第25話 明確な敵
登録者1602人。
スポンサー53人。
ボランティア9人。
回復は早かった。
YouTube流入が落ちても、
グラフ単体の拡散で持ち直した。
むしろ、前よりも安定している。
「自走してるな」
正義は呟く。
外に依存しない構造。
それは強い。
だが同時に、
「目立つ」
ということでもあった。
朝。
Xを開く。
通知の中に、一つだけ異質な投稿があった。
フォロワー10万人規模のアカウント。
政治系インフルエンサー。
投稿。
《RE:PUBLICって最近よく見るけど、データの切り取り方、かなり恣意的じゃない?》
リンク付き。
初めて、名前が出た。
正義の指が止まる。
「……来たか」
リプライ欄を見る。
《確かに偏ってるかも》
《中立って言ってるの怪しい》
《ちゃんと検証必要》
一気に流れが変わる。
これまでの“違和感共有”とは違う。
「評価されてる」
しかも、疑う方向で。
ダッシュボードを見る。
登録者:1602 → 1589。
初めて、減った。
「減るのか……」
小さい数字。
だが重い。
Slack。
“これ、反応した方がいいですか?”
“引用して説明します?”
“無視ですか?”
チームが揺れる。
正義は画面を見つめる。
ここで初めての選択。
「戦うか」
「無視するか」
どちらも正しい。
どちらも間違う可能性がある。
そのとき、Sが投稿する。
“事実だけ出せばいいと思います”
一行。
シンプル。
正義は頷く。
「それしかないか」
正義は投稿を開く。
該当グラフ。
元データ。
計算式。
全て並べる。
そして投稿。
《ご指摘ありがとうございます。該当データの元資料・算出方法を公開します。判断はご覧いただいた方に委ねます。》
それだけ。
反論もしない。
攻撃もしない。
ただ、開く。
投稿。
数分。
いいねが伸びる。
《ちゃんとしてる》
《むしろ信頼できる》
《全部出してるのすごい》
流れが、少し戻る。
だが、完全ではない。
引用元の投稿は、さらに拡散している。
「止まらないな」
正義は呟く。
情報は、正しさだけでは動かない。
強さで動く。
分かりやすさで動く。
そして、対立で動く。
ダッシュボード。
登録者:1589 → 1620。
戻った。
だが、前とは違う。
「戦場に入ったな」
正義は感じていた。
これまでは、
知られるかどうか。
次は、
どう見られるか。
そしてこれからは、
誰と戦うか。
凛に送る。
「名前出された」
返信。
「おめでとう」
一瞬、意味が分からない。
「え?」
「それ、ステージ上がったってこと」
短い。
だが、核心だった。
正義は苦笑する。
「そういうもんか」
「そういうもん」
一言。
登録者1620人。
スポンサー55人。
RE:PUBLICは、
初めて明確な敵を持った。
それは、
個人でも、組織でもない。
「評価」
そのものだった。
そして一度始まった評価は、
もう止まらない。




