第十一話 最初の街チーマ 〜五十嵐隼人編〜
〜五十嵐隼人の視点〜
――――始まりの大地ストファー、ポラ平原――――【現在時刻、13時50分】
ソアボがルンルン気分で隼人達をナビゲートしながら、の〜んびりと『最初の街チーマ』を目指していると、やがて遠くの方に”街らしき物陰”が見え始めて来た。
「おぉっ! そろそろ、見えて来たんじゃねぇか!? おい、ソアボ! あれがオメェの言う最初の街チーマって奴かぁ!?」
権兵衛は意気揚々と前方に指を向けると、ソアボは嬉しそうに返答する。
「うんっ! そうだよーっ! 彼処に見えるのが”街チーマ”だよ〜っ! いやぁ〜、案外早く着いたねー! みんな無事で良かったよ〜!」
「マジかッ! なぁ、オメェも見てみろよ隼人ぉ〜っ!」
「おぉ〜っ! あれが街チーマなんですね……! やっぱり”最初の街”なだけあって、長閑な雰囲気だなぁ〜」
すると、そんな嬉しそうな隼人達とは裏腹に、座衛門は横っ腹を抑えながら何やら辛そうな面持ちだ。
「はぁ……ぜぇ……。 み、皆の衆〜……。 待って下さいませぇ……」
そんな疲れ果てた様子の座衛門の姿を見た権兵衛は、やれやれと肩を竦める。
「おいおい、座衛門。 幾ら何でもオメェ、体力無さ過ぎねぇか?」
「す、すみませぬ権兵衛殿……」
座衛門はフラフラと千鳥足になりながら後方を歩いていた……。
〈座衛門さん……。 見た目通り体力が無いんだな……〉
「まっ、そんな事よりも! 街チーマで”武器”とか”道具”を揃えないとな!」
「そうだね隼人君っ! ふふっ! よ~しっ! ぱぱっと装備を整えちゃおっか!」
「おうっ! 所でよ、その街チーマってのは、一体どんな装備や道具が売ってんだよ?」
「うーん? まぁ、何か色々有ったと思うよ? 兎に角、各々が好きな物を勝手に買っちゃえば良いと思うよ〜!」
「ほぉ~ん? まぁ、見てのお楽しみってこったなッ!」
因みに、街チーマとは、小さな街ながら”最新”の武器や防具がきちんと流通しており、おまけにお値打ち価格と言う事で、装備や道具が心許ない”冒険初心者達”にとっては特に重宝する有り難い街なのだ。
「よーし! 後ちょっとで街チーマに到着だねぇ〜! えへへ~、折角だから街チーマまで皆で”競争”しな〜い? はいっ! 私、”一番乗り”〜っ!」
〈えっ? 競争……?〉
ソアボはそう言うや否や、街チーマに向かってまるで幼い子供の様に駆け出してゆく。
すると、そのソアボの言葉を聞いた座衛門と権兵衛も、慌ててソアボの後を追う。
「むっ! ズルいですぞ……! 一番乗りは某で御座いまするぞぉ……っ! ぜぇ……ッはぁ……ッ!」
「いーや! オメェ等に先に行かせてたまるかってんだ……! 一番乗りは俺だな……!」
「いやいや、皆して何やってんですか……全く」
すると、そんな3人に対して、隼人は何処か”冷めた目”で見ていた……。
〈やれやれ……。 目的地まで競争なんて、そんなの”小学生”がやる事ですよ……全く〉
「……えっと、ソアボ様ーっ! すみませんが俺は、ゆっくりと歩いて街チーマに向かいますよー……っ!」
と、隼人は先を行くソアボに向かって声を張り上げると、そのまま歩いて街に向かった。
すると、そんな隼人の気怠げな態度を見た一同は、隼人に向かって問い質す。
「オイオイッ! ”ノリ”が悪いぞ隼人……! オメェも一緒に走って来いよ〜っ!」
「そうだよーっ! もうっ! こう言うのは”皆で楽しむ”から良いんだよー? 私は、隼人君を”仲間外れ”にしたくないよ〜?」
「そ、そうですぞッ! は、隼人殿は某達を”悪者”にするつもりか……ッ! 某達は決して隼人殿を仲間外れにはさせませぬぞぉ……ッ!」
