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アテナは嬉しそうに指に魔法がかった指輪をはめる。歩くと体力が回復する指輪はレアといえばレアだ。私には必要はないけれど、喜ぶ気持ちもわかる。
ヘルメスも偵察と言っては、ガーゴイルクロークを着てガーゴイルになり、未開の場所へと飛んでいき十分と経たずに帰ってきては部屋の環境やモンスターの種類や数を、私達に説明してくれる。
そのおかげもあり、最下層のボス部屋へと辿り着き準備を始める。
「ここはすぐにモンスターが湧き出るダンジョンですか?」
「翌日の朝日とともに湧き出てくるタイプのダンジョンかと…」
ネーレウスか顎に手を当て、答えてれる。
「ならば、食事をしてからボス部屋に挑みましょう」
そう言うと、薪や鍋をセットして調理に勤しむ。
「手伝えそうな事があったら、言ってくださいませね」
「パンを切って炙ってもらっても?」
ゴンが捌いてくれた、オーク肉の筋を切り、塩と香辛料で味をつける。
底の浅い鍋で、3センチ程の厚さに切った肉をこれでもかという程下処理をして焼く。みんなパンと干し肉と乾燥させた木の実で、普段よく持たせていたなと感じる程、よく食べるのだ。
付け合せに生で食べられる、香草や野菜を付け合せお肉を大皿に乗せ食べる分を取り分けるスタイルにした。
「オークのステーキと野菜と、果実を絞った飲み物とパンしかありませんが、食して落ち着いたら、サラマンダーに立ち向かうとしましょう…」
「ダンジョンで、きちんとした食事を取れるなんて、嬉しいですわ~」
マジェスティが喜ぶ。ボス戦前と言うのに私も含めて緊張感が足りないかもしれない。
アテナも自分が中心じゃないと、面白くない様だけど胃袋を掴んできたらしい。最近もツンツンとした態度を取ってはいるけれど、食事を作ると小さい声で「ありがとう」と言ってきたり、可愛い所もあるので一見すると自己中心的にも見える言動にもなれてきた。
皆で食を囲み、サラマンダーの特性を考えながら、どう戦うかを相談しながら、氷の魔法を中心にしてとか、攻撃頻度が下がる様にスロウの魔法が必要だとか…、話し合いながら食事を取った。
ヘルメスだけポツリと離れた場所で、食事をしている。
いつも一人でいるヘルメス。だからといって彼は、私達の話を聞いていない訳ではないらしい。耳を澄ませて聞いているだけ。あまり会話に入って来ない。
そんな彼がなぜだかいつも気になって、目で追ってしまう。うまく仲良くなれないからか、気になってしまうのかしらと少し思う。もっと皆さんと仲良くなれればいいのに…、そう思うと無意識に溜息が溢れた。
そんな私を熱く見ていた、オイジュスとネーレウス の視線に、私が気がつく事はなかった。