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思いの外上手くいかない理想の異世界生活!  作者: ミカル快斗
第一章 各々の思惑が始まる一日目
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第十五話 見え隠れする女神の悪意 〜五十嵐隼人編〜


〜五十嵐隼人の視点〜


――――ムニルの家――――【現在時刻、14時6分】



 〈へぇ〜、此処がムニルさんの家かぁ〜っ! 結構、住心地の良さそうな家だなぁ〜っ!〉


 隼人は、ムニルの家に上がり込むと、キョロキョロと興味深そうに内装を見詰める。


 「おぉ〜、案外広ぇんだなぁ!」


 「確かに、中々に良いお家ですなぁ〜……っ! で、ですが某は、先程から喉がカラッカラなので、何か”飲み物”を……っ。 うぅオエ……っ!」


 好奇心旺盛にムニルの家の内装を見回している隼人と権兵衛とは裏腹に、座衛門は嗚咽をしながら水分補給を求めた。


 〈おいおい、本当に大丈夫なのか座衛門さんは……? 一先ず、”ソファー”の上に寝かせた方が良いかもな……〉


 すると、隼人はムニルに声を掛けると、リビングに置いてあるソファーを使っても良いかの確認を取った。


 「えっと、ムニルさんに一つだけ頼みたい事が……。 あの、具合が悪そうな座衛門さんの事を其処のソファーの上に寝かせておきたいのですが、良いでしょうか……?」


 すると、ムニルはその隼人の問い掛けに対して、ニコッと笑顔で返答した。


 「ふふっ、勿論良いですよ〜♪ ゆっくりと御休み下さいねっ♪ ではでは、今直ぐに皆様の分の”お飲み物”を持ってきますからね〜っ♪」


 「あ、有り難う御座いますムニルさんっ!」


 「おうっ! そりゃあ助かるぜッ! へへへ、あんがとなムニル!」


 隼人達は、”グロッキー気味”な座衛門を抱えながらリビングへと向かうと、ゆっくりと座衛門をソファーの上に寝かせる。


 〈よいしょっと……。 然し、意外と重いな座衛門さん……〉


 「す、すまないで御座るなぁ……。 某の体力が不甲斐無いばかりに……皆に、”御迷惑”を……ッ」


 「まぁ、気にすんなよ座衛門。 ゆっくりと休んで元気にさえなってくれれば、俺等は安心すっからよ!」


 「……ッ! 有り難き……有り難き! 皆の衆……ッ」


 皆の優しさに感化された座衛門は、思わず感涙を流し始める……。


 〈ははっ。 此処まで感謝されちゃうと、何だか照れちゃうな……。 別に、”普通の事”をしているだけなんだけどな……〉


 「お~っし! さてと、それじゃあ、そろそろ俺達もゆっくりと”羽根を伸ばす”事にすっか!」


 「あ、はいッ! そうですね! 仁科先輩っ!」


 隼人は元気良く返事をすると、”高級そうな見た目”の椅子の上に腰を下ろして、そのまま脱力しながら暫しの休息を取った。


 すると、そのくつろいでいる隼人達の下に、美味しそうな”ピンク色の液体”が入ったグラスを持っているムニルがやって来ると、隼人は鼻をクンクンと動かしながら匂いを嗅いだ。


 〈あれ? この匂いは……”苺”? と言う事は、あのピンク色の液体の正体は、”イチゴオレ”って事なのか……? と言うか、この世界にも苺って有るんだなぁ……〉


 と、隼人が感慨深そうにしていると、ムニルが気怠げな権兵衛達の顔を覗き込みながら声を掛ける。


 「あらあら、皆さんお疲れの様ですね……。 ふふっ♪ それでは、この”冷蔵庫”の中に常備している、キンキンッに冷えた最高級の”特製イチゴオレ”を御用意させて頂きましたので、これをグビッと飲んで是非とも旅の疲れを癒やして下さいねぇ〜っ♪」


