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花麒麟  作者: 清風 緑
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ライラック


高2の春、自転車で大胆に道路を横断した俺はド派手に車に撥ねられた。

その時の記憶は鮮明に残っている。

事故にあって分かったことは、走馬灯はよぎらないことと、本当にスローモーションのように車が迫ってくること。


「2週間ほどで退院できると思うよ。にしても、車に撥ねられたのに随分と軽傷だね、かすり傷と足の骨1本で済むとはね」

ベッドの上で目を覚ました俺に向かって、感心したように医者が呟く。

「そうですか、ありがとうございます」

軽傷なのに2週間も入院しなくてはいけないのかと言いそうになるがぐっとこらえる。


「じゃ、とりあえずここで大人しくしててね。何かあったらいつでも言ってくれていいから」

上辺だけの言葉を残して、医者はさっさと出て行ってしまった。


「結局上辺だけなんだよなぁ……」


ぽつりと言った言葉が俺しかいない病室に響いた気がした。




次の日、暇を持て余していた俺の耳に、ガシャン!と、何かが割れるような音。


「隣の部屋か……?」


気になってしまい、手近に置いておいた松葉杖をひっつかむ。

中学の時に酷い捻挫をしたことがあったので、松葉杖の扱い方はしっかりと覚えている。


隣の部屋の前まで行くと、なぜか扉が開いていた。

ベッドの上には俯いている少女がいる。視線を床に移してみれば、水と破片、花弁が散っていた。どうやら花瓶が割れたようだ。


「……あの、大丈夫か?」

俺に気付いていなかったのか、急に声を掛けられた少女はびくりと肩を震わせる。


「花瓶、割れてるけど」

どうやら花瓶はベッドの近くのテーブルに置いてあったようだ。恐らく何かの拍子で手が当たって花瓶が落ちたのだろう。


俺の呼びかけに、少女は怯えたように縮こまるばかりで片付けようとはしない。


「良かったら手伝おうか?」

自分でもなぜそのような言葉が口をついたのか分からない。


「あの……私、歩けなくて……片づけてもらえたら……うっ嬉しいです」

か細い声。でも確かに少女は俺にそう言った。


これが、彼女と初めて行ったやりとりだった。

新シリーズ!5話以内で終わる予定のお話です。

苦手な恋愛ものに挑戦してみました!


なぜか花言葉を多く使いたくなったので、作中でも少しは登場する予定。

ちなみにサブタイトルのライラックには「思い出」「初恋」などの意味があります。


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