すると、3人から熱い眼差しを向けられた隼人は、思わずたじろいだ……。
〈うぐ……。 そんな目で俺を見ないでくれよ……。 仕方無い、ここは俺の方が折れる事にするか……〉
「はぁ……。 分かった、分かりましたから……! 俺も一緒に競争に参加しますからッ! よーし、それじゃあよ〜い……ドン!」
そう言い終わると隼人は、急に街チーマに向かって走り出すと、あっという間にソアボ達の事を抜き去って行ってしまった。
そんな快速を飛ばす隼人の姿を見て、慌てた様子でソアボ達も一斉に街チーマに向かって走り出す。
「あー! 急に、ずっるーい! 待てーっ! 一番乗りは私だよー!」
「へへっ……! 抜け駆けとは、中々やるなぁ隼人! んだが、この俺も負けてらんねぇぜぇ……ッ!」
「ふふっ、どうやら某の真の力を開放する時が訪れた様ですなぁ……! 隼人殿……! 某も負けませぬぞぉ〜……!」
隼人に感化されて、気合の入った様子の権兵衛達は、更に走るペースを上げていく。
すると、直ぐに皆を出し抜いた隼人の真後ろを、権兵衛がピタッと並走する。
「へへへッ! 追い付いたぜ隼人ッ! このままだと、オメェの事を、あっさりと追い抜いちまうぜぇ〜?」
〈ぐっ! 流石は体力自慢の仁科先輩……ッ!〉
〈こんなにも早く俺の足に追い付いて来るとは……ッ! だけど、今の俺は”今迄の俺”とは違うんだ……ッ!〉
「うおおぉぉッッッ!! 仁科先輩に負けるもんかぁぁああッッッ!!」
「んなッ!? は、速いッッ!?」
隼人は必死に走りながら、仁科先輩に負けじと足を徐々に速めていく。
「ヘヘッ! 中々やるな隼人ッ! んだが、まだまだ甘ぇなぁッ!」
然し、猛スピードで権兵衛は簡単に隼人に並び掛けて来る……!
〈クソ……ッ! まだだ……ッ! この程度のスピードじゃ、追い付かれる……ッ!〉
〈もっと、もっと速く……ッ!〉
すると、隼人の足が”蒼白い光”に包まれると、途端に隼人の脚の回転スピードが速まり、そのままハイスピードで平原を駆け抜けてゆく。
すると、その隼人の神秘的な姿を見たソアボが、冷静に分析する。
「うへぇ〜! あの隼人君の足の速さは、私が授けたスキル【刹那の狙い撃ち】の効果の現れだねぇ〜っ!」
「んあっ!? そうなのかよソアボッ! スキルの効果で隼人の足が速くなってんのかッ!?」
「うんっ! あのスキルの効果で隼人君の”フィジカル”が劇的に上がってるんだよ〜っ! その証拠に、隼人君の足元が蒼白く光ったでしょ?」
「へぇ〜! 能力が発動すると身体が光るんだなぁ〜っ! ヘヘ、そりゃすげぇや!」
と、権兵衛が感心していると、その権兵衛の”遥か後方”に、汗と涎で顔面がベタベタになっている座衛門の姿があった。
「ぜぇ……はぁ……ッ! お、お待ち下され皆の衆〜ッ!」
「うおっ!? んだよ、メチャクチャ足が遅いじゃねぇかよ座衛門! さっき言ってた”真の力”とやらは何処に行ったんだよッ!?」
「そ、そんなのは、はぁはぁ……。 そ、某の小さな戯れ言で御座いまするよぉ〜……」
すると、座衛門達がそうこう言ってる内に、どうやら隼人が一早く街チーマに辿り着いた様子だ。
――――街チーマ――――【現在時刻、13時56分】
「はぁ、はぁ……。 ど、どうですか……? 俺が一番乗り……ですよ? はぁ……はぁぁ」
隼人が到着して少し経ってからソアボと権兵衛も街チーマに到着すると、そのまま隼人と合流する。
「オ、オメェ、案外……足が速ぇんだなぁ……! びっくらこいたぜ……!」
「ふぅー……負けちゃったけど、みんなと走れて楽しかったー!」
〈……確かに、ちょっとだけ楽しかったかも……。 そう言えば、俺は運動会とかも今迄ずっとサボってたから、皆で走るなんて経験も初めてかも……〉
