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「俺…、ミリアムさんの手料理とか嬉しいよ!」
「私の為に作ってれたのかと期待してしまいます」
オイジュスとネーレウスが、言葉を次ぐようにして言う。
「いえ…、自分だけ食べるのが気不味いだけです」
こういう輩には、冷たく言い放った所で効果はない。けれど…、万が一誤解が生じると、経験上増長するのが目に見えていた。
「ありがとうございます~。野宿の日に温かいものを食べられるとは思いませんでしたわ。早速頂きますわね!」
そう言うと、マジェスティが器によそい、口にする。
「ミリアムお姉ちゃん! 僕も頂戴!」
スパロウが、瞳を輝かせながらそう言う。ミリアムお姉ちゃんと呼ぶ事に決めたらしい。くすぐったいけど、ホビットの彼に呼ばれるのは悪い気がしない。
「ワシも貰おうか…」
お酒にしか興味がないのかと思ったドワーフのゴンも、器を手にスープをよそう。
「1杯頂く…」
あまり興味もなさそうだけど、和を乱すのも問題と思ったのか、エルフのヘルメスも器を手に取り、自分の分をよそうと「アテナはいらないのか?」と言う。
「皆食べるのにあたしだけいらないって言うの、感じ悪いじゃない! 食べればいいんでしょう!」
アテナはなんというか、空気を読まない様で読むようだ。
顔を赤くして、「貰うわ…!」と言うと、「美味しい…!」と小さく呟いた。
嫌いと言いつつも、仲良くしないつもりでもない……? パーティの仲間なのだから敵対するのは望む所ではない。
直情的なだけで可愛いのかもしれないと思った。
そんな事を思いながら、木の枝にパンを刺し、軽く炙ると、小さく千切ってスープにつけはくりと食べる。
うん……、侘しいだけの固いパンと干し肉だけを食べるよりずっと美味しい。
呼び捨てで良いと言ったのに、なぜかオイジュスとネーレウスは、魅了の影響なのか、なぜかさんつけだ。スパロウは、お姉ちゃん呼びとして他のメンバーはお互いに呼び捨てだ。
「ミリアムさんがいなければ、私達はいつも通り、固いパンと干し肉を齧り、食事を終えてたでしょう。気持ちが豊かになります…。ありがとうございます」
ネーレウスが、クレリックらしいというべきか、礼儀正しくお礼を言ってきた。
「いえ、以前作った、木の実と果実を甘く煮た物をマジックバッグに寝かせてる物も大量にありますが、食べますか?」
「毎回は、予算的にもご馳走するのは、難しいと思いますが、今回はよろしくと言う挨拶も込めてご馳走しますよ」
「食費を出したら、俺たちにも作ってくれないか? 遠征時に、乾燥させた木の実や、干し肉や固いパンばかりは少し辟易していてね」
あごに手を当て考える様に言うオイジュス。
「まぁ、構いませんよ。森で食べていた簡易に作る食糧ばかりですが、それでもよろしければ…」
そういう流れで、野宿時の食事をどさくさに紛れて任された。