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アラフォー人妻だけど、アイドル始めました

作者: 調彩雨
掲載日:2026/05/05

 

 

 

「こま(U^ω^)(いぬ)……」

「なんだい伯方はかた氏」


 あふれ返る色とりどりの光線を見つめながら、隣に立つ15年来の友人に声をかける。


 とてもとても、信じられない気持ちだ。


「思えば、ずいぶん遠いところまで、来てしまいましたな」

「ほんっとそれな!!」


 こま(U^ω^)は大袈裟に頷いて、びしいっと指を立てた。


「でも、ま、来ちまったからにはやるしかないっしょ」

「せやな」


 ぱしんと手を合わせたその瞬間を狙ったように、電波越しで耳慣れた司会者の声がイヤフォンを通して響いた。


「それでは続いて歌って頂くのは初登場、平均年齢37歳、異色の人妻アイドル『Aroundアラウンド37(サーティセブン)』のみなさんです!」




   ё  ё  ё  ё  ё  ё




 なぜこんなことになったのか。それはもう、出来心としか言い様がない。


 きっかけは、わたしの下らない思い付きだった。

 そう、それはある深夜のチャットでの出来事。




   ё  ё  ё  ё  ё  ё




伯方のSIO(しお)@inochi_no_hakatacona : 人妻って良くね?

こま(U^ω^)@comadoggy_a : お前も人妻だろ

伯方のSIO@inochi_no_hakatacona : お前もな!

こま(U^ω^)@comadoggy_a : え、もしかしてお前……

伯方のSIO@inochi_no_hakatacona : 実は俺……お前のことが……

伯方のSIO@inochi_no_hakatacona : って、んなワケあるかぁ!!


 レイヤー仲間であり腐女子仲間でもあるこま(U^ω^)との他愛もない雑談に、笑いながらキーボードを叩く。


伯方のSIO@inochi_no_hakatacona : 人妻そのものじゃなくてさ、言葉だよ言葉

伯方のSIO@inochi_no_hakatacona : ヒトヅマって響きになんかこう、言い知れぬ魅力があるよな

こま(U^ω^)@comadoggy_a : 寄るな変態

伯方のSIO@inochi_no_hakatacona : ぶっちゃけどうよ?

こま(U^ω^)@comadoggy_a : ぷまいです

伯方のSIO@inochi_no_hakatacona : お巡りさん俺らです

こま(U^ω^)@comadoggy_a : YES人妻 NOタッチ

伯方のSIO@inochi_no_hakatacona : そう!NOタッチなら萌えて良いんだよ!


 深夜だった、お酒も入っていた気がする。

 深夜テンションに後押しされて、わたしの指はキーボードの上を軽快に走った。


伯方のSIO@inochi_no_hakatacona : だからさ、人妻アイドルってアリじゃね?

こま(U^ω^)@comadoggy_a : なん……だと……?

こま(U^ω^)@comadoggy_a : お主、アイドルに課せられる恋愛禁止の法をぶっちぎったアイドルを生み出すと言うのか!?

伯方のSIO@inochi_no_hakatacona : 人妻だからこそ、それ以上の恋愛スキャンダルはない!

伯方のSIO@inochi_no_hakatacona : 遊びたい盛りでもないからその辺も安心!

伯方のSIO@inochi_no_hakatacona : 若い子にはない色気と包容力!

こま(U^ω^)@comadoggy_a : ……最後のは、あるか?

伯方のSIO@inochi_no_hakatacona : 人妻と言う言葉だけで十分なんじゃよ、シンイチ

こま(U^ω^)@comadoggy_a : おいハカセ未成年になに植え付けてる

伯方のSIO@inochi_no_hakatacona : いやでも、面白くない?

こま(U^ω^)@comadoggy_a : ネタとしては……良いな


 類友こま(U^ω^)の賛同を得られて調子に乗ったか、よく回っていない頭はこのとき、とんでもない演算結果を弾き出した。


伯方のSIO@inochi_no_hakatacona : 今度さ、人妻集めてアイドルあわせしない?

こま(U^ω^)@comadoggy_a : おいまじか。本気か?

伯方のSIO@inochi_no_hakatacona : いやだって、面白そうじゃん?

こま(U^ω^)@comadoggy_a : 全っ力でネタだな!

