10
私がパーティのみんなと一緒に過ごすようになって、半年程過ぎた頃、大型で未踏のダンジョンに潜っていた。コボルトにトロルにゴーストやグールと階層によって、様々な敵が襲ってきた。
それらを退治し、33階位降りた頃だろうか。私達は結界を張り、体を休めることにする。
軽く食事を取り、皆結界の中で寛いでいると、ヘルメスが不意に立ち上がった。
「少し周りの様子を見てくる…」
そうポツリというと、ガーゴイルへと変身して飛んでいってしまった。
いつものことながら、偵察にと一人で行ってしまうヘルメスが、心配で仕方がない。
普段なら十分もせずに戻るのに、二十分過ぎても、帰ってくる気配がない。まさか何者かに襲われていないだろうか…。怪我などしてないだろうか…。トラップにかかってしまったりしていないだろうか。
仲間内でも、いつもとなにかが違うと思ったのか、荷物の整理を始めた。誰ともなく「ヘルメスを探しに行こう……」そう言って先を進むことにした。
通路の先に、ガーゴイルの姿を認め、一同「無事で良かった」と安心の息をついた。
けれど、私達に気がついたガーゴイルはこちらへと向かってくる。知性のない瞳を向けて鋭い爪をこちらへと向けてくる。
「な…。ヘルメスではないの?」
「わからない…。この階層でガーゴイルはまだ見かけてないし……」
「襲いかかる火の粉は、振り払わんといかんじゃろ…」
「ヘルメスだったら……、弱った時に元の姿に戻るのかな…。その時にでも謝らなくちゃ…」
不安そうにダガーに手を触れながら、スパロウが呟く。
「ヘルメスじゃないと、信じて戦うしかないみたいね。あちらさん、無傷であたし達を帰す気ないみたいだし!」
自身の剣を操りながら、爪を避けつつ、アテナも言う。
それぞれの武器を手に、攻撃を加え、与えられる攻撃は避けつつどれくらいのダメージを与えたのか…。
「この体力…、普通のガーゴイルにしてはしぶとくはないですか?」
仲間に当たらないタイミングを狙いながら、ファイアボールを撃ち込むマジェスティが言う。
「もう倒れてても…、おかしくないのに…。嫌な予感しかしねぇ…!」
斬り込みながら、オイジュスも言う。
『そんなはずない……』
万が一、ガーゴイルクロークが呪いのアイテムだとしても、お金を積めば生き返らせる事だって……。
ガクリとガーゴイルが緑の血を流しながら、地面に倒れ伏せる。
もう用は済んだとでも言いたげに、じわりじわりと緑色の血は、赤く染まり倒れ伏したエルフが姿を現した。
「ヘルメス……? 髪と肌の色が違うよ!」
困惑した様子のスパロウと黙って頷く仲間達。
倒れ伏して動かぬ屍と成り果てたそれは、ダークエルフの特徴である褐色の肌色をした遺体だった。
絶望的な思いで、変貌した彼を一行は見つめた。