 そう言いながらムニルは、丁寧にテーブルの上に一つずつイチゴオレが入ったグラスを並べていく。


 〈わぁ〜っ! やっぱり、見慣れた物が異世界に有ると、何だか安心するなぁ〜っ! て言うか、冷蔵庫も普通に異世界に存在してたんだな……〉


 「おぉ〜、イチゴオレじゃねぇかよっ! へぇ〜、異世界にも苺とかあんだなぁ? まぁ、ミルクは有るだろうとは思ってたけどよぉ?」


 すると、その権兵衛のふとした言葉を聞いた隼人は、とある事に気が付いた。


 「あれ、そう言えば冷静に考えてみたら、”異世界特有”の呼び方じゃなくて、日本と同じ様に”イチゴオレ”と呼ぶんですね……? 同じ飲み物だとしても、もうちょっとオリジナリティーの有る言い方をするもんだと思ってましたけど……」


 すると、その隼人の言葉を聞いたムニルは、首を傾げながら隼人に問い掛けた。


 「おや? もしかしたら、ハヤトさん達って、この世界とは”別の世界”からやって来たのですか……?」


 〈あ、そう言えばムニルさんに俺達が"転生転移"している事を伝えてなかったな……〉


 と、隼人が思っていると、イチゴオレの匂いにつられて、一瞬にしてソファーから飛び起きた座衛門が涎を垂らしながら会話に加わって来た。


 「の、飲み物ですぞぉぉおおッッッ!!! ね、念願の、飲み物で御座いまするぅぅううッッッ!!!」


 〈うっわ、座衛門さんったら……。 まるで、”化け物”みたいに涎を垂れ流してるよ……。 汚いなぁ……〉


 と、ドン引いている様子の隼人には気にも留めずに、座衛門はテーブルの上に置かれたイチゴオレが入ったグラスを手に取ると、そのまま一瞬にしてゴクゴクと飲み干した。


 「プハーッ! い、生き返りましたぞぉ〜っ!」


 「うおっ! いい飲みっぷりだなぁ座衛門よぉ〜ッ!」


 と、浮かれ気味の座衛門と権兵衛の事を眺めている隼人は、再びムニルの方に向き直ると改めて質問を投げ掛けた。


 「えっと、実は俺達は”異世界人”なんですよ……。 それで、ムニルさんに御聞きしたい事が有るのですが、一体何故この世界にイチゴオレが”存在”しているんですか……?」


 すると、その隼人の問い掛けを聞いたムニルは、にこやかに微笑みながら質問に答えた。


 「ふふっ、やっぱり異世界人だったんですねハヤトさんっ♪ 実はですね? この世界に存在している果物や野菜は、全て”日本”と言う此処とは違う世界から”逆輸入”された物なんですよ♪」


 「え? に、日本から……? あ、因みに俺達も日本からこの世界にやって来ました……!」


 「まぁっ! 通りでイチゴオレに強い反応を示していたのですねっ♪ ふふっ、これで私もやっと腑に落ちましたぁ〜っ♪」


 すると、そんな二人の会話を聞いていたソアボが、二人に割って入って改めて説明する。


 「あれ? そう言えば、隼人君達には、まだ説明してなかったっけ?」


 「え、説明ですかソアボ様……?」


 「うん。 えっとね? その昔、私が異世界転生させた人の中に、たまたま”農家の人”が居たんだけどねぇ〜? 私がその農家の人に対して、【植物の種、無限生成】と言う名の”スキル”を授けたんだけどね? だけど、その所為で異世界の食糧の概念を”根本的”に変えちゃったみたいでねぇ〜……?」


 と、ソアボは舌を出してウインクをしながら自身の頭をコチンと叩いて軽い口調で”メンゴ”と言うと、その話を聞いた隼人は呆れ返った……。


 「植物の種を無限に生み出せるスキルを与えた……っ!? な、なるほど……? 詰まり、俺達の”先駆者”の人が、地球上に存在している植物を、この異世界に勝手に広めたって言う解釈で合っていますか……?」


