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フードを被り直した所で、既にチャームがかかった人達には関係ないのは経験上わかっている。
自身の防衛の為にも、普段は顔を見せることはないので、少しアテナの申し出は煩わしくもあったけど、オイジュスとネーレウスは心做しか、熱い視線でこちらを見ている。
アテナも周りの男性の目が自分以外に向くのが面白くないのか、不機嫌そうに見える。
純真そうなスパロウと、料理に夢中なマジェスティ、お酒に執心なゴン。敵愾心を剥き出しなアテナに驚いた顔をしただけで、無関心そうなヘルメス。
ヘルメスはエルフなのに、よくこのメンバーに入ったななんとなくそう思う。なぜなのだろう……。彼が私に興味を持ってくれない事が、ほんの少しだけ残念に思った。
その日は少し次のダンジョンへの日程を話しただけで解散になった。
帰りにかなり古びてきたフードを、買い換えようと店による。
値引きの技能はあるけど、今は使わないでも余裕で買える価格なので、フードつけたまま、衣類を選ぶ。
着替えて動きやすさを見る段階で、運悪く店主がこちらを見てしまい、「いいよいいよ、数枚着替え用に持っていきなよ」と、数枚ただで押しつけられた。
あぁ…、ちゃんと買おうと思ったのに。街では出来る限り、フードは外さないとこっそりと心に決めた出来事だった。
今回の目的はダールヴァのダンジョン。まだ最深階が未踏のダンジョンで、そこに挑むらしい。
今いるセレスの街から二日ほど、行った先にあるらしい。
甲斐甲斐しい程に「荷物を持ちましょうか?」とか「休憩は大丈夫ですか?」などと、隙あらば構ってくるオイジュスとネーレウス に少し辟易しながら、今日の野営地まで足を進める。
「今までも旅をしてきたので問題ありません。寧ろ一人の時間が欲しいのでそっとしておいてもらえませんか?」
しゅんとした彼らは離れていき、野営地で寛ぐ。
でも野宿中の食事って味気ないのよね…。そう思いながら周りを見るとスープの具材にしても美味しい香草が多い茂っている。
香草を取ると、川で洗う。
都合よく乾いた薪があるとは限らないので、マジックバッグに入れてあった薪と鍋を、木と石をうまくセットをし、水と鳥の干し肉と芋を、少し大きめに切って鍋に入れ。
塩と香辛料で味を整え、少し持っていた器に取って味見をする。
料理は以前からしていたおかげか、それなりに得意だ。固いパンと干し肉で味気なく食事をするより、温かいスープがあれば、気分も変わるだろう。
こういう時は森になれたエルフの知識は役に立った。
「私だけ食べるのも申し訳ないので、お食べになるなら器を傍に置いて置きますのでどうぞお好きに…」