまで金を掛けてくれたと知るのも嫌だったから残念ではない。なので塾などに行かなくていいようにたくさん勉強をして、父にいつか恩返しをしようと頑張った。
深夜・・・少年はデパートの屋上にいた。閉店時間は過ぎていたが屋上に人がいることに気付かなかったようだ。まだ少し明るい町を見下ろし少年はまた過去を振り返る・・・
深夜といえば、これはつい先週起きた出来事なのだが、祖父と父が死んだ。詳しく言うと、殺された。犯人は特定できず、家も封鎖になった。なので1週間ほど母方の祖母の家にやっかいになることになった。
武道を教えてくれた祖父、育ててくれた父、その大切な2人を一度になくし、いまだに胸の奥にある不快なものは消えず少年の精神を貪った。
大切な人達だった。はっきり言って彼らがいない生活なんて嫌だ。もう生きる意味がない。
祖父と父が死んだと聞いた時、その瞬間にはもう「死のう」と思った。
他人に迷惑をかけるのも嫌だったから、自ら命を絶つことにしていた。
だからここに来た
少年は高さ30メートルはある屋上の淵に立った
もう自分に残っているものなんか何もありはしない
少年は無気力に体制を崩し、落下する
もう後戻りはできない。このまま落ちていくしかない
重力に引っ張られ、落下しながらそんなことを考えた
刹那、少年を光が包んだ
少年は消えた