伯方のSIO@inochi_no_hakatacona : いや、だってさ


 わたしとこま(U^ω^)は今まで、ちょいちょい浮気しつつも本命はずうっと同じ作品でコスプレを続けて来た。ジャンルの栄枯盛衰を、見続けて来たのだ。

 昔のコス仲間の多くはジャンルを変えたり、コス沼から出て行ったりしている。


伯方のSIO@inochi_no_hakatacona : 久し振りに、懐かしいひととあわせしたいなーって

こま(U^ω^)@comadoggy_a : お前……

伯方のSIO@inochi_no_hakatacona : 結婚してるし子供もいるし、あんま馬鹿なこと出来ないけどさぁ

伯方のSIO@inochi_no_hakatacona : たまには学生のころみたく、すっげぇ馬鹿やりたくない?

こま(U^ω^)@comadoggy_a : 面白そうではあるけど、本気?

伯方のSIO@inochi_no_hakatacona : だだすべりでも良いじゃん、集まって馬鹿騒ぎ出来れば


 このとき、わたしは忘れていたのだ。

 本気を出したこま(U^ω^)が、行動力の化身であることに。


こま(U^ω^)@comadoggy_a : おっけーやろうぜ、人妻アイドルあわせ




   ё  ё  ё  ё  ё  ё




 こま(U^ω^)から連絡が来たのは、それから一週間後のことだった。


こま(U^ω^)@comadoggy_a : 人数集まったぞ、日程決めよう

伯方のSIO@inochi_no_hakatacona : え、なんの?


 一週間前の馬鹿話のことなんて忘れ去っていたわたしは、寝耳に水で聞き返した。


こま(U^ω^)@comadoggy_a : 人妻アイドルあわせだよ


 こま(U^ω^)に言われて、ようやく思い出す。


伯方のSIO@inochi_no_hakatacona : え、いや、おま……まじで?

こま(U^ω^)@comadoggy_a : 声掛けまくった。乗ったひとがそれなりにいる。もう後戻りはさせん。

伯方のSIO@inochi_no_hakatacona : なんでそんな乗り気なんだ

こま(U^ω^)@comadoggy_a : 引っ張り出したい神がいる。ガチでやるぞ。


 こいつ本気か?と、真剣に思った。


伯方のSIO@inochi_no_hakatacona : 狛゛犬(ごまいぬ)さんは、無茶だろ……


 こま(U^ω^)の指す神の正体なんて訊かなくてもわかって、言いようのない虚しさと哀しさを覚えながら、重たい指でキーボードを打つ。


こま(U^ω^)@comadoggy_a : いや、絶対に引っ張り出す。狛゛犬さんと増塩ぞうえん塩鮭さんを


 その文章を見た瞬間、ただでさえ重かった指が完全に止まった。


 増塩塩鮭さんは、わたしがコスを始めるきっかけであり、こま(U^ω^)と出会わせてくれたひとであり、そして、結婚を機にオタクからほぼ足を洗ってしまった元人気レイヤーだ。

 こま(U^ω^)にとっての神が狛゛犬さんであったとするならば、わたしにとっての神は増塩塩鮭さんのほかにはいない。


 彼女がコスを辞めたときのことを思い出すと、今でも胸が苦しくなる。レイヤーのわたしにとっては、神であり、親であり、先輩であり、友人でもあるような、掛け替えのない、大事なひと、だった。

 オタクでなくなった彼女と連絡を取ることはなく、今ではもう、古い知り合いみたいなものだけれど。


 オタクとして繋がった友人なんて奇妙なもので、本名すら知らないのに同じ部屋に宿泊して旅行すらするくらいに親しくなったと思えば、ジャンル変更でぱったりと連絡すら取れなくなることさえ当たり前にあるのだ。

 ひとつのコンテンツ、あるいはひとつの趣味で繋がった浅いようで深く、強くもあるが脆く呆気ない交流。そんな、理解出来ないひとにはちっとも理解されない独特の関係性。例えるなら、そう、バーの常連さん同士のような。年齢も、職業も、家族構成も、あるいは、本名や顔ですら知らなくても、友人や、恋人や、家族でさえ知らないようなことを、当たり前のように知っている。


