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思いの外上手くいかない理想の異世界生活!  作者: ミカル快斗
第一章 各々の思惑が始まる一日目
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第八話 死神クリス 〜田川晋也編〜

…遂に、この物語の悪役の一人が登場します…!


〜田川晋也の視点〜


――――終焉の大地ゴイサ、空疎大草原――――【現在時刻、不明】


 「くそ……。 少なくとも、今俺が何処に居るのかさえ解れば良いんだけどなぁ……。 ったく、本当に一体何処なんだよ! ”此処”は……ッ!?」


 田川晋也は困り果てていた……。


 せめて、何でも良いからこの世界に関する”情報”が欲しかった。


 〈……俺が置かれているこの状況を説明してくれる様な人物でも近くに居ないのかよ……ッ! もうこの際、誰でも良いからさぁ……ッ!〉


 然し、幾ら心の中で叫んでみても草原の周りには、人っ子一人すら居る気配が無く、晋也は途方に暮れていた……。


 「……まぁ、取り敢えず、誰かに出会える迄、歩き続けるしかねぇよなぁ……。 もしかしたら、何処かの”街”とか、”空き家”とかに辿り着けるかも知れねぇしな……」


 一縷の望みを持って、田川晋也は”無機質”な草原を歩き続けた……。


 歩き始めてから数時間ほど経った頃だった。

 晋也も、流石に疲労した様子で弱音を吐き出す。


 「はぁ……ひい……。 ひ、ひたすらに歩いてみたが、こんなにも誰にも会わないもんなんかぁ……?」


 〈そ、それに……。 最初この世界に来た時には特に疑問に思わなかったが……。 この辺りに草原は在っても、”木”とか、”花”とかが一切存在していないのか……?〉


 〈くそっ! 一体、何なんだよ……この世界はッ! 草っ原以外は、まるっきり何も無いじゃないか……ッ!?〉


 晋也は恨めしい目付きで、キョロキョロと辺りを見回す……。


 〈畜生……喉が乾いたってのに、川なんて無いし、そもそも雨も降る気配も無いしよ……ッ!〉


 〈ふ、ふざけんなよッッ!! 街や村どころか、”動物”とか”虫”すら居る気配が無い……! このままじゃ、俺は野垂れ死んじまうぜ……ッ!〉


 「な、何か打開策を思い付かないと、このままじゃ”生死”に関わるぞ……ッ! 何か、何でも良いから思い付け! 俺ッ!」


 と、晋也が必死に自分の頭を叩きながら、この現状を打破する決定打を考えている時だった。


 晋也の数百メートル程先に、シルクハットを被った”紳士風の謎の男”が、孤独にポツンと杖を突きながら佇んでいるのが目に留まった……。


 〈……んん? 何だ……? あの、もの凄く怪しい風貌の男は……?〉


 〈だ、だけど、この何にも無い状況下でやっと出逢えたんだッ!  このまま話し掛けない訳にも行かないよなぁ……っ!〉


 〈ヘヘッ、今じゃこんな怪しげなシルクハットの人物でさえも、自分にとっては”救世主”の様に感じちまうなぁ……!〉


 然し、ふと晋也は自身の”極度の不幸体質”の恐ろしさを改めて思い返す……。


 「……って、あれっ? でも、そう言えば……俺には極度の不幸体質と言う、呪われた様な体質が有った筈だよな……?」


 〈んん……? だとすると、ちょっと待てよ……? 例えば、あの紳士服の男が俺に対して”敵意”を持っていなかったとしても、俺の所為であの紳士服の男が不幸な死に様を晒してしまうかも知れないのか……?〉


