第一話 一人の少年異世界を求め空に吠える 〜五十嵐隼人編〜
初めましてミカル快斗です…!
今回、初めて小説を書いてみました…!
皆様これからも宜しくお願いします…!
〜五十嵐隼人の視点〜
――――九華高等学校――――【現在時刻、12時30分】
キーンコーンカーンコーン……。
「うおっし! 昼飯の時間だぁぁああッッッ!!!」
4限目の終わりを告げるチャイムが学校中に響き渡ると同時に、生徒達が一斉に仲の良いクラスメイトと話し始める。
「あははっ! まったく、カツヤってば高校生にもなって、未だに小学生みたいな思考の持ち主だよね〜っwww」
「うっせーな! いいだろうが別によー!」
ガヤガヤ……ガヤガヤ……。
キャハハ……ガヤガヤ……。
と、こんな何処にでも有り触れた様な微笑ましい日常の光景に対して、心做しか納得いかない様子の一人の生徒が居た……。
〈相も変わらず、クラスの陽キャ共が楽しそうに吠えている……〉
〈苛つく……〉
と、教室の窓辺で苛立ちながら陽キャ達を凝視している、この卑屈な男が今作の主人公、『五十嵐隼人』だ。
五十嵐隼人は、入学初日からクラスメイト達と中々上手く馴染む事が出来ずに下らない毎日を適当に過ごしていた。
〈くそっ、胸糞悪いな……。 昼飯は屋上で食うとするか……〉
そう隼人が思い立つと、隼人は教室内でくっちゃべっているクラスメイト達に向かってギロッと睨み付けながら、まるで当て付けの様に教室のドアを力いっぱい開け閉めして教室内に馬鹿でかい音を響かせると、そのまま何食わぬ顔で屋上に向かって駆け出して行った。
すると、そんな不貞腐れた態度の隼人に対して、教室内に居るクラスメイト達がキョトンとした様子で耳を塞ぎながらヒソヒソと小声で話し始める。
「うおっ……。 ビックリしたなぁ〜……。 なっ、何だよアイツ……? アイツいつも昼時になると一人で勝手に不機嫌になって屋上に向かうよなぁ……?」
「んー。 相変わらず隼人って読めねぇ奴だよなー? まぁ、あんな捻くれた性格じゃアイツ普段から友達いなさそうだしなぁ〜。 まっ、隼人の事なんかどうだっていいだろ? 早く、今日の深夜アニメの話をしようぜっ!」
「おっ、おう……! そ、そうだなっ!」
「え、なになに〜? アンタ達オタクって、いつもアニメの事ばっかだよね〜www」
「うっせーな! さっきから、いちいち煽るなお前はッ!」
と、教室に居るクラスメイト達は、一瞬は隼人の話をするものの、ゲラゲラと笑いながら直ぐに別の話題に切り替わってしまう。
要するに、クラスメイト達にとっては、隼人なんぞ居ても居なくてもさして変わらないと言う事だ。
「チッ……」
教室内に響く笑い声に対して隼人は、軽く舌打ちをしながら足早に屋上に向かう。
すると屋上に向かう途中で、ふと隼人の今迄の人生の記憶がまるで”走馬灯”かの様に何の脈絡もなく頭の中に過ぎって来た―――。
ズキッ……。
〈うっ、なんだってこんな時に……? しかも、碌な思い出がないじゃねぇかよ……〉
因みに、先程クラスメイト達が隼人に対して友達が居なさそうだと言っていたが、その言葉は正確に当たっていた。
隼人は生まれてこの方、友達なんざ一人たりとも出来た例が無いのだ。
「……クソッ」
階段を早足で駆け上りながら、隼人の中での苛立ちはピークを超え始めてゆく。
「クソッ……クソッ!」
ガンッ!
