第三十一話 惹かれ合う二人の狂人 〜田川晋也編〜
〜田川晋也の視点〜
――――街トナデン――――【現在時刻、18時43分】
『キャーーーッッッ!!!』
『だ、誰かぁぁああッッ!! 助けてくれぇぇええッッッ!!! うぎゃあ……ッ!』
「ひゃははッ! 逃げ惑え、逃げ惑え愚民共がッ! まっ、幾ら逃げた所で、このロンバン様からは逃れられないがなぁッ!」
「ひぃッ! お、お許しを〜ッ!」
街トナデンは、通り魔ロンバンの襲来によって、次々と住人達が無差別に斬り付けられると、やがて辺りは阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた……。
すると、騒ぎを聞き付けた晋也が、困惑した様な表情で現場に駆け付けると、物陰に隠れながら恐る恐るロンバンの様子を探った……。
〈……!? な、なんだよこれは……!? ハッ! もしや、この状況でさえも、俺のこの【極度の不幸体質】が働いた影響だってのか……ッ!?〉
すると晋也は、辺り一面の血溜まりの中に無造作に散らばっている人間のバラバラ死体を見付けると、ふと物思いに耽った……。
〈いや、ちょっと待てよ……? 俺が、”まだ出会った事も無い人達”も死んでいるだと……ッ!?〉
〈な、何かが”変”だぞ……?〉
〈俺の、この他人をも巻き込むタイプの不幸体質は……”俺と出会った事がある人物だけ”が対象になる筈だ……〉
〈それなのに、この俺と認識のない初対面の人達もこの場所で殺されていると言う事は、まさか……!?〉
〈この俺の不幸体質が、此処に来て”変化”した……ってのか?〉
晋也は咄嗟にそう判断した。
いや、そう判断せざるを得なかった……。
「……くっ、早くこの街から逃げるか……!」
それに、そもそも何の戦闘力も持っていない今の晋也にとっては、”未知の力”を持っている目の前の敵に対して、抵抗の余地が一切無い為、一先ずこの街から一目散に脱出する事に決めた。
だが然し、晋也がコッソリと忍び足で踵を返した瞬間だった……。
「……おいおい、其処のお前〜? な〜に俺様の下から逃げようとしてんだぁ〜? この俺様が、誰もこの街から逃がす筈がねぇだろうがよぉ……ッ!」
「……なっ!? ば、バレてたのか……ッ!」
晋也の背後から、唐突に男の声が聴こえて来ると、晋也は両手を上げて降伏のポーズを取りながら、必死に思考を研ぎ澄ませる……。
〈……くそっ、どうする……!? このままじゃ、俺もこの殺人鬼に惨たらしく殺されちまう……ッ!〉
〈だけど、一体……どう乗り切れば良いんだってんだよッ! ……この”絶望的な状況”を……ッ!?〉
晋也は、ダラダラと滝の様に冷や汗を流しながら必死に現状の”最善策”を考える……。
……すると、そんな晋也に対して、ロンバンが飄々とした口調で話し掛けて来る。
「んん〜? お前……もしや、この街の住民じゃねぇなぁ? その服……どっからどう見ても普通の服じゃねぇしな……。 あっ、もしかしてよぉ? お前……此処とは違う”別の世界”から来たって奴かぁ〜?」
〈えっ、急に何故そんな事を……? だ、だが……これは好機だ……ッ!〉
〈折角、犯人の男が、俺に対して”興味”を示して来たんだ……! それならば、”この隙を”みすみす見逃す訳にはいかねぇよなぁ……ッ!〉
すると、晋也はロンバンに向かって、自分は”同類”だと言う事を説明し始めた。
「は、はいっ! そうなんですよっ! 俺は、此処とは違う別の世界から来たんですよっ! ……そっ、それで、俺はこの街の人達を、この俺の【極度の不幸体質】を上手いこと利用して殺してたんですよねぇ〜……! あははっ!」
すると、その思いもよらなかった返答を聞いた通り魔ロンバンは、目を丸くしながら驚愕した様な声を上げた。
「……はッ!? な、何ィッ!? まさか、お前も”俺と同じ思考の持ち主”なのか……ッ!? だ、だが、其の場凌ぎの口から出任せの嘘の可能性も……。 そ、それにそもそも、お前みたいなもんが人を殺せる訳が……」
すると、そのロンバンの言葉を聞いた晋也が、ニヤリと嗤いながら温泉街の方に指を差し向けた。
「嘘だと思うなら、直ぐ近くに在る温泉の男湯を見てみたらどうですか……? 其処には、さっき俺が殺してきた人達がゴロゴロと死んでいますよ……?」
