第四話 極度の不幸体質男! 〜田川晋也編〜
ここから、別サイドの人物の視点の物語も始まりだします…!
〜田川晋也の視点〜
――――異世界の何処か――――【現在時刻、不明】
風一つない草原にて、とある一人の男が目を覚ました……。
〈う〜ん……。 あ、あれっ……? 此処は一体……”何処”だ?〉
男は辺りをキョロキョロと見回しながら、物思いに耽る。
「えーっと……? 俺って、確か……”下校中”だった……筈だよな!? い、一体何処なんだよ……此処は!?」
まるで見覚えの無い大地に、突如として放っぽり出された男は、自分の身に一体何が巻き起こったのかを知る為にも、必死に先程迄の自分自身の記憶を辿り始めた。
〈いっ、一体俺の身に何が起こったってんだ……!? それに、さっき迄隣に居た筈の俺の”彼女”の姿も見えねぇし……っ!?〉
〈クソッ! それにどんなに辺りを見回してみても、どこもかしこも草原が無限に広がってばかりで、この場所に関する手掛かりが一向に掴めねぇ……!〉
〈くっ……! おまけに、何やら頭が痛い……! 酷い激痛だ……ッ!〉
〈うっ……。 待て待て……冷静に良〜く思い出せよぉ〜……? ゆっくりで良いから……。 何でも良いから、兎に角……さっきまでの記憶を呼び覚ますんだよ……ッ!〉
暫くの間、必死に記憶を呼び起こそうとしていると、不意に男の脳裏に、先程迄の鮮明な記憶が蘇って来た……!
「んぉッッ!! わ……僅かだが、思い出して来たぞ……!」
〈そうだよ……! ついさっき迄、俺は生まれて初めて出来た彼女と一緒に下校中だったんだよ……ッ!〉
〈お互いにイチャつきながら楽しく下校してたのに、突然の出来事だった……!〉
〈”謎の覆面”をしている怪しい男がバッと、急に俺達の目の前に現れたんだったよな……? ……今思えば、あの謎の覆面男は”テロリスト”か何かだったのかも知れないな……〉
「クソッ! あの時、俺が気付いて咄嗟に行動していれば……ッ!」
〈謎の覆面男と邂逅してから直ぐの事だった……! 奴は、そのまま持っていた鞄を思いっ切り、此方に向かって投げ飛ばしてきやがったんだ……ッ!〉
〈急に鞄を投げ渡された俺達は、ついうっかり、その鞄を慌てて”受け止めて”しまったんだ……〉
〈だけどそれが、 俺達の”運の尽き”だったんだよな……。 次の瞬間だったんだ……。 その鞄が怪しく光ったと思ったら、大きな爆発音と共に……〉
「俺達を巻き込みながら爆散したんだ……」
男は、虚ろな目でボソッと力無く呟いた……。
〈……そして、再び目を覚ましたと思ったら……。 何故だか、更に訳の分からない”草原地帯”に居るって……。 もう、本当に一体全体どう言う事なんだよぉ……。 何で、俺ばっかに、こんな試練を……ッ!〉
「くそぉ……。 俺の人生、いつもこんなだ……ッ!」
男は、悔しそうに地面に手を打ち付けながら、日頃の自身の運の悪さを嘆いていた……。
そう、この男……。 『田川晋也』と言う名の男は、根っからの”不幸体質”を持っていると言うある意味特殊な人間なのだ。
〈畜生……。 思い返せば、俺は子供の頃から……根っからの不幸体質だった……〉
〈先ず、俺の友達、家族、親戚は漏れなく全員が”不幸な死に方”をしていたし、何より友達に至っては、俺と友達になった瞬間に、何故だか意味不明な”謎の力”が働いて、バタバタって死んでいくんだぜぇ……? 訳分かんねぇだろぉ……?〉
〈更に、俺自身も幾度と無く”大怪我”を負ってるし、勉強面に置いてもカンニングなんて一切していないのに、先生からカンニングをしたと勘違いされる事もしばしば……〉
〈おまけに、電車に乗ると100%痴漢冤罪をされるし、俺が気に入った場所は何時ものように放火に遭うし、俺が飼うペットは何故か気が付いたら皆、謎の”不審死”を繰り返しているし……ッ!〉
〈挙げ句の果てに、やっと出来た彼女が今日のテロによって爆死しただとぉ〜? おい、ふざけんなよ俺の人生ッッッ!!!〉