――――屋上――――【現在時刻、12時37分】
辿り着いた屋上の扉を乱暴に開けながら、隼人は、真っ青に澄み切った空を見上げて物思いに耽った。
〈もしかしたら……。 もう、この学校……いや、そもそもこの世界には、俺が”求めている物”は無いのかも知れないな……〉
すると隼人は、物悲しそうに一筋の涙を流し始める。
基本的に世間で流行っている事柄が、隼人にとっては嫌いな部類に入る物ばかりだった。
逆に、隼人が少しでも好意を持った物は、基本的に世間では受け入れ難い物ばかりだった。
まぁ、要するに隼人は、ただの”逆張り野郎”ってだけかも知れない。
そう、詰まりこの世界では、世間的に受け入れ難い物や隼人みたいな思考の者達は、自然と”淘汰”されてしまう。
とは言え、そんな逆張り野郎な隼人にとっても、実は一つだけ世間からの評判が良い物の中で好きな物も有る。
それは、言ってしまえば”美乳剣舞”と言う名の美少女ゲーム。
元々は在り来りなエロゲーだったが、余りの出来の良さにエロゲーにしとくのは勿体無いと言う事で、改めて全年齢対象版の携帯機バージョンが数年前に発売されたのだが、それがまさかの逆張り野郎である隼人にもクリーンヒットした訳だ。
隼人自身、まさか生まれて初めて逆張りしなかった物がエロゲーの全年齢対応の移植版になるとは夢にも思っていなかったらしい。
先程の隼人の脳裏に浮かんだ走馬灯の中にも美乳剣舞を嬉々として遊んでいる自分自身の姿が映っていたのだ。
そして、そんなニヤけ面を浮かべている自分自身の醜い姿を思い描いた隼人は、軽く発狂した。
「んぐぐ……ッ! この世界で、おっ、俺が求めている物がエロゲーの移植版のみ……だとッ!? そんな、馬鹿な……ッ!?」
〈いや、違う違うッ! 俺が心の底から求めてんのは、そんなんじゃない筈だッッッ!!!〉
苦しそうに頭を抱えている隼人が段々と自棄になり始めると、そのままの勢いを借りて思いっ切り空に向かって声が枯れるのを気にしない程に必死になって大声を張り上げた。
「すぅ~……。 この世界には……刺激がッ! ……ッ高揚がッ! はぁ……はぁ……ッインパクトがッ! 俺が求めている物が……ッ! ……ッ圧倒的に足りないんだぁぁああッッッ!!!」
と、声を荒げた所で、状況は何も変わらなかった。
然し、声を張り上げた事によって一先ず落ち着きを取り戻す事が出来た隼人は、顎に手を当てながら改めて冷静に考えてみた。
〈ん、待てよ? ……じゃあ俺の求める場所は一体、何処にあるんだ……?〉
〈……パッと思い浮かぶのは、所謂”ファンタジー世界”とかかぁ?〉
〈例えば、暗黒騎士やら、千年の時を経て復活した伝説の英雄やら、賢者の卵やらと言った様な、正にフィクションな世界に俺が”転生”やら”召喚”やら”転移”やらをしたとしよう……?〉
〈……まぁ個人的には、そんな小学生が考えだしたかの様な世界を言う程求めている訳では無いが、それでも少なくとも今の現状よりかは悪くも無い様にも思えるなぁ……〉
〈そして、そんな小学生が考え出した様な世界に、もし俺が行けるのだとしたら、こんな平凡な下らない日常の事なんか忘れて、心の底からそんな素晴らしい世界を満喫する事だろう……〉
〈その上、俺はそんな非日常な光景を見て心の底から幸福感が溢れ出し、そしてこれから何が起こるんだろうと言う、”期待”と”歓喜”に”高揚感”が自分の身体の奥から湧き出す事だろう……!〉
と、隼人がそんな妄想をしていると、次第に隼人の中でフィクションの世界に行って、血沸き踊る体験をしてみたいと言う気持ちが強くなっていった。
然し、慌てて隼人は首を横に振る。
〈……だが所詮妄想〉
〈異世界に行く為にトラック等に突っ込んで馬鹿みたいな死に様を晒す様な真似は俺はしたくは無いしなぁ……〉
〈詰まり、俺なんかが幾ら妄想した所で、異世界に行く方法なんて……〉