 〈……詰まり、紳士服の男が敵だろうが味方だろうが、最終的に俺の極度の不幸体質に感化されて死ぬだけ……? そうなると、間接的に”俺が殺した”事になるのか……?〉


 嫌な事が脳裏に過ぎった晋也は、シルクハットの男に気付かれない様に、ゆっくり……ゆっくりと、足音を立てない様に後退りした。


 やがて、シルクハットの男が見えなくなる所まで後退りした晋也は、ホッと胸を撫で下ろした。


 「ふぅ……。 これで、彼が俺と出会う事も無くなったな……。 俺の所為で、彼が不幸な死を遂げたら後味が悪いもんなぁ……」


 と、晋也が呟いた時だった。

 突然、晋也の”背後”から思わず背筋が凍る程の低い声が聴こえて来た。


 「フム……。 貴方様は中々に素晴らしい”邪悪なオーラ”をお持ちの様ですねぇ? フフフ……」


 「!?」


 咄嗟に晋也が声が聴こえた方向に振り返ると、其処には先程の”紳士服の男”が不敵な笑みを浮かべながら此方の顔を伺っている様子が目に入った。


 「えっ!? な、何で俺の背後に……ッ!? だ、だって、シルクハットの人は、この先に居た筈じゃ……!?」


 晋也は驚いた様子で、先程まで紳士服の男が居た筈の方角に指を差し向ける。


 〈おいおい、何だってんだよ!? 折角、こっちから気を遣って遠ざかったってのに、自分から来やがったぞ……このシルクハットの男ッ!?〉


 〈俺の気遣い返せよッ!〉


 と、晋也が思っていると、紳士服の男がクスクスと笑いながら、返答する……。


 「フフフ……。 ワタクシにとっては、貴方様の様な貧弱な者の背後を取る事は、赤子の手を捻る事よりも簡単なのですよ……? フフフ……!」


 この紳士服の男が、見るからに只者ではない事を悟った晋也は、冷や汗を掻きながら顔を青ざめる……。


 〈な、何なんだよ……この男は……ッ!? 謎の世界だからって何でも有りかよ……ッ!?〉


 〈ハッ! も、もしかして……?〉


 すると、晋也は瞬時に”最悪なシナリオ”を思い描く……。


 〈こ、このシルクハットの男は……ッ! お、俺の事を”殺す気”なのかも知れないぞ……ッ!? い、嫌だ……ッ! こんな所で死にたくねぇ……ッ!〉


 〈せ、せめて、琴子を一目でも見させてから死なせてくれよ……ッ! 琴子と再会が出来ないまま死んじまうなんて一切御免だぜ……ッ! だっ、誰でも良いから助けてくれぇ……ッ!〉


 と、晋也はそんな事を考えながら、圧倒的な恐怖感に打ちひしがれていると……。


 「おやおやぁ? 別にワタクシは、貴方様を煮て焼いて食ったりなんかしませんよ? ほらほら、落ち着いて?」


 と、紳士服の男は陽気な口調で晋也に話し掛けて来た……。


 すると、その思い掛けない言葉に対してビックリした様子の晋也は、思わず彼に向かって聞き返していた……。


 「えっ!? お、俺の事を殺す気なんじゃ……?」


 「いえいえ、そんな事は致しませんよ。 ……おっと、ワタクシとした事が、名を名乗る事を忘れておりましたねぇ……。 ワタクシの名は『クリス』と申します。 今後とも、どうぞ御見知り置きを……」


 「く、クリスさん……ですか? あ、はいっ! わ、分かりました……。 あ、俺の名前は、『田川晋也』って言います……。 こっ、此方こそ、お……御見知り置きを……っ!」


 〈い、意外と丁寧な人だな……? 割と良い人なのか……? でも、だとしたら余計に俺の不幸体質の所為で死ぬ事になったら嫌だな……〉


 すると、思い悩んでいる晋也とは裏腹に、クリスは何やら晋也の”服装”を眺めながら考え事をしている様子だ……。


 「フム? 所で貴方様は、どうやらこの世界の”原住民”では無い様ですねぇ……?」


 「あ……はい! そうですね……。 えっと、俺は地球の日本と言う国からやって来ました……っ!」


 「”チキュウ”……。 なる程ねぇ。 よくチキュウのニホンなる国からやってくる人間は多いですからねぇ……」


 「へぇ〜……。 一応、クリスさんは地球とか日本の事は知ってる感じなんですね……?」


 〈この反応を見るからに、明らかに此処は地球じゃねぇな……。 ”異星”とか”異世界”の類いだろうなぁ……〉


 と、晋也が考えていると……。


 「フム……。 実を言うとですねぇ? ワタクシは、遠い昔に”天界”に居た事があってですねぇ?」


 〈んんっ!? って、天界だとぉ……? と、兎に角クリスさんから、詳しく天界の事を聞いてみるかっ!〉


 「へぇ……? 天界ですか? それなら折角なので、その天界の話を聞かせて欲しいんですけど……良いでしょうか?」


 すると、その晋也の言葉を聞いたクリスは、途端に晴れやかな表情を浮かべると、すかさず天界での出来事を晋也に話してくれた。


 「フフフ! いやぁ〜、”あの頃”は楽しかったですよぉ……。 色んな世界を天界から眺めていると、色んな生物が産まれたり、色んな生物が死んでいって、あぁ……。 生物って本当に素晴らしいィィッッ!! ……と、言う気持ちで溢れ返るんですよねぇ……っ!」


 「な、なるほど……? 詰まり、クリスさんは所謂、”神様”みたいな立ち位置だったんですね?」


 「フム。 まさに、そうですねぇ……。 昔は、ワタクシも神様と持て囃されてたのですがねぇ……。 他の神々から理不尽な理由で天界を”追放”されてしまいましてねぇ……。 今では、この世界で放浪するだけの退屈な日々を送っていますねぇ……」