自身の生い立ちを思い返している内に、晋也の中で苛立ちがピークを超え始めていた……。
〈その上、俺自身も”四肢を失って死ぬ”と言う結末を迎えとるしッッッ!!! ………んっ? って、あれっ……?〉
すると、心の中で慟哭を上げていた晋也の脳裏に、不意にとある”疑問”が浮かび上がってきた……。
「ん……? ま、待てよ? そう言えば……。 な……何で俺は”生きてる”んだよぉ……?」
〈おまけに、何で俺は……こんな、だだっ広い草原で五体満足で横たわっていたんだよ……?〉
すると晋也は、この訳の分からない現状について再び考え始めた……。
「それにしても、本当に何なんだよ……? この”世界”は……?」
〈俺は、爆発に巻き込まれて死んだんじゃなかったのかよ……ッ!?〉
〈待てよ待てよ……ッ!? と言うか、そもそも此処って、”天国”とか”地獄”とか”異世界”とかそう言った類なのか……?〉
〈ハッ! だとしたら、先に死んだ俺の友達や家族も此処に居るのか……!? そうだと良いな……うん……〉
田川晋也……。
彼の不幸体質は底が知れなかった。
実は、『五十嵐隼人』、『仁科権兵衛』、『大宮座衛門』の3名が天界にやって来る前よりも先に、田川晋也と、その彼女がソアボの手によって天界に連れて来られていた。
然し、この局面でさえも、田川晋也の”不幸体質”が炸裂してしまった……。
元々、物覚えの悪い娯楽の女神ソアボは、五十嵐隼人達とのやり取りで、だだっ広い真っ暗な天界で置きっぱなしだった田川晋也とその彼女の存在を、つい”うっかり”忘れてしまっていたのだ……!
その結果、既に天界にはもう”誰も居ない”と勘違いしたままの娯楽の女神ソアボが、天界から直接異世界に行く為の”ワープゲート”を開きっぱなしにした状態で隼人達と一緒に異世界に行ってしまったのだった……。
その上、天界に神様が一人も居ないと天界の時空は乱れに乱れる為、結果的に晋也とその彼女は自分達の気付かぬ内に異世界へのワープゲートに徐々に引き寄せられると、そのまま勝手に”異世界転生”をして仕舞ったと言う顛末である。
無論、晋也とその彼女の二人は、そんな真実を知る由も無い……。
おまけに、田川晋也はソアボからスキルを貰えなかった事どころか、極度の不幸体質と言った寧ろバッドステータスと呼ばれる物が生まれ付き付与されている……。
詰まり、晋也はこんな過酷な異世界を”生身”なだけじゃなく、様々な不幸な出来事に直面しても必死に生き抜かなくてはならない羽目になってしまったのである……。
「くっ……悩んでいても仕方無いか……ッ! と、取り敢えず、”琴子”を探すか! きっと、この世界の何処かに居る筈なんだ……ッ!」
〈……絶対に、必ず俺が見付け出してやるからな……ッ!
待ってろよ〜……琴子ッ!〉
晋也は、兎にも角にも現世で爆死した彼女、『佐藤琴子』を探す為に重い腰を上げた。
……果たして、佐藤琴子も、この異世界に無事に転生されているのか……?
……そして、彼は果たして、この過酷な異世界で生き抜く事が出来るのか……?
……それはまだ、誰にも解らない……。
因みに、この田川晋也が今立っているこの大地こそが、実は転生者が最後に訪れる事になるであろう【終焉の大地ゴイサ】内に在る『空疎大草原』と言う名前の場所なのだが……。
そんな衝撃的な事実もまた、田川晋也には知る由もなかった……。
【現在位置】
【終焉の大地ゴイサ、空疎大草原】
【現在の日時】
【日時不明】
【田川晋也】
【状態】:茫然自失
【装備】:何故か爆風で消し飛んだ筈の衣類が新品同様に元に戻っている。
【道具】:無し
【スキル】:無し 不幸気味と言う体質持ち。
【思考】
1:……取り敢えず琴子を探すか。
2:……失った筈の手足が元に戻っている……?
3:……他はもう何も考えられない……。
【基本方針】:琴子を見付け出す。
※自分が普通じゃない出来事に巻き込まれた事を認識しました。
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