 「そうみたいだねぇ〜? まぁ、私は”知ったこっちゃない”んだけどねぇ〜?」


 すると、そのソアボの返答を聞いた隼人は、思わずソアボに向かって怒鳴り散らす。

 

 「そんな身勝手なっ! 女神様だからと言って、異世界の”生命バランス”みたいな物を崩しちゃっても良いんですか……ッ!?」


 隼人はテーブルの上に拳をバンッと叩き付けながら、恐る恐るソアボの方に目線を向けた。


 「え〜? 異世界の生命バランスぅ〜?」


 「えぇ、そうですよ……! ほら、答えて下さいよソアボ様―――」


 と、隼人が声を上げた”その直後”だった。


 ソアボは、人差し指を隼人の口元に寄せて言葉を遮ると、目付きを鋭くしながら、まるで”妖艶な大人の女性”の様な声色で話し出した。


 「ふーん? もしかして、隼人君って”異世界の可能性”とやらを舐めてるのかな?」


 「………………え?」


 今迄の”子供っぽい”陽気な口調の彼女とは打って変わり、色気の有る表情を浮かべているソアボに対して、隼人は思わずドキッと心臓を高鳴らせてしまった……。


 〈えっ!? そ、ソアボ様の表情がイヤらしく見えるぞ……っ!? い、今迄の子供らしい表情は何処に消え去ったんだ……っ!?〉


 と、困惑する隼人を余所に、ソアボは艶めかしい声色で隼人に話し掛ける。


 「ふふっ、キョトンとしちゃって、可愛らしいわね隼人君……?」


 「え、ソアボ様……? 今の”低い声”は……?」


 「ん〜? そんなに気にする程、低かった? 今の私の声?」


 「あれ、声がいつもに戻った……? え、えっと……?」


 「ふーん、隼人君? ちょっと”お耳”を貸してもらえるかなぁ?」


 「え、耳ですか……? まぁ、良いですけど……」


 「わ~い、ありがとっ♡」


 ソアボは、そう言うや否や、ゆったりと隼人の耳元に口を近付けると、そのまま隼人にしか聴こえない様な小声でボソッと呟いた……。


 『……この異世界はね? ……私の意思で”簡単に創り変える”事が出来るんだよ? ふふふっ♡』


 「なっ――――」


 ソアボの発言を聞いた隼人は、ビクッと身震いをすると、思わずソアボの顔を見詰めた。


 すると、その”瞬間”だった。

 ソアボの表情を見た途端に、隼人の思考は一瞬にして止まった。


 何故なら、見てしまったからだ。


 ソアボの……。

 とても女神様とは思えない様な、まるで”小悪魔”みたいに異様で……。


 ”悪意に満ちた表情”を……。


 「んん? どしたのぉ〜? 隼人君〜? 私の顔に何か付いてたぁ〜?」


 「い、いやっ! ソ、ソアボ様の顔が余りにも”綺麗”だったから……つい!」


 隼人は、咄嗟に言い訳をすると、気持ちを落ち着かせる為に、直ぐ様テーブルに置かれているイチゴオレを一気に飲み干した。


 「ング……ングッ! ぷはーーっ! いやぁ〜然し! 本当に美味しいですね! イチゴオレって! ははは……」


 「おぉーーッ! 隼人も中々に良い飲みっぷりじゃんかよぉ〜ッ!」


 隼人は、冷や汗を掻きながら、必死に気持ちを落ち着かせる。


 〈な、何だったんだ……? あの、ソアボ様の”悪意に満ちた微笑み”は……?〉