 〈な、なんか……この人も色々な悩みを抱えてるんだなぁ……。 と言うか、”元神様”って……かなりの大物なんじゃないのか……?〉


 クリスに同情した晋也は、この世界に関する情報を収集する為にも、更にクリスに向かって質問を投げ掛ける。


 「そうですか……クリスさんも大変だったんですね……。 えっと、所で此処は一体何て名前の場所なんですかね……?」


 「おっと、フフフ……。 どうやら晋也さんは、この世界の情報を、いち早く知りたい様ですねぇ……? コホン。 この場所は、この過酷な異世界の大地の中でも”一番危険視”されている【終焉の大地ゴイサ】で御座いますよ……?」


 「なっ、何だと……!? いっ、一番危険視されている”終焉の大地”……だって!?」


 クリスの口から衝撃的な事実を聞いた晋也は、異世界でも相変わらず効果を発揮し続けている自分の”極度の不幸体質”に対して激しい怒りを覚えた……。


 〈くそっ……ふざけんなよ……ッ! これじゃ、琴子と出逢うどころか、自分が生き抜くだけで精一杯じゃねぇかよ……ッッッ!!〉


 〈そもそも、この場所の近くに運良く琴子が居たとしても、か弱き女性の琴子が生き残れる筈が無い……。 くそぉ……ッッッ!!!〉


 やがて、晋也の脳内は”絶望”の二文字に埋め尽くされた……。


 すると、その思い悩んだ様子の晋也の事を見兼ねたクリスは、慰める様に晋也に向かって問い掛けた。


 「フム……。 どうやら貴方様は、かなり思い悩んでるみたいですねぇ……? ならば、このワタクシの”野望”に是非とも協力して下さりませんかねぇ……? もし協力して頂けるならば、ワタクシも御礼の気持ちを込めて貴方様に御協力致しますよ……?」


 「な、何だって……!? そ、それは本当なのか……ッ!?」


 「えぇ……本当で御座います」


 「……なるほど。 そ、それで、アンタの野望は一体何なんだよ……? 俺なんかに出来る範囲の事なのかよ……?」


 「フッフッフ……! ワタクシの野望の内容は……」


 すると、晋也の言葉を聞いたクリスは、ゆっくりと口角を上げると、静かに大きく目をカッと見開いた……。


 〈えっ!? こ、怖ッ! 急になんだよ……ッ!?〉


 すると、そんな歪な表情を浮かべているクリスが晋也に向かって、思わず身震いするかの様な恐ろしい声色で自身の野望の内容を答えた……。


 「ワタクシの野望とは、この”世界を滅ぼす”事で御座いますよ……。 フフフッ……!」


 まるでクリスは、全人類を見下すかの様に、静かに嘲笑った……。


 「こ、この世界を滅ぼすぅッ!?」


 〈こ、コイツ……!? この世界を滅ぼすって正気なのかよ……ッ!?〉


 〈本気で言ってるんだとしたら、とんでも無い事だぞ……ッ!?〉


 どうやら、晋也の”極度の不幸体質”は、現在進行系で健在の様だ……。



【現在位置】

【終焉の大地ゴイサ、空疎大草原】


【現在の日時】

【日時不明】



【田川晋也】

【状態】:緊張

【装備】:新品同様の学校の制服

【道具】:無し

【スキル】:生まれ付きの極度の不幸体質

【思考】

1:世界を、滅ぼす……だと!?

2:初っ端からやべぇもんと出逢っちまったぜ……!

3:琴子……。 お前だけでも無事でいてくれよッ!

【基本方針】:琴子の無事を祈る。クリスを警戒する。

※此処が終焉の大地ゴイサと言う名の場所と認識しました。



【死神クリス】

【状態】:機嫌良好

【装備】:漆黒のシルクハット 漆黒の紳士服 漆黒のステッキ

【道具】:相手から発する様々なオーラの色が解る水晶玉

【スキル】瞬殺の審判【効果】:自身が敵だと認識した人物を”審判”する事が出来る。審判された相手は強制的に死亡する。因みに、このスキルにデメリットは一切存在しない。

【思考】

1:ワタクシを天界から追放した憎き神達よ……。 ワタクシが、この異世界を完全に滅ぼしたらどう思いますかねぇ……?

2:追放されてから幾数百年経ちました……。 ワタクシの失われた力も漸く元に戻って来ましたねぇ……。

3:フフフッ……! これで”復讐”の手筈は整いましたよぉ……ッ!

【基本方針】:異世界を滅ぼす。協力者を集める。自分に協力しない者は瞬時に殺す。いずれ天界を乗っ取る。天界の神達に復讐する。

※晋也に警戒されました。

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