第五章☆ネクストシティ
「セバスチャン、もっと速度出ないの?」
「これが法定速度ぎりぎりです。風花お嬢様」
風祭家所有のホバーカーで空を飛んでいる最中だった。
「これが僕らの街を上からみた景色かぁ」
竜星が楽しそうに窓から眼下を見下ろしていた。
「僕に空飛ぶ機能はつけてくださらないんですか?」
ボイルが竜星に尋ねた。
「いずれね!今は僕がまだ飛行物体の決まりごとをよく知らないからちょっと待っててくれないか?」
「はい。竜星」
「その時は私もハナと一緒に飛ぶわ!」
「今、一緒に飛んでいるではないですか?風花お嬢様」
「セバスチャン抜きで飛びたいのよ!」
「そんなぁ〜」
なんだかんだ言って楽しい行程だった。
マイロボットコンテストで特別賞をもらった竜星は、ネクストシティにあるロボット研究所に見学に行く権利をもらった。そこに風花は家の財力に物を言わせて竜星と同行していた。
「ほんとはセバスチャンは置いて来るはずだったのよ!」
風花はぷんすか言った。
「私は荒井さんの技術を見たいという研究所側からの要請で同行しておりまして…」
「わかってるわよ!」
「それに、ホバーカーの運転してくれてるしな!」
竜星がセバスチャンにウインクした。
ネクストシティ上空にさしかかると、高層建築物が林立していた。
「さすがね」
風花が近未来の幾何学的なビルを見てため息をついた。
「どうしてジグザグに飛んでるの?」
「ここの上空の飛行経路です」
コンピュータの電子地図に高度と緯度経度がインプットされているらしい。
「セバスチャンいなくても自動操縦で飛べるのよ!」
「風花!」
「何?」
「そんなにセバスチャンが気に入らないのなら僕に譲ってくれ」
「えっ」
風花は頭の中で計算機をはじいたのか、「私のロボットじゃなくて風祭家のだし、造った荒井さんはうちの従業員だからセバスチャンは手放せないわ」と答えた。
「そーかい」
竜星は笑った。ほんとは風花がセバスチャンを大事に思ってることに気づいていた。
「皆さん、降下しますからベルトをつけてください」
みんなそれぞれの席についた。人もロボットも体を固定して、ホバーカーはネクストシティのロボット研究所に到着した。