隼人が生まれて初めて経験した気持ちに対して少しばかり困惑していると、皆からかなり遅れて到着した座衛門がバタッと地面に倒れ込みながら苦悶の表情を浮かべている。
「わーーッ!? だ、大丈夫!? 座衛門君〜っ!」
「ゼェ……ゼェ……。 み、皆様方は、とっても……。 ゼェ……ハァ……素早いので……御座います……るな……! ゼェ……うっ! おえぇッ」
「ざ、座衛門さん!? ちょっと本当に、大丈夫ですか……!?」
〈おいおい、流石に無理し過ぎだってば、座衛門さん……ッ!〉
座衛門は、日頃の”運動不足”が災いしたのか、慣れない運動をした事によって、とてつもない吐き気に苛まれていた……。
権兵衛も慌てて座衛門の方に駆け寄ると、心配そうに話し掛ける……。
「おい、平気か座衛門……? こう言う時は、落ち着いて深呼吸しろよな……?」
「ヘ、平気で御座いまするよぉ……。 こう見えて某は”丈夫”なので御座い……ま……。 オ、オエェ……ッ」
〈いやいや、全然大丈夫じゃないですよ……! 一先ず、みんなで”休憩”できる場所は……!?〉
「おい、ソアボ! 何処か、この街に休める所はねぇのか……ッ!?」
すると、その権兵衛の問い掛けに対して、ソアボは腕を組みながら考える……。
「う〜ん……。 この街って、武器や道具の流通は良いんだけど、休める場所が”一般の民家”しか無いんだよねぇ……。 だから、誰かの民家を借りるしか……」
〈えっ? 要するに、この街には”宿屋”が存在しないって事か……?〉
「おいおい、何だってぇ? 宿が無い街なんてのが在んのかよ……?」
「うん……。 どうやら、この街は少し”特殊”みたいでね……。 まぁ、詳しい事情は私も知らないんだよねぇ〜……」
「うへぇ〜、マジかぁ〜……。 詰まり、この街の誰かに必死に頼み込んで、そのまま家に上がり込ませて貰うしかねぇってのかぁ〜……。 ったく、コンビニのトイレを借りるのとは訳が違ぇんだぞ……」
と、権兵衛が頭を悩ませていると……。
「えっと、あのー。 そこの眼鏡の人……大丈夫ですか……?」
突如として隼人達の後ろから優しい口調の”少女”の声が聴こえ始めた。
「えっ、だ、誰ですか……?」
一同がその声が聞こえた方に一斉に振り返ると、其処に居たのは一人の”片目隠れの白髪の少女”だった……。
そして、その白髪の少女は心配そうな表情を浮かべながら座衛門の事をジ〜っと見詰めていた。
〈……き、綺麗な娘だなぁ〜。 思わず、見惚れそうになった……〉
「んあ? もしかしたら、助けてくれるんかぁ? おっと、その前に名前を聞いても良いか?」
「わ、私は、この街の住民の『ムニル・ル・ナータ』と申します……! 実は、此処に偶然通り掛かった所に、其処の眼鏡の御方が、とても辛そうに倒れましたので……思わず心配になっちゃって……。 えっと、何か有ったのですか?」
すると…その彼女の問い掛けの言葉に対して、慌ててソアボが返答する。
「……えっと、実は私達は、とある事情で急いでこの街にやって来たもんだから、とても疲れちゃってて……。 だから、この街の何処かに私達みたいな”旅人”を泊めてくれる優しい人が住んでいる民家を探しててね……?」
すると、そのソアボの言葉を聞いたムニルは、パァ〜っと明るい表情を浮かべながら手を叩く。
「あっ、はいっ! それでしたら、是非とも”私の家”に休みに来てみませんか……っ!」
「え!? い、良いんですか!? 俺達の様な……見知らぬ人を家に呼んでも……!?」
「えぇ、大丈夫ですよっ! 私は”一人暮らし”ですから特に親の了承も要りませんからっ!」
少女は、鼻息を荒くしながら隼人達に言い寄ると、隼人は頭を悩ます。