 〈傍から見たら、普通の可愛らしい少女の微笑みに過ぎないんだけど……〉


 〈でも、俺の目に見えたソアボ様の笑顔は……。 まさに”悪魔”みたいに見えたぞ……?〉


 すると、困惑の顔を浮かべている隼人とは対照的に、座衛門は天にも昇る心地で心を弾ませていた。


 「おぉ……。 某は今、まさに”幸せの絶頂”で御座いまする……。 幸せで、身体が溶けてしまいそうで御座いまするよぉ〜……」


 「ゴクゴクッ……ぶはーっ! 甘ぇし、美味ぇーッ! すげぇな! こりゃあ、疲れ切っている俺達の身体にめっちゃ効くぜーッ! あんがとな! ムニルッ!」


 内心焦っている隼人の感情とは裏腹に、権兵衛達は呑気にイチゴオレを飲み干していく……。


 すると、ムニルは更に権兵衛達が喜んでくれる様にと、さらなる”施し”を用意する。


 「いえいえ! 皆様への施しは、この程度では終わりませんよ〜……っ! 今まさに、皆様の為に”極上アップルパイ”をオーブンの中で、じっくりと林檎の果実の甘みが全体に浸透するまで、じっとりと丁寧に焼き上げていますから、少々お待ち下さいね〜っ♪」


 「おぉ! 異世界にもアップルパイとか有るんだな! まぁ、イチゴオレも存在してるぐらいだしアップルパイもそりゃあ普通に有るか!」


 〈ひ、一先ず俺もムニルさんが作ってくれるアップルパイでも食べながら、気持ちを落ち着かせるかな……〉


 「あ、それと! 最高級特製イチゴオレは、”お替り自由”ですので、お替りが欲しいと言う方は、何時でも私に仰って下さいね〜っ♪」


 すると、その言葉を聞いたソアボ達は一斉に、イチゴオレのお替りをムニルに頼んだ。


「は~い! それじゃあムニルちゃ〜ん! 早速、お替りを下さ〜いっ!」


「某も頼むで御座います〜っ!」


「俺もお替りを頼むぜ〜っ!」


「あ……。 お、俺もお願いします……! ムニルさん!」


 全員のお替りを求める声を聞いたムニルは、ニンマリと嬉しそうに口角を上げた。


 「あら、どうやら全員がお替りを求めている様ですね〜っ♪ 承知しました〜! それでは今すぐに、お替りをお持ち致しますね〜っ♪」


 するとムニルは、ルンルン気分でキッチンへと向かうと、冷蔵庫の中からキンキンッに冷えた最高級特製イチゴオレが入っている”大き目の瓶”を取り出すと、鼻歌交じりにスキップをしながら隼人達の所へと戻って行く。


 「フンフン♪ フン、フンフーン♪」


 すると、そんな危ない足取りで瓶を持って来たムニルに対して、権兵衛が忠告の言葉を放った。


 「おいおい、ムニル……。 幾ら何でも”浮かれ過ぎ”やしねぇか……!? こ、転んじまうんじゃねぇかとヒヤヒヤしちまうぜ……ッ!」


 「ふふっ♪ ご安心下さい……! 私の家には、来客の皆様が物に躓かない様にリビングとキッチンとの間には、なるべく”余計な物”は置かない様に心掛けていますので、この私が”躓いて転ぶ事”は決して御座いませんとも……っ! はいっどうぞ! イチゴオレのお替りをお持ち致しましたよ〜っ♪」


 すると、ムニルはテーブルの上に置かれている空になったグラスを手に取ると、そのまま瓶に入っているイチゴオレを溢さない様に丁寧にグラスの中に注ぎ込み終えると、”ドヤ顔”を決めながら隼人達に向かってエッヘンと”自慢”をする。


