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異世界憑依冒険記  作者: グー
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1話「竜の討伐」

少しでも楽しんでくれたら嬉しいです

温い風が頬を撫ぜる。

陽が直上にあることに加え、強敵との戦いにより噴き出た汗が少し冷える。

しかし、激しい運動により心臓が強く早く鼓動を刻むことにより体の熱さは一向に冷える様子を見せない。


「体は熱くていい、頭と心は冷たく静めておくんだ。」


言い聞かせるまでもなく心に沁みついている言葉を儀式のように口端で唱える。

目の前には竜、西洋の竜だ。2足歩行でずんぐりした体を大きな足で支え胸元には足に比べると小さな手が突き出ている。全体的な大きさは4mほどと竜にしては小さな部類に入るが、その口から覗く鋭い牙と縦に金色に光る瞳が強い威圧感を与えてくる。人の身で挑むとは正気の沙汰には思えないだろう、1年前の僕だったら妄想乙といっていたことだろう。


「しかし、人って慣れるんだなっと!」


そう漏らしながら攻撃を捌いていく。竜の主な攻撃手段は爪と牙、それに尻尾の振り回し、体当たりと言ったところだろうか。近距離に特化しているがその攻撃を僕は時には避け、ときには両手に持った双剣で弾くことで凌いでいく。どんどん相手の攻撃が激しくなっているが僕の眼はその全てを捉えており、僕の意思に反応する体もあるので、攻撃の間隙を突いて少しずつ竜に攻撃を加えて行く。

すると竜が大地を強く踏みしめ、少し沈んだ体制から体当たりを繰り出してきた。

十分注意して観察していたつもりが今までよりさらに速くなっていたため回避がぎりぎりになってしまい、体勢が崩れる。

ーやばっ、距離が開いちゃったー


体勢が崩れた僕を見て竜が大きく息を吸い込む。その口元には赤い炎がちらちらと漏れている。

もしかしなくてもブレスだよね。攻撃範囲が分からないな。

たらりと冷や汗が流れる、暑かったはずの体に氷を当てたみたいな感覚だ。


『貸せ!』


そんな中脳裏に響く声があり、咄嗟に脳内に深く沈みこむように意識する。

とたん手足の感覚が無くなり自分と周囲を俯瞰で看ている様な視界に切り替わる。

竜は今まさにブレスを吐こうとしているのか口をこちらに向けているのが分かる。


「久しぶりの交代だな、感覚は7割ってところかな」


そんな中先程まで自分だったものー濃い茶髪の短髪を鉢がねでまとめ、急所を守る様な革鎧を装備している青年は呑気に自分の手を見詰めながら呟いている。しかしそれが余裕の表れだと言うことは他でもない僕が知っている。

青年は自分に向ってくる紅く燃え盛る炎をちらりと見たかと思うとそのばねのような体を僅かにたわませ、跳び立って行く。


「いーやっほうっーー!!!!」


眼前に迫る竜と同程度の大きさの炎を軽々と飛び越え、回転を加えながら竜の方に向かって行く。

竜はブレスを吐いている時は動けないのか、自分の炎で見えていないのか反応していないようだ。

回転しながら竜の頭上まで到達した青年は重力に縛られていないのかのごとくその両手に持った双剣を次々と龍に叩きつけていく。

青年は力が強いようには見えないがその双剣はこれまでにも龍に切りつけているのが嘘のように鋭く光っており、切れ味の良さが窺える。双剣の速度も俯瞰で見ているから捉えられるが目の前で振られていると残像か軌跡しか見えないほどの速度である。

攻撃の威力は切れ味×速度×力で求められるため力があまりなくても十分な威力になっていることだろう。

重力を思い出したかのようにその体が地面に吸い込まれていくが青年は竜の前に出した手を踏み台にして再び高く跳躍、そのまま前宙をするように竜の後ろに回り込み首の後ろを素早く4度斬りつける。竜が小さく高く声を上げる。そのまま糸が切れるように倒れ込み、大きな地響きとともに地に落ちる。

砂埃が舞い上がる地面に青年は軽い着地音とともに降り立ち残心、竜が起き上がらないことを確認して武器を腰につけた鞘にしまう。


「竜にしては手応えがなかったな、オウルにしては手こずっていたな」

『猿みたいに人間やめてないんだよ、助かったけど、そろそろ返してもらうよ』

「もうちょっといいだろ!『チッ、、、』

「あんまり猿に渡しておくと後が辛いし、帰れるか不安になるからね。もう既に体が重いし、、、。どうやったらこんなふうに体を動かせるんだか」

『そんなもんグッとやってガッと動いたら誰でもできるだろ?』

「はいはい、まぁ帰ろうか。しかし重そうだな、、、」


竜の体はどこをとっても高価な素材となる為置いて行くという選択肢はない。はぁ、と疲労で生暖かくなっている息をつく。幸いベースキャンプはここから近い、そこまで行けば荷車があるため少し楽になるだろう。そう考え、竜の死骸の胴体部分に縄を巻きつける。自分の体より大きな物を担いで運ぶのは無理がある為引きずっていくつもりだ。竜の体が地面との摩擦で傷つくとは考えにくいが念の為保護として布を敷いておく

もう一度はぁ、とため息を付き、重たい体に活を入れ引きずっていく。   






「猿!よくやったな、ついにお前も単独で竜を討伐できるようになったか。これで一人前のハンターだな、はやく爺に報告してこい、首を長くして待ってたぞ!」

「ああ、ありがとう、そのつもりだよ」


ギルドにつくなり顔見知りが声をかけてきた。報告するまでが依頼という言葉もあるし、すぐに報告しに行こう。爺は奥の部屋にいるはずだな。

奥に歩いていくと白髪を後ろで結って、髭を大量に蓄えた老齢の男が座っていた。歳を聞いたことはないが背筋もしっかりと伸びており、爺と呼ばれるほどの年齢を感じさせることはない。


「爺、竜を討伐してきたよ、死骸は解体所に預けてきた。」

「うむ、解体所からは報告を受けている。よくやったのう、これでお主を一人前のハンターと認め鉄環を授ける。今後も励めよ」

「ありがとう、死なない程度に頑張るよ」


一人前のハンターの証である鉄環を渡してきた爺は僕の言葉に突然笑い出す。


「あの悪たれが随分変わったもんじゃ、1年ほど前からかの?あえて聞いてはいなかったが、何かあったのかの?」


そう話しかけてきたため、僕はその出来事を思い出す。

「『そうか、もう1年か、、、』」


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