「いやいや、一人暮らしとかなら、尚更―――」
と、隼人が言い切る前に、権兵衛が隼人の両肩を力強くドンッと叩いて制止する。
「まぁまぁ、隼人! ヘヘッ、ここは一つムニルの”御厚意”に甘えようぜ?」
〈うーん……。 まぁ、確かに今の状況だと相手を選んでいられないか……〉
「そ、そうで……御座いまするよ……! ハァ……ゼェ……。 某は……な、何か……飲み物を……飲みたい……おぉえぇっ!」
「ざ、座衛門さん! ほ、本当に大丈夫ですか!? まぁ、そうですね……。 確かに此処はムニルさんの御厚意に甘えるべきですね……!」
「よ~しっ! どうやら隼人君も納得してくれたみたいだし、それじゃあ決まりだねっ!」
そうソアボが決定すると、ムニルは自身の家にまで隼人達の事をナビゲートする為に意気揚々と歩き出す。
「皆さ〜んっ! 私の家はこっちですよ〜。 ちゃんと付いて来て下さいねぇ〜っ!」
ソアボは、心優しい白髪の少女に向かって御礼の言葉を述べる。
「いやぁ〜、ありがとねー! この街に着いて早々に貴女みたいな優しい人と出会えて良かったよ〜っ!」
「いえいえ、”人助け”は私が好きな事なので〜っ♪」
すると、隼人が未だにムニルに向かって”自己紹介”を行っていなかった事に気が付くと、慌ててムニルに話し掛ける。
「あっ、すみません! 所で俺達、ムニルさんに自己紹介してませんでしたよね……? えっと俺の名前は、『五十嵐隼人』です! いや、本当に親切にしてくれてありがとうございます……ムニルさんっ!」
その隼人の自己紹介を聞いてハッとした顔を浮かべたソアボは、続け様にムニルに向かって笑顔で自己紹介を始める。
「えへへ~、私の名は『ソアボ』だよーっ! 私、実はこう見えて”天界の女神様”なんだよね〜っ! どうー? 凄いでしょーっ! 褒めて褒めて〜っ!」
すると、ソアボが天界の女神だと言う”衝撃的な事実”を知ったムニルは、驚いた様な顔を浮かべながら慌てて聞き返す。
「え!? め、女神様だったのですか……!? わ、私……何か気に触る事は言ってません……よね!?」
「いやいやー! そんなに身構えなくて良いよムニルちゃんっ!」
そして、権兵衛と座衛門もムニルに向かって、自身の名を名乗った。
「へへへっ! そんで、俺の名前は『仁科権兵衛』っつーんだ! 気軽に権兵衛って呼んでいいぜ!」
「はいっ! ”ゴンベエ”さんですねっ! 此方こそこれからも宜しくお願い致しますねっ!」
「ゼェ……ハァ……。 そっ、某の名は……! ゼェ……ヒィ……。 お、『大宮座衛門』と申しまする……! ゼェ……ムニル殿……! 某達を介抱してくれて……感謝致しまするぞ……! ハァ……ヒィ」
「いえいえ、皆様方の様な困っている人を見掛けたら、助けてあげるって言うのが”この街のポリシー”ですからね……!」
「へぇ、ポリシーですか?」
隼人は興味深そうにムニルに聞き返した。
「えぇ♪ この街は宿屋が無い代わりに、街の住民達が協力して旅人さん達を”無償”で自分の家に短期間だけ住まわせて差し上げるんですよ〜っ♪」
すると、そのムニルの発言に対してソアボが若干の疑問を抱く。
「ん〜? でも、そんな事をしてこの街は”得”をするのかなぁ? 旅人を無償で泊めるぐらいなら最初から宿屋を運営しとけば良いのにさぁ〜?」
「おっ、確かにソアボの言う通りだぜ! おい、ムニル。 そこんとこは、どうなんだよ?」
すると、その権兵衛の問い掛けに対して、ムニルがチッチッチッと人差し指を左右に動かしながら、”この街の仕組み”についての説明を始めた。
「ふふっ。 厚意に損得なんて関係無い……と言いたい所ですが、実はそこに、ちょっと”秘密”があるんですよ〜?」