 増塩塩鮭さんとは当時、個人的にもやり取りするくらい仲良くしていて。彼女の連絡先は、一切連絡を取らなくなった今でも、携帯端末に残っている。そのアカウントがまだ生きているのかは、確かめていないからわからないけれど。

 もし、連絡しようとして、アカウントがもう生きていないことを知ったら。それとも、アカウントが生きていても、まるでないもののように、連絡を無視されたら。そう思うと、怖くて連絡なんて取れなかった。


 大好きだった。すごくすごく、大好きだった。だからこそ。

 彼女のなかでもし、わたしが愛したあの時間が、忘れられていたら。それとも、忘れたいものと思われていたら。


 とても、耐えられると、思えない。


こま(U^ω^)@comadoggy_a : 恐いよな。正直、俺も恐い。


「え……?」


 画面に浮かんだ文字に、思わず声が漏れる。


こま(U^ω^)@comadoggy_a : でも、だからこそ人妻アイドルあわせなんだよ。


 フリーズしたわたしをそのままに、画面にぽこんぽこんと文字が綴られて行く。


こま(U^ω^)@comadoggy_a : 日程決めたら告知画像作るから。俺とお前主催者でさ。んで、連絡先知ってる女オタクに手当たり次第告知する。

こま(U^ω^)@comadoggy_a : 別にコスで参加じゃなくても良い。衣装案でも曲でも撮影でも振付でもメシスタントでも。参加したいやつ全員集まれって声掛ける。

こま(U^ω^)@comadoggy_a : 特定の作品じゃないから人を選ばなくて良いだろ。それに、手当たり次第に声掛けするなら、こっちも向こうも重荷にならない。

こま(U^ω^)@comadoggy_a : 日程と内容決めた上で誘うなら、断られても日程が合わなかったんだとか、人妻アイドルは刺さらなかったんだとか、思えるだろ。

こま(U^ω^)@comadoggy_a : そこまで言い訳用意したら、連絡する勇気も覚悟も出るだろって。


 ああ、こま(U^ω^)も恐いのか。それはそうだ。だって、相手は神なのだから。


こま(U^ω^)@comadoggy_a : 笑えよ。

こま(U^ω^)@comadoggy_a : そこまでしなきゃ、連絡も出来ないんだよ。

こま(U^ω^)@comadoggy_a : でも、一回、一回連絡出来たら、そこからまた交流出来るかもしれないだろ。

こま(U^ω^)@comadoggy_a : このまま切れたくないんだ。コスでなくても良い。繋がってたいんだよ。

こま(U^ω^)@comadoggy_a : お前も、そうだろ?


 気付けば、頬を涙がつたっていた。


 重たかった指が、キーボードを叩く。


伯方のSIO@inochi_no_hakatacona : フラれたら、全力で慰めろよな

こま(U^ω^)@comadoggy_a : お互いにな!




   ё  ё  ё  ё  ё  ё




 行動力の化身こま(U^ω^)。それからの動きも早かった。

 賛同者を集めてSNSのグループを作成。日程をすり合わせ、たちまちに告知画像を作り上げた。


 その、告知画像を携えて、増塩塩鮭さんへ連絡する。共同主催で、こま(U^ω^)にせっつかれて参加者を募っている体で、あくまで軽く。特定多数のひとり宛に見えるように。

 ほんの数文を書き上げるのに気違いみたいに推敲を繰り返し、馬鹿みたいに時間を掛けた。送信ボタンを押すにも時間が掛かって、指はあり得ないくらいに震えていた。


 まず、送信が出来たことに、アカウントが残っていたのだとほっとする。

 付かない既読を確認するのが恐くて、SNSの画面を閉じる。


 返信は、次の日に来た。


『わ、久し振りだね!連絡嬉しい!』

『コスで参加は難しいんだけど、曲作りで参加しても良い?』

『旦那が音楽関係の仕事で、少しかじってるんだ。私の作った曲、伯方ちゃんに歌って欲しい!』


 ブランクなんてなかったみたいな、軽快な言葉。

 応えてくれた。覚えていてくれた。コスじゃなくても、参加してくれる。


 ボロボロと涙が溢れて、画面が見えなくなった。


 震える指でどうにかお礼と、参加を歓迎する旨を打ち込み、送信する。


『わーい♪よろしくね!』

『打合せしたいし、ご飯行く?狛゛犬ちゃんも参加するって言ってるし、こま(U^ω^)ちゃんも一緒に、久し振りに四人で!』


 その日のこま(U^ω^)とのチャットは、大荒れでとんでもないことになったし、ご飯の当日はこま(U^ω^)とわたしが号泣して、増塩塩鮭さんと狛゛犬さんを慌てさせることになった。