「な、何だとぉ……!? おい、今すぐ俺を、その場所に案内しろ……ッ!」
「はい……分かりました……」
怪訝な表情を浮かべながら通り魔ロンバンは、道案内をする晋也の後を追う。
――――温泉街、男湯――――【現在時刻、18時54分】
やがて二人は、温泉の男湯に辿り着くと、その場には頭から血を流して横たわっている沢山の遺体が有った。
すると、その亡骸を目撃したロンバンは弾んだ口調で、晋也に慌てて問い掛けた。
「……ま、マジかよ……! 本当に死んでんじゃねぇかよッ!? おい、これをお前が殺ったってのかぁ〜ッ!?」
そのロンバンの問い掛けに、晋也はコクリと頷いた。
「はい、この俺の他人をも巻き込むタイプの【極度の不幸体質】を利用して……この人達を殺害しました」
晋也は、通り魔ロンバンに気に入られる様に、冷静さを装いながら悪意に満ちた顔をニヤリと浮かべた。
すると、その晋也の表情を見て、何やら満足げな顔を浮かべたロンバンが、高笑いを上げながら晋也の背中をバンバンと叩く。
「ははっ、ハハハハハ! お前の、その表情……”最っ高”……だなぁッ! イイねぇ〜、お前ぇえッッ!! イヒヒヒッ! まさか、俺以外にもこんな狂った奴が既に、この街に偶然にも居たとはなぁ〜……ッ! おい、お前……名は、なんて言うんだぁ〜?」
「俺の名は、田川晋也です。 それで、貴方の名前も教えて頂けるでしょうか?」
「なっるほど……田川晋也かぁ〜……! いやぁ〜、気に入ったぜ晋也ッ! あ、因みに、俺の名はロンバンっつーんだ。 俺は《夢幻旅団のNo.16》なんだが、もし良かったらお前も夢幻旅団に入ってみねぇかぁ〜?」
「夢幻旅団……ですか? ……そう言えば、クリスさんが似たような名前の《悪鬼旅団》ってのを乗っ取っている最中だった様な……」
すると、クリスが悪鬼旅団を乗っ取っている最中だと言う晋也の話を聞いたロンバンは、目を輝かせながら思わず天を仰いだ……。
「はぁ!? なんだよ、そのクリスとか言うイカれクレイジーな奴はッ!? 悪鬼旅団を乗っ取るだと……!? はははマジかよ、凄ぇやッ! こんなにも面白ぇ事を考える奴も居るもんなんだなぁッ!?」
通り魔ロンバンは、耳がキーンとする程の高笑いを上げると、キラキラした瞳を浮かべながら晋也の両肩を強く掴んだ。
「いてて……っ! ち、力が強いですよロンバンさん……ッ!」
「おい、晋也ッ! さっさと、この街の奴等をぶっ殺し終えて、直ぐにそのクリスって奴の所に俺を連れてってくれよッ! 俺ァ、そいつとも気が合いそうだぜぇ〜ッ!」
「わ、分かりましたからロンバンさんっ! そろそろ、手を離してくれませんか……?」
「おっと、悪いな。 へへへッ!」
無邪気な笑みを浮かべているロンバンに対して、晋也は心の中で”ほくそ笑む”。
〈ふっふっふ……。 よしよし、上手い事このロンバンって奴を俺達の仲間に引き込めそうだな……。 クリスさん、きっと喜ぶぞ〜……っ!〉
そして、晋也は邪悪な表情で顔を歪めた……。
【現在位置】
【街トナデン】
【現在の日時】
【4月7日 19時2分 春】
【田川晋也】
【状態】:一安心
【装備】:学校の制服 通貨袋
【道具】:金貨30枚 銀貨28枚 銅貨30枚
【スキル】:極度の不幸体質
【思考】
1:ふぅ……何とか、この場は乗り切れたな……。
2:ロンバン……コイツが仲間に加われば百人力だな……。
3:ただ、琴子の事は殺さないでくれとしっかりお願いしないとだな……。
【基本方針】:琴子を探す。クリスと協力してこの世界を滅ぼす。仲間を増やす。
※ロンバンを仲間に引き入れようとしています。
【通り魔ロンバン】
【状態】:興奮
【装備】:黒色の服 赤いマント 殺戮の剣
【道具】:包帯
【スキル】:一瞬の辻斬り
【思考】
1:もっと人を斬りたいな……。
2:晋也とクリスか……。 一緒に居ると面白い事になりそうだな……。
3:一先ず、この街の奴等を狩り尽くすか……。
【基本方針】:晋也に付いて行ってクリスと会う。面白い事になりそうだから晋也とクリスに協力する。取り敢えず誰かを殺す。
※クリスの事が気になっています。
【街トナデンの大多数の住民、死亡確認】