 「ふふっ♪ どうですか、どうですか〜っ♪ この私の”完っ璧な手付き”は……ッ♪」


 特に何事も無くイチゴオレを注ぎ終えた事を確認した権兵衛は、ホッと一息吐きながら、ムニルから手渡されたグラスを手に取った。


 「ま、まぁ、本人が気ぃ付けてるなら、俺はもう何も言わねぇけどよぉ……。 ゴクッゴクッ……ぶはーっ! それにしても、イチゴオレうっめー!」


 権兵衛達は、ゴクゴクと美味しそうに最高級特製イチゴオレを飲み干していく。


 すると、その豪快な飲みっぷりの権兵衛達の姿を眺めているムニルは、心の底から無性に嬉しさが込み上げると、隼人達に聴こえない様に、小声で呟いた……。


 『ふふっ……♡ あぁ……そう! ”その顔”です……その顔ですよ〜♡』


 『この、”嬉しそうな顔”が見たかったんですよ〜……♡ 旅人さん達の、この嬉しそうに充実してる、お顔……♡』


 『私は、誰かに”御奉仕”をしているその時だけ、自分が生きていると言う実感が湧いて来るんですよね〜っ♡』


 〈ん? ムニルさんはブツブツと一人で、何を言ってるんだろう……? まぁ、別にどうでもいいか……〉


 すると、隼人の視線に気付いたムニルは、更に声を潜める。


 『あら、ハヤトさんが此方を見てますね……。 き、聴かれてないよね……』


 「と……。 いけない、いけない。 余韻に浸ってる場合じゃないですね……! では、そろそろ極上アップルパイが焼き上がる頃ですから、一旦オーブンの様子を見てきますね〜……♪」


 「お~っ! 期待して待ってるぜぇ〜っ!」


 邪念を振り払ったムニルは、そそくさとキッチンへと向かって行った。


 然し、ムニルは”調子に乗った”のか、またもやルンルン気分で鼻歌交じりにスキップをしながらキッチンに向かっていた。


 「おいおい、流石に"嫌な予感"がしてきたぜぇ〜……? 本当に大丈夫なのかよムニルの奴よぉ……?」


 「確かに! ムニル殿が”躓いて転ぶフラグ”がビンビンに立ってますからなぁ〜っ!」


 と、座衛門がニヤニヤとしながら言葉を漏らした、その瞬間の出来事だった……。


 ズテンッ……!