「秘密?」
隼人は首を傾げながら聞き返す。
「えぇ。 その秘密と言うのは、言ってしまえば”単純な話”なんですけどね? 住民である私達が、疲れた旅人さん達に”優しく接して差し上げる”事によって、旅人さん達は恩返しのつもりで、この街の商品を沢山買ってくれるので、結果的に宿屋を経営するよりも”数倍”儲かるんですよねぇ〜♪」
「ふ〜ん、なるほどねぇ……?」
「更に、元々沢山のお金を持っている旅人さんを無償でお家に泊めて差し上げたら、この街の一番高い武器や防具だとしても惜しみも無く、快く買ってくれるんですよ〜♪」
すると、その話を聞いて、何処か腑に落ちた様子の座衛門が顎に手を当てながらコクコクと頷く。
「まぁ、確かに……。 某も、せめてもの御礼の気持ちとして、この街のなるべく”高い物”を買う事によって少しでも街の発展に貢献したいと思いますからなぁ……」
「ふふっ、詰まりそう言う事です♪ なので最終的には、宿屋を有償で経営するよりも、無償で街の住民達が協力してお家に泊めて差し上げる事の方が、最終的にこの街の利益は”プラス”になるんですよねっ!」
「ふむぅ……。 確かに、それならば宿屋の経営費とやらも掛からなさそうですからなぁ〜……」
「なっるほどなぁ……! よく仕組みが出来てるもんだなぁッ! なっ、オメェもそう思うだろ隼人ッ!」
「えぇ、まぁ確かに俺も仁科先輩と同感ですよ」
〈確かにこの方法ならば、誰も傷付かない上に皆が笑顔でこの街の為に買い物をするから、街の運営としてはこれ以上無い程の素晴らしい出来だよなぁ〜。 特に”問題点”も見当たら……〉
と、隼人が感心しかけた所で、ふと隼人は一つだけ、この街の”致命的な問題点”に気付く。
「むっ? いや、待てよ……? その方法は、ちょっと危ないんじゃないか?」
〈……例えば、非力な女の人が一人で住んでいた場合に、その女の人の善意を悪用する様な”卑劣な旅人”がその下宿先の女の子を襲ったりなんかする”リスク”とかも勿論の事、考え得るんじゃ……?〉
〈あれ? そう考えてみたら、何者かも分からない見知らぬ旅人達を容易に自分の家に上げて仕舞う恐れが有るこの街の仕組みって、割と良くないのでは……?〉
と、そんな余計な事を”邪推”した隼人は、ムニルに対して直接問い質す事にした。
「えっと、あのー、ムニルさん? ちょっとだけ質問しても良いですか……?」
「はい? 勿論大丈夫ですよ〜っ♪」
「えっと、例えばですよ……? 例えば、ムニルさんが善意で家に泊めようとして上げた旅人が、ムニルさんの家に着くや否や、いきなり襲い掛かって来て、無理やりムニルさんに”乱暴”をしようとした場合……ムニルさんは、一体どう乗り切るつもり何ですか……?」
隼人は、恐る恐るムニルに質問した。
「えっと、どう乗り切る……ですか? んーっと……」
すると、その隼人の質問を聞いた権兵衛が、不思議そうな顔を浮かべながら隼人に問い掛ける。
「オイ、隼人……? オメェ、それは一体どう言う”意図”で言ってんだぁ……?」
「すみません仁科先輩……。 でも、これは”大事な質問”なんです……!」
すると、その隼人の真剣な面持ちに気が付いたソアボが、小声で耳打ちする。
「ど、どうしたの……隼人君? 突然怖い顔……して?」
「ソアボ様……。 一先ず、ムニルさんの回答を待ちましょう……。 話は、”それから”です」
隼人は、ムニルの困惑した表情をギロッと凝視しながら、ムニルの返答を待つ。
「……さぁ、どうなんですか? ムニルさん答えてくださいッ!」
「ひっ!? ハ、ハヤトさん……?」
すると、その隼人の表情の意図を読み取ったムニルは、冷静に隼人の質問に答えた。