「ん……? 待てよ……」
すると隼人は、ふと先ほどの走馬灯らしき記憶の中に、異世界に行く為に関する本を読んでいる自分自身の姿があった事に気付いた。
「確か、数年前に沢山の都市伝説が載ってた本を読んでたよな……。 あの本のタイトルは……」
【怪奇的都市伝説ファイルNo.7! なんと異世界は実現していた!】
「だった筈……だよな」
〈そして、確か……その本に書いてあった最も異世界に行く事が出来る確率が高い方法が……〉
「……異世界に対して”強い思いを抱き続ける”……か。 ははっ、余りにも抽象的だなぁ……」
〈そう、正にそれが昔読んだ本に書いてあった異世界に行く方法の中で一番成功率が高い且つ簡単な方法だった〉
〈普通の人ならば、こんな本に書いてあることは全部嘘っぱちだと思うだろうが、何故か今の俺だけは嘘とは思えなくなっていた〉
〈いや、嘘がどうとか関係ない〉
〈俺がこんなくそったれな日常から抜け出すと言う、とても強い思い……そうだ〉
隼人は、厨二病が大嫌いだが、今は恥ずかしさを誤魔化す為にも、一旦自分自身の脳内を痛い厨二病に染め上げる事にした。
〈俺が……ッ! この俺の強い思いが……ッ! まだ見ぬ新しい世界を創るんだ……ッッッ!〉
すると隼人はそのままの勢いでもう一度、空に向かって喉を壊すのを気にしない程に、思いっきり叫んだ。
「頼む……ッ! ……ッこの俺の声が聴こえるなら誰でも良いから答えてくれぇぇええーーーッッッ!! 誰でも良いから……ッ! 俺を……ッこんな退屈な世界から……ッ! 俺にとって何にも無いこの日常から……ッ誰か連れ出してくれぇーーッッッ!!!」
〈俺は叫んだ。 腹の底から声を出した。 もうこの際学校の誰かに聞かれても構わなかった。 俺は、最早もう自暴自棄になっていた〉
そんな隼人が大声を上げてから数秒程経った頃、少しだけ冷静になった様子の息を切らした隼人の背後から突如として”野太い声”が聞こえた。
「おお……? オメェ……一体何してんだ? いきなりおっきい声なんか出してよぉ?」
振り向くと隼人に対して驚愕した様な顔を浮かべている『仁科権兵衛』が仁王立ちしていた。
隼人は慌てて仁科先輩の方に向き直ると、そのまま先輩に向かってペコリと平謝りしながら話し掛けた。
「あっ、すっ……すみません……仁科先輩っ! そう言えば、この時間のこの場所は仁科先輩の”昼寝の時間”でしたね……? すみませんっ! えっと、俺の声で……起こしちゃったみたいで……?」
隼人は全力で頭を何度も下げ、仁科先輩に対して精一杯の謝罪を行った。
一応説明しておくと、この仁科先輩と言う名の”巨漢の男”はかなり喧嘩っ早く、そして乱暴で大食いで更にとても力が強く、一度怒るとそりゃあもう手が付けられなくなるほどの”凶暴な男”だ。
詰まり、面倒事が起きる前に、仕方なく事を穏便に済ませる為に素早く謝罪の姿勢を隼人は取ったと言う事だ。
そして、そんな隼人の姿勢が功を奏してか、やがて仁科先輩は歯茎が見える程にニカッと笑うと隼人の肩をポンポンっと叩く。
「お? いやぁ〜、そんなに謝らんでもいいぜぇ? ヘッ、こっちも呼び止めて悪かったな! ん〜とっ、俺は昼寝してたがオメェもここで何かしてぇ事があんだろぉ? ヘヘッ……俺みたいな邪魔者は消えっから! ま、頑張れよ〜」
そう言うと、仁科先輩は階段のある方に振り向くと、隼人に軽く手を振りながら屋上を後にしようとする。
そう、仁科先輩は確かに喧嘩っ早く、乱暴な性格だが、その性格は自分より強いもしくは”同等の相手”にしか発揮されない。
寧ろ隼人の様な自分よりも立場の弱い相手に対しては優しく接してくれるので、学校中からの人気も人望も厚い、とても頼りになる先輩なのだ。
