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もう私が合流してから、何度目のダンジョン攻略だろうか…。数人魅了にかかってしまったみたいだけど、普通に一エルフとして接してもらえるこのパーティの居心地はそれなりに良かった。
魅了にかかってしまった二人の、信仰に近い好意は厄介ではあったけど……。
パーティの居心地が良くて、あまりそんな事を気にもしなくなった。
いつもの様にヘルメスがマントの力で、ガーゴイルに変身し罠やモンスターの確認や偵察に行ってくれる。
もうそんな頃には、『魅了にもかからない……。その上に、素っ気ない態度で、一人のエルフとして接してくる彼』を、気がつくと、つい見つめてしまう。今まで普通に接してもらえる相手が、周りにあまりいなかったから、余計に嬉しかったのかもしれない。
普段の何気ないやり取りの上で、漠然と感じるのは、私自身というよりもエルフという種族に関して、自主的に関わらない様にしているみたいだという事。嫌いという訳ではない。警戒しているような印象だろうか…。本来あまり仲が良くないとされているドワーフのゴンとも、同種族の私と比べたなら、余程仲良しに見える。だからといって、私やエルフに対して素っ気ないだけだと気がついてしまった。
ふとした瞬間に、本来彼が持ち合わせているであろう優しさを感じて、不意に温かい気持ちになる。
ダンジョンの途中の森で木の上に寝そべり、真剣な表情で魔導書を読んでいる彼の姿。
シーフも兼ねているからか、ものすごく身軽で木の上から、周囲を警戒して敵の有無を確認する姿や、冷めた表情で食事をしつつも、律儀に一声「美味しかった」と声をかけてくれる。そんな不器用な中に感じる優しさ…。
さらりと難しい魔法を駆使している姿。真剣な顔で鍵開けやトラップ解除する姿も…。
気がつくと私は、彼に気づかれない様にと、こっそりと、でもどうしようもないくらいに目で追ってしまっている。私自身、無意識に…、無自覚に…。
そんな彼本人にとっての何気ない彼の仕草に、私の瞳は奪われ、胸はなぜだか高鳴った。
「ミリアムお姉ちゃん。本当に、ヘルメスが好きなんだなぁ~」
たまにからかう様に、スパロウが言うから、「スパロウの事も好きよ」そう言って頭を撫でる。
「そう言うのと違うと思うんだけど……」
納得しきれない様にそう言うスパロウは、撫でられるのは嬉しい様で、おとなしくなすがままになっている。
気がつくと、少しの間彼は消えていて、十分もせずに再び姿を現す。
私やエルフに対して、距離をおいている事となにか関係があるのかな…、いつか仲良くなれたら、理由なんかも明かしてくれたらいいのに、そんな事を暢気にも私は考えていた。
そんな私を面白くなさそうに、オイジュスやネーレウス が遠巻きに見ていた事など気づきもせずに。