「えっと〜……。 もし、旅人さんに襲われた時に、どう乗り切る……と言う話でしたよね?」
すると、次の瞬間……。
隼人達が想像し得なかった”衝撃の一言”が、ムニルの口から発せられる。
「えっとね? 私は、その旅人さんの行為を……”甘んじて受け入れますよ”……? だって、その旅人さんは私の事を求めているのでしょ? ふふっ、だったら別に乗り切る必要はないですよね〜っ♪」
ムニルは、屈託の無い満面の笑みで答えた。
「……え?」
「……ほぇ?」
「……はぁ?」
「……なんですと?」
満面の笑みを浮かべているムニルとは対照的に、一同は呆気に取られたかの様な間抜けな声を上げた。
すると、そんな隼人達のポカーンとした表情を見たムニルが、慌てて顔を隠しながら顔を赤らめた。
「ほ、ほえぇ!? え、えぇ? わ、私……も、もしかして何か”変な事”言っちゃいましたかぁ……?」
と、ムニルは、まるで自分は間違った事は言ってないかの様に、非常に困惑した様な表情で隼人達に向かって聞き返す。
然し、そのムニルの言葉を聞くや否やソアボはムニルに詰め寄ると、そのまま怒鳴り始めた。
「ちょっと! いやいや! 駄目でしょ〜! 強姦を簡単に受け入れちゃ〜っ!?」
「えっ、えっ!?」
「か弱き乙女に対して、そんな悪事を働く様な奴には、容赦無く股間を蹴り飛ばしてやれば良いんだよ〜ッ!」
「こ、股間をっ!? で、でもそんな事したら痛そうで―――」
すると、ソアボは瞳に涙を浮かべながら、ムニルの両肩をガッシリと掴む……。
「いいからッ! 頼むからムニルちゃんは自分の身体を大切にして……っ!」
「で、でも……! 疲れている旅人さんに対しては、優しく”御奉仕”しないと……!」
「はぁ〜ッ!? ごほうしィ〜ッ!? ちょっと、この街の”教育”は一体どうなってんのよッ!?」
「おいおい、ソアボ? オメェ、そんな”母ちゃん”みてぇなキャラだったかぁ〜? ちょっとは落ち着いたらどうだ?」
権兵衛は、ソアボを宥めると、ムニルの方に向き直った。
「えっと……いいか? ムニル、オメェの人に優しくしようと思うその”心意気”は決して悪く無いんだけどよぉ……。 んだが、流石にそこまで許しちまうのは見過ごせねぇなぁ……?」
「み、見過ごせない……ですか? ん〜っと、一体何故ですか……?」
すると、権兵衛は熱く語り出した。
「ムニル良く聞いとけよ? 人に優しくすんのは確かに大事だが、時には”厳しく”……だぜぇ? 相手に優しくする事だけが優しさなんかじゃないんだよ。 知ってるか? 相手の為に厳しく接するのも”優しさの一つ”なんだぜ?」
「……! 厳しく接する事も優しさの一つ……?」
「あぁ、そうともさっ! もう一度、直接自分の胸に問い掛けて見ろよっ!」
権兵衛は、ドンッと自身の胸元を叩く。
「自分の……胸に……ですか」
ムニルは、権兵衛の言葉の意味を深く考えてみる……。
すると、座衛門と隼人も必死にムニルに向かって訴え掛ける。
「そうで御座いまする……! そもそも某は、ムニル殿の様な……”純粋な娘”が……! ハァ……ゼェ……。 汚らわしい男の魔の手に掛かるのは……許せないで御座いまするよぉぉおお……ッッッ!」
「そ、そうですよ……! それに、幾らムニルさんが良くても、この街の他の人達の中には嫌だと思う人も絶対に居る筈ですよね……っ!?」
するとムニルは、ヒートアップしていく隼人達を、慌てふためきながら優しく宥め始める……。
「み、皆さん……っ! お、落ち着いて下さい……! わ、分かりましたから……! 分かりましたから一旦皆様落ち着いて下さい……! つ、続きは私の家に上がってからでも……良いですよねっ!? ねっ!」