ただし、礼儀のなってない奴には”鉄拳制裁”という名の、愛のある”げんこつ”をお見舞いすると言う熱血漢でもあるが為に、隼人は彼に対して素早く謝罪を行ったと言う訳だ。
そして、そんな仁科先輩の後ろ姿を見送った隼人は、作り笑いを止めてゆっくりと空を見上げた。
空は相変わらず何の変哲も無く真っ青に澄み切っていた。
隼人は、淡い気持ちを込めながら念の為もう一度、空に向かって吠えようとした、その直後だった。
突然、隼人の脳裏に”謎の少女”の声が聴こえ始めた……。
『あっれぇー? もしかして私に呼びかけていたのは君かな〜?』
〈ん? 何処からか声がする……?〉
不思議に思った隼人は慌てて振り向いた。
しかし、隼人が振り向いた先には、隼人と同じ様に不思議そうな顔で辺りを見回している仁科先輩のたじろぐ姿しか見えない。
「……えっ? 一体……この声は、何処から聞こえているんだ……?」
隼人の口からそんな言葉が漏れ出したその時だった。
再びその謎の少女の声が隼人の脳内に聴こえ始めた。
『ふむふむぅ? あぁー、なるほどねぇ〜っ! こっちの世界だと私の姿は”視えない”みたいだねぇ〜。 んー、どういった理屈かはサッパリ解らないけど、視えないもんは仕方ないなぁ。 って事で君達”二人”には、強引に“こっちの世界“に来て貰うよ……! ん〜とっ! そりゃあ!!』
〈は? 強引にって……? ……んんッ!? え……っ!?〉
目の前の光景を見た隼人は思わず愕然とした。
隼人の体だけじゃなく、何故か仁科先輩の体までもが、宙に浮いているのだ……。
すると、こんな不可解な現象に遭遇した仁科先輩も慌てて声を荒げた。
「なっ、なんだぁッ!? こりゃあ!? かっ、体がッ!? 勝手に……? ……ッお、おいぃ! ……ッせっ……説明しろよぉッ! お、俺に話し掛けてる奴ぅッ! おいオメェッ! あ、あんた……一体俺等に何するつもりだッ! おぉいッ! 答えろよぉッ!」
〈あれ……? 流石の仁科先輩でも、こんな訳の分からない状況下では慌てふためくらしいな……〉
〈いや、俺にとっては”訳の分からない状況下”では無いのか……?〉
〈もしかすると、さっきの俺の願いが、どこかしらの誰かに届いて、それを向こう側が聞き入れてくれたって訳か?〉
〈でも、だとすると何故、仁科先輩もろとも異世界に連れて行かれそうになってるんだ?〉
〈……まぁ、仁科先輩の事は後で追々考えるとして、ともかくだ〉
〈俺は漸く、この俺が求めていない世界から脱出する事が出来たって訳だ〉
〈俺は、こんな世界に、思い残す事は……未練は、もう無いのだから……〉
〈いや、一つだけあったか……。 それは……〉
「もう、美乳剣舞の続きが遊べなくなる事だな……」
隼人は、苦笑しながら、そう呟いた。
【現在の位置】
【何処かの暗い場所】
【現在の日時】
【日時不明】
【五十嵐隼人】
【状態】:冷静、若干の興奮
【装備】:学校の制服
【道具】:無し
【スキル】無し
【思考】
1:これで異世界に行けるのか?
2:仁科先輩の事は後で考えるか。
3:何だかドキドキしてきたな。
【基本方針】:異世界で非日常な出来事を体験したい。
【仁科権兵衛】
【状態】:混乱、未知の出来事に若干の恐怖
【装備】:学校の制服
【道具】:無し
【スキル】:無し
【思考】
1:な、何じゃぁこりゃあ!?
2:クソッ! 俺は家族の為にもここで死ぬ訳には……ッ!
3:くっ……! 隼人も、大丈夫か……ッ!?
【基本方針】:自分達を連れ去ろうとしている奴の正体を突き止める。
【謎の声】
【状態】:???
【装備】:???
【道具】:???
【スキル】:???
【思考】
1:ふっふっふ〜! この子達の喜ぶ顔が目に浮かぶなぁ〜!
2:あれ? でも確か、声は一人分しか聴こえなかった気が……?
3:まっ、いっか!
【基本方針】:???
作品のご感想お待ちしております…!