「伯方ちゃん、SNSに写真挙げてたでしょ?それはずっと、見てたんだよ」


 思わぬ一言に、驚いたりもして。


「コス辞めちゃったから、話し掛けられるの嫌かなって、見るだけだったんだけど。だから今回、声掛けてくれたのすごく嬉しかった!ありがとね」


 言って微笑む増塩塩鮭さんは、もちろん相応に年齢を重ねてはいたけれど、憧れた頃と変わらず綺麗だった。


「あの」


 だからつい、口が滑る。

 コスプレはお金も時間も掛かる。家庭と両立出来ないと言うのも、無理からぬ話で。


 でも、それなら。


「わたしが、衣装作ったら、当日着てくれたりしませんかっ?」


 隣に座るこま(U^ω^)が、こいつ言いやがったと言う顔をしていた。狛゛犬さんもコスは不参加で、ダンスの振付で参加したいと言う話だったのだ。けれど行動力の化身は、チャンスに乗っかるのも早かった。


「それなら狛゛犬さんの衣装は、私が作ります!四人でユニットしましょうよ!」


 増塩塩鮭さんが言葉を返す前に、発された言葉。


「え、でも」

「特定のキャラならともかく、今回はデザインから決められますからね!」


 勢い込んで、こま(U^ω^)は続ける。


「体型なんていくらでも誤魔化せるし、顔ならメイクでどうとでもなる!せっかくの機会なんだから、おもいっきりはっちゃけましょうよ!"見てるだけじゃ、つまらないでしょう?"」


 それは、憧れつつも自分がコスプレをすることに躊躇っていたこま(U^ω^)の、背中を押した言葉。こま(U^ω^)に、それを言ったのは、


「そうだね」


 狛゛犬さんが、仕方ないなあと言う顔で苦笑した。


「ふたりが衣装作ってくれるって言うなら、着ようかな。ね、塩鮭」

「いやいやいやいや、大変でしょ?そんな。それに」

「「費用はこっちで持つんで!!」」


 声はまさかの異口同音だった。

 だって神だぞ?神が自分の作った衣装を着てくれるんだぞ?


「もう、着て貰えるだけでお釣りが出過ぎてお金払いたいくらいで」

「それな!ほんと今、着て欲しいデザイン浮かびまくりで、お色直しは何回までしてくれますかって感じ」

「わかる!いやまじ、塩鮭さんも狛゛犬さんも変わらず美し過ぎて、自分なんかが服作らせて貰えるとかどんなご褒美だよって」

「ほんっとそれ!やばい!!」


 こま(U^ω^)と顔を見合わせて騒ぐわたしにぽかんとしたあとで、増塩塩鮭さんは笑い出した。


「わかった。わかったから。もう、変わらないねぇ、ふたりは」

「本当。時間が戻ったみたい。さて、と言うことだけど、塩鮭?」


 狛゛犬さんが、悪い笑みで問う。


「何曲作れる?」

「「え?」」


 今度ぽかんとしたのは、わたしとこま(U^ω^)だった。


「三曲かな。作るだけならもっと行けるけど、振入れもしないとでしょ?狛゛(ごま)ちゃんと違ってわたしたちは素人だもん、時間がいるよ」

「それもそうか」

「「ええ?」」


 話に付いて行けていないわたしたちに、増塩塩鮭さんと狛゛犬さんがにっこり笑顔を向ける。


「衣装分、曲と振付で返すって話だよ」

「あたしが振付するからね?当日、無様なダンスは許さないよ?」

「と言うわけで「三曲分、衣装、作れるよね?」」


 ニーチェ、神は死んでいなかったよ。


「「サーイエッサー!」」


 敬礼して、わたしとこま(U^ω^)は答えた。




   ё  ё  ё  ё  ё  ё




 そこからは、飛ぶような毎日だった。


 仕事、家事、育児。その合間に、衣装案を固めて、作って。衣装案を見た増塩塩鮭さんが合わせた曲を作って、狛゛犬さんが振付て。衣装を作りながら、歌とダンスの練習をして。増塩塩鮭さんから歌の、狛゛犬さんからダンスの指導を受けて。ふたりとも、鬼教官だった。


