第七章☆荒井さんの野望
「竜星!よく来てくれたわ!」
風祭家のパーティーだった。
場違いだと思って着ていく服を持っていない、と竜星が断ろうとしたら、風花がポケットマネーでオーダーメイドの礼服をつくってくれた。
「やあ、よく来たね」
荒井さんがめざとく二人を見つけて近づいてきた。
「風花さん、ちょっと…」
手招きされて、風花は竜星から離された。
ボイルのことで荒井さんにアドバイスもらいたかったんだけどなー。と竜星が頭をかいていると、物陰で話している声が聞くともなく耳に入ってきた。
「荒井は風祭家の跡取りに取り入っていずれ結婚するつもりかもな」
これは聞き捨てならない。
「あの人の良い荒井さんがそんなわけないだろ!」
ひゃー。
「みんな言ってるんですよぉ」
そこにいたひとたちはうやむやにしてばらけていった。
「新海グループの御曹司だよ。初対面だよね?」
「ええ」
「はじめまして風花さん。…困ったなぁ」
「?なにが?」
「オヤジに取り入って来るように言われてたんだけど、もう、お相手いるんですね?」
「ま、まあね!」
風花は虚勢をはった。荒井さんはポーカーフェイスで風花のそばについているけれど、本心はどうなのだろう?風花にとってはとりあえず、良い虫よけだった。
「取引先への挨拶は一通り終わったから竜星君のところに行くかい?」
「そうね!」
風花はあからさまにホッとした表情ですたすた歩いていった。
「竜星!ごめんなさい退屈じゃなかった?」
「いや、食事はうまいし、面白い話も聞いた」
「面白い話?なにそれ?」
「荒井さんが風花に取り入って風祭家の後釜を狙ってるぞ!って」
「えええ?!」
「いや、あながち嘘でもないんだけどね」
「「荒井さん!!」」
「風花さんが嫌でなかったら、将来を考えてますよ」
「えっとぉ〜」
「それとも、そこの竜星君が好きなんですか?」
「ちょっと待って!」
風花は真っ赤になっている。
「僕は風花を恋愛対象に見たことはないです」
竜星がたんたんと言った。
「言ってくれるわね、二人とも!…私はまだ学生だし、まだ先のことはきめたくないわ!」
「わかりました」
「わかった」
荒井さんと竜星がそれぞれ言った。
風花も竜星もこれを境に荒井さんへの見方が変わった。