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クリムゾンブラッド  作者: 樹 詠慎
~一章:華鞍絢爛~
3/4

二説:ようこそ特別公安四課へ

この物語はフィクションです。

登場する団体・人物などの名称はすべて架空のものです。

作中には暴力的・中傷的な表現が含まれております。

そのような描写の苦手な方はご注意ください。

「・・ば・・・お・・・・さい。」


・・・何です・・・か?


「あ・ば・ん・お・てく・さ・。」


・・・待って・・・ください。


「あいばくん、おきてください。」


・・・今、起きますから・・・。


「相馬くん、起きてください。」


・・・分かりましたよ。何度も呼ばないでください。


目を開くと目の前に灰羽課長の笑顔があった。


「うわっ。」


思わず声を上げて距離を取るために仰け反ろうとしてソファから転げ落ちる。


「やぁ、ようやく目覚めてくれましたね。

 このまま眠ったままでしたら

 次の“姫の目覚め”作戦を実行する所でした。」


「・・・嫌な予感しかしないですけど、その作戦って。」


「えぇ、魔法の呪縛を解くにはキスが良いと本で書いてありましたので

 それを実行してみようと思っていました。」


聡一郎は反射的にソファを盾に灰羽課長との距離を取る。


「そ、そもそも物語の登場人物は姫と王子ですよ!!

 組み合わせが間違ってますよっ!!

 それ以前に自分のは呪いの魔法じゃなくて睡眠薬です!!

 効果が切れれば目覚めますよっ!!」


「私は気にしていませんけどね。

 それよりも好奇心が上まってしまいましてね。

 このお話の真実を知るチャンスを失ってしまったのは非常に残念です。

 どうやら少しばかり睡眠薬の量が多かったみたいですね。

 あれから日が変わってしまいましたよ。」


灰羽課長は口を引き上げて笑うと反対側のソファに腰を落として

聡一郎にも座るように手を招く。

聡一郎は警戒しながら先ほどまで寝ていたソファに腰を下ろした。


「ようこそ、特別公安四課へ。

 ここが我々、四課の拠点になります。」


聡一郎は事務所を見渡す。

マンションの一室のような作りの部屋だ。

床も壁もコンクリートがむき出しになっている。

壁側にはダンボールが乱雑に積み上げられて壁一帯を占領していた。

中央には各職員のデスクがあり、旧世代のPCが置かれている。

お世辞にも綺麗な事務所とは言えなかった。


「・・・何だか酷く殺風景な事務所ですね。」


「えぇ、残念なことに四課のみなさんは日常生活に関心がないのですよ。

 それに事務所には荷物を置きに来る時ぐらいしか帰ってこないですし。

 良かったら事務所のリフォームでもしてみます?」


「謹んでお断りします。

 自分は建築に関する知識も芸術的センスもないですし、

 整理整頓も得意じゃないです。

 何しろ平凡ですから・・・。

 雨風が凌げれば、仕事の環境に関して文句は言いません。

 でも、奥の右側の部屋の扉だけ雰囲気が違いますね。

 何と言うか、可愛らしい感じで・・・。」


「あぁ、あの部屋は監視班の百瀬君の専用部屋です。

 彼女はあの部屋に篭って街に設置されている監視モニタの

 映像監視を行ってもらっているのですよ。

 事務所に常駐しているのは私と彼女ぐらいですね。

 最も彼女は部屋からほとんど出てこないですし、

 何より無口ですので私としては話し相手がいなくて寂しい限りです。

 まずは四課の一員として彼女の紹介をしておきましょうか。

 あ、残りの二部屋はどちらも資料用倉庫になっています。」


事務所の右奥部屋前の扉の可愛らしい装飾はネームプレートだった。

何かのマスコットキャラクターだろうか。

ウサギのようなデザインの可愛いキャラクターが怒った顔で

プリントされており吹き出しには、可愛らしい丸文字で

“ノックして!!”と書かれている。

プレートの周りには造花がデコレートされていた。

その扉を灰羽課長がノックする。

部屋の奥で物音がして、しばらくすると扉が開いた。

扉から出てきたのは幼い少女だった。

黒い髪の毛は長く、床にまで届いており、

前髪はネームプレートと同じうさぎキャラのヘアピンで左右に束ねられていた。

服は髪の色と対照的な真っ白なワンピースを着ている。


「あの・・・どう見ても子供ですよ!!

