第六章☆研究所
「ちょっと待ってセバスチャン」
「何でございますか?風花お嬢様」
「ネクタイが曲がってるわ」
「恐れ入ります」
研究所に入る前、風花がセバスチャンの首の付け根に何かつけていた。
「何?」
「別に」
研究所の職員が出迎えて、風花と竜星は研究成果の展示物の広間へ案内された。
「マイロボットの開発は、年々着実な進歩を遂げています。でも、まだ、発展の余地はあり、いろいろな研究機関がしのぎを削っています」
「ボイルは?…ハナとセバスチャンも、どこですか?」
竜星が尋ねた。
「カスタム具合を点検してお返しします。しばらくお待ちください」
「やっぱりね…」
風花が呟いた。
「何?」
「ただじゃかえしてもらえないってこと!」
風花と竜星のやりとりに、研究所職員が苦笑している。
竜星のボイルと風花のハナはコンテストの際に審査員から細かいところまでチェックされていたはずだから、すぐ戻ってくるだろう。
問題はセバスチャンだ。
初代チャンピオンだったセバスチャンはその後も荒井さんによって、改良に改良を重ねられているはずだ。研究所はそのアイデアが欲しかったのだ。
竜星は心配でしょうがなかったが、風花は素知らぬフリで、ハナをグレードアップするためのアイデアを探すのに夢中だった。
「マイロボットは持ち主の感性を反映します。素敵なマイロボットを開発してください」
「ええ。もちろん!」
風花はにっこり笑った。
帰る準備をしているとロボットたちが戻ってきた。
「それじゃあ、お世話になりました、っと」
挨拶もそこそこにホバーカーに乗り込むと、風花は首から下げていたネックレスを出して、それにつけていたセバスチャンのコアをはずした。
「それ!?」
「荒井さんがね、見学の間はセバスチャンにダミーのコアをつけといてって」
「それでかぁ〜」
竜星はホッとして大きく息をついた。
「セバスチャン、ネクタイ」
「はい、お嬢様」
風花はセバスチャンのネクタイを外して、首の付け根の差込口からダミーのコアを外した。そして本物のコアを戻した。
「ネクタイよし!」
「ははっ」
今戻しておかないとホバーカーの運転に支障をきたす恐れがあった。
見送りに来ていた研究所職員がちょっと悔しそうにみんなを見送った。