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冒険者として生きてきた彼らには、料理といったスキルはないのだろう。個人的には、経験値の差であって、料理に才は関係ないと思っているんだけど。
軽く現地調達の食事を済ませ、3回のローテーションで、夜の見張りを決めそれぞれの時間を過ごし朝を迎える。
朝、軽く朝食を作ろうとすると、心做しか期待に満ちた目で見られてる様な……。アテナまで……?
「はぁ……」
溜息を1つつき、「わかりました。朝食用のパンと材料費は頂きますよ……」
「お姉ちゃん大好きっ!」
そう言い、スパロウが腰に抱きつく弟がいたらこんな気持ちだろうか…。可愛い…。後方で「なっ!」とか「ズルいぞ…!」とか呻くような言葉が聞こえたけれど、気にしない。
「今日は何を作ってくれますの?」
興味津々といった様子で、マジェスティがきいてくる。
「そうですねぇ…」
私は考えながら、手を動かす。昨日の残りのスープにミルクを入れて火にかけ直す。あとは……、パンを薄く切ってから、軽く炙って果実を煮詰め甘いクリームを塗る。甘いのが苦手な人の為に、ミルクを発酵させて出来たチーズを乗せて、炙ったものを用意する。
あとは卵を、ミルクを煮詰めて、油を煮出したバターを底の浅い鍋に落とし、鳥の卵とミルク、塩と香辛料を混ぜた卵液を流し入れる。ジュワジュワと小気味いい音を立て、卵液に火が通っていく。フォークの様な食器を手に取り、混ぜ合わせる。半熟の所で皿に小分けに分けていく。
赤い野菜に香辛料を入れ
、煮詰めたものを色づけにかける。
パンは、大きな器に乗せ好きなのを食べてもらう。
「ダンジョンに向かっているなど、嘘の様じゃの」
嬉しそうにゴンが、チーズの乗ったパンを食べながら言う。
「卵がふわふわで美味しいですわ! チーズの乗ったパンに乗せたら更に美味しくなりそうですわ!」
「悪くないんじゃない。ありがとう…」
お礼の部分は囁くように小さな声になっているけど、アテナも甘いパンをお気に召したようだ。
「美味い…。料理が上手いとか意外だな…」
ヘルメスも遠巻きではあるけれど、声をかけてくれた。
「もっと前から言ってくれれば、もっと食糧買ってきたのに……」
「現地で調達すれば食べれるモンスターのお肉とか、きのことか木の実とかいろいろとれるよ! ゴンのオジサンとか捌けるし」
「食べれる敵を倒せたら、ワシが捌いてやろう。得意なんじゃ」
ニッコニッコと音が聞こえそうな程に、笑顔のスパロウが言う。
現地調達で彼らのご飯当番が決まった瞬間だった。