人喰いダンジョンのクエスト
『第5回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞』応募作品です。
ひとたびその地下迷宮に入って生きて還ったものはひとりもいない。そんな伝説を持つ迷宮を誰彼ともなく『人喰いダンジョン』と呼ぶようになった。
いま、その人喰いダンジョンがまさに攻略されようとしている。迷宮最深部に到達したのはハイレベル冒険者で構成されるハイレベルパーティーである。
「思ったよりも歯ごたえのないダンジョンだったな」不満そうな声を上げるのはパーティリーダーを務めるハイレベル戦士である。
「魔物も怪物も、棲んでいたのは雑魚ばかりだ」迷宮の主と思しき怪物を切り捨てた剣には、刃こぼれのひとつもない。
「罠の類もどれも簡単な仕掛けで、赤子の手を捻るより容易く解除出来た。本当にここが『人喰いダンジョン』なのか?」ハイレベル盗賊が首をかしげる。
「敢えて恐ろしい噂を流して人を寄せ付けないようにするということもままありますが」ハイレベル聖職者も疑念を隠せない。
「それにしてはこのダンジョンの噂は、これまでに多くの冒険者を引き寄せていました」
「そして、誰一人還ってはこなかったな」ハイレベル魔術師はハイレベルな顎ひげをくしけづり、おごそかに呟いた。
「この先にまだ何か秘密が隠されているやも知れぬ」
「しかしねえ、隠し扉もなさそうだよ」ハイレベルエルフはハイレベルな呆れ顔であたりを見回す。
ハイレベルドワーフは無言でハイレベルを貫いた。
「ねえ、ちょっとみんなこれを見てよ!」ハイレベルフェアリーがハイレベルな肢体(ただし妖精サイズである)をたわわに揺らして一同に呼び掛けた。
ハイレベルな妖精の目が発見した『人喰いダンジョン』最深部の秘密。一同はハイレベルな驚きの声を上げた。
「これは!」
「まさか!?」
「有り得えないです」
「だが間違いない」
「なぜこんな地下迷宮に」
「……」
もしもこの地下迷宮に観客がいれば、男女問わずそのハイレベルな美声にさぞや痺れて聞き惚れたことであろう。生憎そんなものはいないが。
「「「「「炬燵があるのだ」」」」」
「でっしょー?不思議ね」
炬燵。それは床に置いた枠組みの中に熱源を入れ、布団で覆った暖房器具である。天板はテーブルになっている。
「ではひとやすみするか」ハイレベルドワーフが口を開き一同は炬燵に潜った。ハイレベルフェアリーもちんまりと布団に身を委ね、炬燵はちょうど人数分にぴったりのサイズだった。
『人喰いダンジョン』ひとたびその地下迷宮に入って生きて還ったものはひとりもいないと言う。
いかがでしたか?あとでおうちの方と、ひとを堕落させ破滅させる存在について、話し合ってみてください。