表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

マッチングアプリを始めてみた話

作者: 白藍瑚珀

 約1ヶ月後に、私は27歳になる。

 ということでマッチングアプリを始めてみた。


 小学生の頃に流行ったプロフィール帳を初めて書いた時、何歳で結婚したい?という質問に対して、21歳と答えていた。そして年齢が上がるにつれ、27歳という現実的な答えを書くようになった。

 しかし、今の私には彼氏ができる気配もない。


 マッチングアプリに興味を持ったきっかけは、親戚の兄様がアプリで出会った人と結婚したことだ。

 相手の方はとても美人な人だった。

 そして兄様も、いわゆるベンチャー企業と呼ばれる会社の経営者を務めるイケメンの金持ちだ。

 こんな人がアプリにはいるのか。と少し興味が湧いた。


 友達は6年付き合った彼氏と別れてアプリを始め、約1ヶ月後には彼氏を作り、半年後には「年内に籍を入れる」と言っていた。


 私は男性とまともにお付き合いをした経験がない。長くて5ヶ月だ。最後に彼氏がいたのがいつだったかすら思い出せない。

 曖昧な関係を続けていた11歳年上の人とは長かった気がするが、それも2年ほど前の話だ。


 根本的に、“他人と長く関係を続ける”ということが苦手なのである。だから、友達も少ない。

 

 ──自分の魅力を偽って築く人間関係に意味があるとは思えない。相手にも自分に対しても失礼な行為だ。


 これは、九龍ジェネリックロマンスという作品の中に出てくる言葉だ。とても共感した。


 とりあえず友達に勧められたアプリをインストールしてみた。質問に答えていくうちに、顔写真の登録を求められた。

 

 スキップボタンがない。


 とりあえず私はトトロの写真を登録した。

 すぐに足あとがついた。(これは自分のプロフィールを見に来た人が分かる機能のこと)

 

 条件を絞って検索をかけてみた。

 なんの期待もせずに検索結果を見てみると、なんとそこには私好みの男性が出てきた。写真のセンスも服のセンスも良かった。どうやらカフェを経営しているらしい。

 だが残念なことに居住地が大阪だったため、私はいいねを押すことなく彼のプロフィールを閉じた。

 正直、最初から遠距離はきつい。


 しかし、この男性のおかげでアプリでの出会いに少し希望が見えてきた。

 私は早速顔写真を登録することにした。


 しかし、どれを選んでもぱっとしない。そもそも載せられそうな写真が少なすぎる。友達と撮ったものは加工がされているし、家族と撮ったものはすっぴんばかりだ。

 あまり盛れている写真だと実際会った時に失望されるし、かといって盛れていない写真では出会える確率が減ってしまう。

 15分ほど悩んだ結果、友達にモザイクをかけてほどよく盛れた写真にしておいた。


 いいね通知がすぐに来て、しばらく鳴り止まなかった。

 別にこれは自慢でもなんでもなく、登録したばかりは注目度が上がるらしい。数打ち当たる戦法でいいねを押している人もいるだろう。


 なんにせよありがたい気持ちでいいねをしてくれた男性たちのプロフィールを見に行く。

 本音を言うが、8割、写真がダサい。

 こういう人は申し訳ないが、容赦なくお見送りをする。そんなことで決めるなと怒られそうだが、このセンスの無さはファッションやヘアスタイルのダサさ(=清潔感のなさ)とほぼ比例している。

 別におしゃれであることは求めていないが、ダサいのは論外だ。

 私の隣を歩くのには、ふさわしくない。

 この高飛車思考が私に彼氏ができない理由のひとつだというのは大いに理解している。


 ところでトイプードルの写真をあげてる人が異様に多い。


 中には清潔感のあるイケメンもいた。だがプロフィールの書き方の癖がすごい。とにかく癖がすごい。

 これは中身を知ったら女が離れていくタイプだ。

 71歳の異様にいかつい見た目の男性もいた。父より年上なので残念ながら恋愛対象としては見られないが、1番興味が湧いた。

 一緒に歩いたら組長の孫みたいに見えるかな、なんてくだらない妄想をした。


 足あと機能は一体なんのために存在するのだろうか。勝手に振られた気分になるからやめてほしい。

 そして、なんだがだんだん物件を探している気分になってきた。

 外観を見て、家賃を見て、内装や条件を見ていく。

 なんだこれ、同じじゃないか。


 昨日の深夜に始めて翌日の今。誰にもいいねは返していない。

 友達になりたい人は何人かいた。しかしこのアプリの中では、男と女が同じ人間という生き物ではなく、男と女という別の生き物として存在している。


 女としてアリかナシか。


 生理用品を買うたびに、自分が女であるという現実を突きつけられることに嫌気がさしている私にとってはひどい苦痛だ。

 どう考えても、結婚に向いていない。

 こんな私でも、全く結婚願望がないというわけではない。推しが結婚を申し込んでくるという少女漫画や乙女ゲームのような一大イベントが起これば、間違いなく即婚姻届を提出する。

 アラサーにもなって夢見る少女思考なんて、ひどく滑稽であることは自覚している。

 「将来は声優さんと結婚したい」と言って、人生に希望しか持っていなかったいたいけな少女だった私。ごめんね、その夢は叶えられそうにないよ。


 一ヶ月後には、アプリを消しているかもしれない。もしかしたら、夢中になれる男性に出会えているかもしれない。人生何が起こるか分からない。期待はしないが、希望は捨てないでおこう。


 人生、頑張ろう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