 と、ムニルは何も無い所で躓くと、そのまま無様にも派手に、”すってんころりん”と転がって行って仕舞った。


 「……え? きゃーっ! ぶえっ!」


 やがて、廊下の壁に激突して回転を止めたムニルは、まるでエロ漫画の様な、股を大開きした状態の”あられも無いポーズ”で廊下に倒れ込んでいた……。


 すると、そんな”ド派手”に倒れ転んだムニルの姿を見た隼人達は、心配そうな表情を浮かべながら、慌ててムニルの下へと駆け寄って行った。


 「わーッ!? だ、大丈夫……? ムニルちゃん……!? パ、”パンツが丸見え”だから隠した方が良いと思うけど……」


 「だ、大丈夫ですか……? ムニルさん……? パンツが丸見えですけど……」


 「大丈夫で御座るかーーッ!? ムニル殿ーーッ!? ふむふむ、パンツの色はイチゴオレと同じく”ピンク色”ですな……っ!」


 「はぁ……。 おいおい、だから言わんこっちゃねぇって……。 おいムニル大丈夫か……? 後、ピンク色なのは座衛門、お前の”脳内”の方だろぉ?」


 権兵衛は冷静な口調で座衛門にツッコミを入れる。


 「ほぉ~? 中々に、上手い事を言いまするな権兵衛殿?」


 「それよりも、俺の手に掴まって下さいムニルさん……っ! どこか”痛めてたり”していませんか……?」


 隼人は、優しくムニルに向かって手を差し伸べた。


 「○△□〜〜〜!!??」


 然し、ムニルの脳内はそれどころでは無くなっていた。


 そう、今まさにムニルが痛めていたのは、身体では無く”メンタル”の方だったのだ……。


 隼人達に転んだ所を見られただけじゃなく、”ピンク色のパンツ”を目撃されてしまった事によってムニルの顔は、恥ずかしさの余り段々と”赤く”なっていた。


 そして、遂にムニルは、余りもの恥ずかしさから、声にならない程の”悲鳴”を上げながら軽く発狂した。


 「み、みみ、皆様……ッ! さ、先程の私の発言とッ! 今の、この情けない姿と”パンツ”の事をッ! 今すぐに……忘れてくださ〜いッッッ!!!」


 悲痛な叫びを上げたムニルは、一直線に”トイレ”に駆け込むと、そのまま一目散に鍵を掛けた……。


 ガチャ……ッ!


 〈えっ、ガチャッて……。 もしかしたら”鍵”を……?〉


 ムニルは、耐え難い程の恥ずかしさによって、熱くなった顔を両手で覆い尽くした状態で、自宅のトイレに引き篭もって仕舞ったのだ。


 そして、その一連の光景を見た隼人達は、全員困惑した……。


 「え? 厶、ムニルさーん……? あの、"アップルパイ"の事は……?」



【現在位置】

【ムニルの家】


【現在の日時】

【4月7日 14時17分 春】



【五十嵐隼人】

【状態】:困惑

【装備】:学校の制服

【道具】:金貨2枚

【スキル】:刹那の狙い撃ち

【思考】

1:ム、ムニル……さん?

2:あのー、アップルパイは……?

3:で……出て来てくださ〜い……。

【基本方針】:皆と異世界生活を満喫する。ソアボの事を詳しく知りたい。ムニルをトイレから出す。

※ソアボの不審さに疑問を抱きました。



【仁科権兵衛】

【状態】:困惑

【装備】:学校の制服

【道具】:金貨2枚

【スキル】:最強の意志

【思考】

1:はぁ……。 頭痛くなって来たぜ……。

2:全く……。

3:何なんだよ、この展開……。

【基本方針】:隼人と親友になる。仲間を守る。魔王を倒して現世に帰る。ムニルをトイレから出す。



【大宮座衛門】

【状態】:困惑

【装備】:眼鏡 侍のコスプレ服 剣のレプリカ

【道具】:金貨2枚 美乳剣舞のシール100枚

【スキル】:熟練の百戦錬磨

【思考】

1:だ、大丈夫で……御座いまするか……?

2:ム、ムニル殿ぉ〜……。

3:出て来て下さいませ〜……。

【基本方針】:異世界ハーレムを創る。美乳剣舞を布教する。トラックの運転手を成敗する。ムニルをトイレから出す。

※イチゴオレを飲んだ事により”瀕死状態”から復活しました。



【娯楽の女神ソアボ】

【状態】:困惑

【装備】:金色の羽衣 金色の指輪と腕輪 女神の袋

【道具】:女神の袋に色々入ってます

【スキル】:能力授与

【思考】

1:ムニルちゃんは忘れてって言ってたけど、あの見事な転びっぷりとパンツの事は、とてもじゃないけど忘れられそうにないな〜っ!

2:ムニルちゃんったら、恥ずかしがっちゃってもうー!

3:カワイイんだから〜っ♡

【基本方針】:隼人達と異世界を楽しく冒険する。天界の神々に復讐する。ムニルをトイレから出す。



【ムニル・ル・ナータ】

【状態】:大混乱

【装備】:平凡な街娘の服 

【道具】:今は自室に置いています。

【スキル】:極限の癒やし

【思考】

1:はわわわわ……! は、恥ずかしいよぅ……!!

2:うわぁ……顔あっつぅ……!

3:あ、そう言えば……。 気が動転して……アップルパイの事を忘れてた……。 どうしよう……。

【基本方針】:旅人と街の人達を癒やす。世界中の生物を自分の力で癒やす。アップルパイが焦げる前に取り出したい。でも今はトイレから出たくない。


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