2話 プロローグ
「くそっ!ラグは多いし、キャラは思い通りに動かないし、何だこのクソゲー!」
僕は持っているコントローラーを投げ捨てる。ガンっと大きな音がして一瞬故障が心配になるが気にしない。画面には操作しているキャラが倒れている上にGAMEOVERの文字。大型モンスターを狩るゲームで何度目かの失敗をしたところだ。
「コンビニでも行くかな」
財布とスマホを持ち、部屋着の上にダウンジャケットを羽織り外に出ていく。11月とは言え、北海道はもう寒い。外に出ると部屋の温度との差でかけていた眼鏡が曇り白い息が出てくる。思わず体を抱きしめ、腕を擦る。
「さむっ」
そんなことをしてもあまり暖かくはならないためポケットに手を入れ歩き出す。コンビニまでは歩いて10分程の距離だ。歩いている間に暖かくなるだろう。
カツ丼ののぼりが立っているコンビニに着き立ち読みをしていると外にはチラホラと雪が降ってきている。
「やばっ、早く帰るか」
ホットコーヒーとエナジードリンク、夜食のカツ丼とお菓子を買い外に出ると瞬く間に吹雪となっていた。北海道はこれが怖い、まぁこの時期ならどうせ一度は溶けるだろう。ダウンジャケットのフードを被りジッパーを上げると小走りで帰ることにする。運動不足だから小走りすると息が上がるが仕方ない。吹雪でほとんど前は見えないが自宅の位置くらいは何となく分かる。遠くで急ブレーキの音が聞こえてくる。危ないな、轢かれないようにしないと。幸い僕のダウンの色は赤のためそこそこ目立つだろう。家の前最後の信号にたどり着く、かろうじて見える信号の色は青だ。右見て左見てっと。
信号を渡っていると変な感覚がしてふと右を見る。見えたのは2つのヘッドライト。
ーあ、こりゃ無理だ。
そう思った瞬間僕は車に轢かれていた。ドンッという嫌な音ともに僕の体が宙に舞う。意外と痛くないんだなとどこか冷静な頭で考える。あー、入院だとゲームできなくなるな、と思っていたら首から着地したようでグキッという音ともに僕の意識はなくなった。
「サル!もう少しだ!気を抜くなよ!」
「はっ!わかってらぁ、行くぜ!」
ジルの声を受け、前を見ると俺達の攻撃を受け弱ってはいるがまだまだ戦意が高そうな猪がいる。それを見据えながら横目でジルの方を見る。イノシシの攻撃を受けたからか革鎧が所々破れ肌が露出している、そこに浮かぶ汗も相まって正直たまらない。横目で見ていたはずが意識の大部分をそちらに向ける、ジルがなにか言っているような気がするが頭には入ってこない。
「てっ!」
気づいたら脇腹に衝撃を受けるとともに俺の体は宙を舞っていた。やべっ、はねられたか。
「バカヤロー!油断するなって言ったのに何私の方ばっか見てやがるんだ!」
ジルに怒鳴られている、まぁこれくらいなら着地して切り替えせるだろうと思って前を向くと大木があった。
「あ、やべ」
思わず声に出したと同時に大岩にぶつかり俺は意識を失った。