 目が回るほど忙しくて。でも、ずっとずっと、楽しかった。


 そして当日、変わらぬ神がそこにいた。


「こら泣かない。メイクが崩れるでしょ」


 ぽこんと神に頭を叩かれて、必死で涙をこらえる。


「泣いてる場合じゃないよ伯方、あれ見てあれ」


 そんなわたしをどつくこま(U^ω^)が指差す先には、


「え、なに?ドラマ撮影でも被った?」


 ガチ過ぎる撮影機材。写真ならガチなカメラで撮られた経験があるが、映像なんてスマホ撮影がせいぜいだ。今回もそのつもりだったのだが。


「なんか旦那が気合い入れたみたいで」


 てへぺろしても可愛いです神。じゃなくて。


「え、プロ来ちゃったの??」

「ううん、有志だよ。趣味の集まり」


 趣味レベルの機材に見えないが??


「せっかくだから、おもいっきり、ね?」


 にっこり笑う神に、腹を決めた。


「はい!」


 そうしてやんごとない機材で、写真も動画も撮られて。最初こそ緊張したが、あとはひたすら夢中で楽しかった。


「画像と動画、編集出来たら送るね」


 これで切れるわけじゃないと、貰えた言葉も嬉しくて。

 夢のような時間だったと、企画したこま(U^ω^)に感謝していたのだ、が。


こま(U^ω^)@comadoggy_a : せっかくだから動画もアップして良い?

伯方のSIO@inochi_no_hakatacona : 関係者全員のオッケー貰えてるなら良いよ


 この、軽い会話が不味かった。


 人妻アイドルあわせなんてものに参加する人間なんて、ノリの良い馬鹿ばっかりで。悪ノリに悪ノリを重ねた馬鹿共は、行動力の化身こま(U^ω^)が主導なこともあり、わたしの知らぬ間に明後日の方向に突き進んでいた。

 気付けばそれっぽいサイトが出来ていて、写真や動画がまとめられていて。


伯方のSIO@inochi_no_hakatacona : いやなんだこの、Aroundアラウンド37(サーティセブン)って

こま(U^ω^)@comadoggy_a : グループ名があった方がそれっぽいかなって


 勝手にひとの歳をばらすんじゃないよ。

 なんて、苦笑で済んでいるうちはまだ良かったのだ。


こま(U^ω^)@comadoggy_a : やべぇバズった

伯方のSIO@inochi_no_hakatacona : は??


 なにが琴線に触れたのか、年増がアイドルなんてやっているのが滑稽だったか、そのサイトがSNSに晒されて、大バズりした。

 こま(U^ω^)が参加者を集めまくったのでクオリティも個性もバラバラななか、クオリティがおかしいと注目されたのが、Around37。


 動画の再生数は、夜毎日毎に恐ろしい勢いで伸びて行った。


 その、メンバーには、音楽関係者の妻である、増塩塩鮭さんがいるわけで。

 売れると判断されてからの、動きは早かった。他所にかっさらわれては堪らないと言う気持ちもあっただろう。


 あれよあれよと言う間に、メジャーデビューが決まり、円盤が発売され、配信され、ライブまで開かれて。


 気付けばわたしたちは、本物の人妻アイドルになっていた。

 テレビにも取り上げられ、ニュースにもなって。全員家族の理解を得られたことが、せめてもの救いだろうか。


 そして今日はついに、誰もが知っている歌番組に出るところまで来た。


「それでは続いて歌って頂くのは初登場、平均年齢37歳、異色の人妻アイドル『Around37』のみなさんです!」


 本当に、そんなつもりじゃなかったのに、どうしてこうなったのか。

 でもまあ、楽しくないわけじゃない。夢も希望もあるだろう。


 と言うわけで、アラフォー人妻だけど、アイドル始めました!




拙いお話をお読み頂きありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
あまりにも、あまりにも刺さる作品でした。オタクの交流の仕方から心情から何から、覚えが山のようにございます。神々との交流が復活するあたりや、最後の盛り上げかなんて夢のような……とキラキラしたアイドル物語…
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