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食事も一段落し、攻撃が当たりにくくなる。防御力が上がる。攻撃力が上がるといった支援魔法をかけていく。
「少しはマシでしょう」
私がそう言うと、支援魔法を習得してるなんてと言われた。
「必要があったので…」と言うしかない。「そんなに時間も長く持ちませんし、行きましょう」そう言うと、スラリと片手剣を抜く。
宝石が埋め込んであり、メイスや杖と同じように魔法の媒体となっている。
恐らく、マルチのヘルメスのダガーも同じ仕様だろう。
火を吹くトカゲといった体だけど、正面から焔を食らうと、やはり痛い。火を吹きそうなアクションを取ったらサイドに避ける。攻撃を加える。それを交互に繰り返す。ダメージが蓄積している人がいたら一旦下がって、回復魔法をかける。
利き手である右手に、魔法剣を持ったまま、回復魔法をかける私を、引っ掻こうとしたらしいサラマンダーが、なぜか攻撃が微妙に反れたのか爪を床へと強く打ちつけている。
なにがしたかったのだろう…。敵の攻撃がめったに当たらないせいか、不思議に思う。ただそれが普通だと思っていたら、他の仲間はそれなりに攻撃を食らっているようなので、私だけ当たりにくいみたいだ。
昔からこうなので、普通に思っていて、僧侶として教会に帰依していた際に、怪我を治す頻度に驚いた記憶があった。私が特殊だったのだと今更に知った……。
自分で勢いよく打ちつけておいて、痛かったのか何やらキレ気味のようだ。
ヘルメスとマジェスティが、アイスランスを繰り出すと、痛みにのた打ち回ったサラマンダーに飛んで思い両手剣で叩き斬ろうとするオイジュス。今一歩ダメージが足りなかったのか、アテナとゴンが両手剣と斧を振り上げとどめを刺す。
「やったのか……?」
「手応えはあったようじゃぞ…」
「とどめさせたと思うわ…」
そうやり取りするオイジュス、ゴン、アテナを横目に、息絶えたのかサラマンダーの焔の色がくすんでくる。
「魔石を取って、撤収しよう。帰りは転移石を使おう」
オイジュスが言うと、「帰って酒じゃ!」とゴンが嬉しそうに言う。
「飯は旨かったが…、ダンジョンに潜ってる間は、酒を飲むわけにはいかんからのぅ」
ゴンなりにマイルールがあるのか、旅の間は禁酒らしい。
「早く帰って祝杯じゃ!」
「そうですね! いつもみたいに、美味しいものをたくさん食べたいです」
「太るよ」
ネーレウスがからかうと、「貴方はうるさいんですのよ! もっとデリカシーを持つべきですわ!」
「なんだとー!」
私はそんなやり取りを、生暖かく見つめていた。