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何故?
私はだんだんアスカに惹かれていってアスカも私に心を許してくれるようになっていったある冬の日のことだった。「帰りに肉まん買って帰らない?」なんていう私の提案にアスカが賛成するとカナタは「俺はいいかな。二人でごゆっくり」なんて言って先に帰っていった。私はカナタが私たちの雰囲気に気づいていたんだと思った。あの時の私はアスカと2人きりなことに舞い上がっていてまさかこの後あんなことになるなんて思ってもいなかった。私たちが肉まんを買って帰るとカナタはまだ玄関前にいた。鍵を忘れたからアスカを待ってたって。そんなことなら最初からついてこればよかったのに。そんなことを思いながら2人のママに挨拶するために一緒にアスカが鍵を開けるのを待っていると、アスカは扉を開けてすぐに崩れ落ちた。「アスカ?」そう問いながらカナタが中を覗き込んで固まる。私も気になって覗こうとするとカナタに目を塞がれた。でも私にはチラリと見えてしまった。彼らの母親がリビングにぶら下がっていたことを。足元に転がった小さな椅子と何かの錠剤が彼女の死を象徴していた。