 四課は労働基準法を犯して、こんな幼い子供に仕事をさせているのですか!!」


法の遵守に則り、国と国民を守るべき組織が法に背いて業務遂行していることに

怒りを覚えて声を荒げて目の前のにやけた笑顔の上司に抗議する。


「相馬君、落ち着いてください。

 彼女も眷族です。

 相手の見た目だけで判断するのはこの街で生活する上で危険なことですよ。

 これでも彼女は相馬君の数倍は生きています。

 さて、百瀬君。

 監視中すみませんね。

 先日付けで新人の方が四課に配属されましたのでご紹介をしておきます。

 こちらが特別四課監視班の百瀬桃香(ももせ ももか)君です。

 そして、相場聡一郎君です。

 相場君は捜査班に所属することになります。」


「本日付で特別四課捜査班に配属されました相馬総一郎です。

 よろしくお願いします。」


納得し難いものはあるが律儀に敬礼姿勢で挨拶を行う。

百瀬桃香は敬礼姿の聡一郎を見上げると静かに右手を上げる。


「んっ」


聡一郎は思わず差し向けられた掌を見つめる。

すると目があった。

あったというのは視線が合ったのだが問題は顔の位置ではなく、

掌の目と視線が合ったのだ。


「わっ!!」


聡一郎は驚いて腰を落とす。

百瀬桃香はじっと聡一郎を見つめる。

灰羽課長は後ろで喉を鳴らして笑う。


「百瀬君。

 初日から驚かしてはいけませんよ。

 あ、正しくは2日目でしたね。

 まぁ、私も言えた義理ではありませんがね。

 相馬君、分かって頂けましたかな。

 彼女はかつて百目と呼ばれたことのある眷族です。

 能力のおかげで一度に多くの監視映像を見ることが出来ます。

 その影響か分かりませんが会話機能が欠落していましてね。

 優秀な一員なのですが私にとってはいるのに

 会話ができないという悲しさがあります。

 百瀬君、ありがとう。

 戻って頂いて構いませんよ。」


「ん」


灰羽課長の言葉に少女はうなずいて部屋に戻っていった。

聡一郎は立ち上がりながら四課が妖怪で構成されていることを思い出した。

灰羽課長は夜叉鴉、さっきの百瀬という少女は百目。

灰羽課長の落ち着いた話し方でそのことをいつの間にか忘れてしまっていた。


「まぁまぁ、そんな怖い顔をなさらず。

 話を相場君のお仕事に戻しましょうか。」


再び来客用コーナーに戻ってソファに腰を落とす。


「先日に少しお話しましたがある事件の捜査を担当して頂きます。

 要請は2日前。

 2階層北側の上守区警察署捜査課からです。

 事件内容は上守高校の女学生の失踪です。

 詳細に関しては現場の警部補に聞いてください。

 後は四課の装備品と相場君の住居に関する契約データと鍵をお渡ししておきましょう。」


灰羽課長は立ち上がって部屋の隅のダンボールの山の一つを開封して中から

装備品を取り出すと聡一郎に手渡した。


「装備品は警察データの入ったメモリと霊素警棒と霊素小銃。

 それと交換用の霊素カートリッジが4本。

 あと、これが住居の手続き証明の入ったメモリと鍵になります。

 各メモリはLLDに挿入してインストールしてください。

 LLDを通して警察の手続きをオンラインで行います。

 証票、追票もデータ内にありますので身分証明する際はLLDより行ってください。

 霊素警棒と霊素小銃の扱いについて軽く説明しましょう。」


灰羽課長は霊素警棒を取り出すとグリップのボタンを押して一振りする。

金属の擦れる軽快な音と共に畳まれた警棒が伸びる。


「と言う感じにグリップにあるボタンを押すと

 ロックが解除されて警棒の展開ができます。

 収納時も同じ手順で収納できます。

 使う時はこの先側を眷族に当てるとスタン効果が得られます。

 下級眷族であれば、十分な威力が見込めます。

 人に対しては通常の警棒と同じです。

 ただし、眷族が憑依している場合は同じスタン効果が得られます。

 そして、下側のランプが霊素カートリッジの状態を示します。

 通常は緑点灯ですがカートリッジの霊素が無くなれば

 赤点滅に変わりますのでカートリッジの交換をしてください。

 霊素小銃も同じです。

 トリガーを引くことで霊素弾が発射されます。

 こちらは霊素警棒に比べると牽制ぐらいにしか使えません。

 状況に合わせて上手く使用してください。

 簡単な説明でしたが質問はありますか。」


「素朴な疑問ですが霊素って何ですか。」


「時間がありませんので簡単に説明しますね。

 霊素は生物の魂を構成する素子です。

 対となる魔素と合わさる事で魂は構築されています。

 しかし、霊素と魔素は磁石のように反発する素子です。

 互いの素子を衝突させると対消滅が発生します。

 その対消滅の特性を利用して魔素のみで構成された眷族に

 対抗するための手段として開発されたのが霊素警棒と霊素小銃になります。

 詳しいお話はまた今度としましょう。

 警部補が待っていますのでそろそろ現場に向かってください。

 場所はLLDの方に転送しておきましたのでナビに従ってください。

 それでは初任務よろしく頼みましたよ。」


「了解しました。

 相馬聡一郎警部補。

 これより現場に向かいます。」


支給された装備品を身に着けて荷物を纏めると四課の事務所を後にした。


初投稿になります。

書くペースが遅いので投稿が不定期になりますが

暖かく見守って頂けましたら幸いです。

本作品に対するご意見・感想がありましたらお待ちしております。

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