すると、今にも泣き出しそうなムニルの必死な顔付きを見たソアボ達は、一旦ムニルに対する押し問答を止めた。
「うーん……しょうがないなぁ〜。 確かに、こんな街の中で騒いでちゃ、他の住民の迷惑になっちゃうもんね……」
すると、反省した隼人達は露骨にテンションが下がり始めた。
「まぁ、そうだな……。 一旦ここは”閑話休題”っつー事だな……。 熱くなってゴメンなムニル!」
「某も、ヒートアップし過ぎてたで御座いまする……。 ムニル殿……どうか某をお許し下さいませ……」
「いや、元はと言えば、俺がこの街の”ポリシー”に対して余計な邪推をしたのがいけないんですよ……。 決して、みんなが謝ることじゃ無いです……。 全部俺の責任ですよ……」
するとムニルは、落ち込みまくっている隼人達に対して、精一杯の励ましの言葉を投げ掛けた……。
「い、いえいえ! 皆様の中にだ〜れもっ! 悪い人は居ませんからね〜……っ♪ あっ! み、見てみて下さいよ〜……♪ あ、あれが”私の家”ですよ〜……っ!」
「あ、本当だ……」
「げ、元気出して下さいよ皆さんッッッ!!!」
と言う訳で、隼人達一行は、ムニルからの激励の言葉を聞きながら、ムニルの一軒家に辿り着いたのだった……。
【現在位置】
【ムニルの家の前】
【現在の日時】
【4月7日 14時5分 春】
【五十嵐隼人】
【状態】:反省 若干疲労
【装備】:学校の制服
【道具】:金貨2枚
【スキル】:刹那の狙い撃ち
【思考】
1:俺……余計な事言っちゃったなぁ。
2:まぁ、取り敢えず……家に上がるか……。
3:喉乾いたから何か飲み物が飲みたいな……。
【基本方針】:仲間達と異世界を満喫する。ソアボと結婚したい。
【仁科権兵衛】
【状態】:軽く反省
【装備】:学校の制服
【道具】:金貨2枚
【スキル】:最強の意志
【思考】
1:お! 着いたか……!
2:それじゃ、お邪魔するぜー。
3:ほら隼人も早く上がって来いよ!
【基本方針】:隼人と親友になる。仲間達を守る。魔王を倒して現世に帰る。
【大宮座衛門】
【状態】:疲労
【装備】:眼鏡 侍のコスプレ服 剣のレプリカ
【道具】:美乳剣舞のシール100枚 金貨2枚
【スキル】:熟練の百戦錬磨
【思考】
1:や、やっと着いた……。
2:の、飲み物を……御恵み下さいませぇ……。
3:おえぇ……。
【基本方針】:異世界ハーレムを創る。美乳剣舞を布教する。トラックの運転手を成敗する。
【娯楽の女神ソアボ】
【状態】:疲労感
【装備】:金色の羽衣 金色の指輪と腕輪 女神の袋
【道具】:女神の袋の中に色々入ってる
【スキル】:能力授与
【思考】
1:ふぅ〜、やっと休める〜。
2:疲れたー!
3:横になりた〜い!
【基本方針】:みんなと楽しく冒険する。天界の神達に復讐する。
※ムニルに自分が女神である事を伝えました。
【ムニル・ル・ナータ】
【状態】:優しい気持ち
【装備】:街娘の服 小さな鞄 財布
【道具】:街の地図 金貨5枚
【スキル】極限の癒やし【効果】:任意の相手の体力と魔力と精神力を全回復し、更に任意の相手の食欲と性欲と睡眠欲全てを満たす事も出来る。
【思考】
1:皆様方……どうか落ち着いて下さい!
2:そ、それでは皆様の為に何か美味しい飲み物を……。
3:そうだ……! 後で美味しい料理も作って差し上げましょう!
【基本方針】:旅人に優しくする。もちろん街の人達にも優しくする。この世界に存在する全生物を自分の力を使って癒やしたい。
※ソアボが女神である事を知りました。
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