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騎士と勇者の戦記譚  作者: くらくら海月
第一章
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第5話 騎士と勇者

 ポータルゲートと命名された転移用魔法具は直径50cm程で片手で握れるくらいの太さの棒のような形状の物であった。それに任意の転移先を示すシンボルマークが刻まれていて地に設置すると幅8M高さ10Mのゲートが開く。シンボルマークは予め決めてあり帝都の城内にある転移の間と呼ばれる場所からシンボルマークごとに飛ぶことが出来る仕組みとなっていた。これにはどのシンボルマークであっても転移先へ向かうには転移の間を経由しなければならなかった。


 第3騎士団はポータルゲートで一度帝都へ戻り、転移の間を経由して王国へ繋がるゲートにより王都へと向かう。時間は昼前、王都の空模様は曇天で厚い雲でこの時間でもやや薄暗い感じだった。先触れに出していた部下が戻ってきていて現戦況をまとめた報告書が提出された。


 それを読むゴルムドが眉間に皺を寄せ険しい顔をしながら言い放つ。


「第5騎士団は更なる苦難を強いられているようだ。件の戦魔兵団を退けたのは不思議な力を振るう一人の剣士が原因であったとあるな…その者が王都の防衛に加わったらしい…」


「ならば我らが武を持って帝国が威を見せつけてやりましょうぞ!」

 アムスが強い意気込みで返す。


 転移し終わった団員が整列している。今尚戦いは続いているようでやや離れた区画からは激しい怒号と金属のぶつかり合う轟音が響いていた。


 アムスが隊を見叫ぶ。

「よし!出るぞ!続けーーーっ!!」


 騎乗槍騎士隊500名をもって王都を、轟音響く区画へと駆る。それにゴルムド率いる重装騎士300名も続いた。


 たどり着いた戦場は異様な光景だった。多くの人々が激しくぶつかり合う最前線で軽装な革鎧を着た子供が一人先頭に混ざって戦っている。背が低いため一際そこが目立つのだ、しかも右手で雷を纏った様に光り輝くものを振り回し、左手には何も持っていないのに飛んでくる矢や石礫をまるで見えない膜が張っているように弾かれている。


 援軍の登場なのに味方の兵達の反応は芳しくない様子が気にかかった。先にその者と戦った事がある戦魔兵団の残存兵達なのだろう、やけに腰が引けていて剣の届く範囲に入らないよう極力下がっているのだ。それで戦魔兵団を退けた存在が誰なのかは嫌が応にも理解できた。


 第3騎士団が援軍として到着するまでの数日の間にどれだけの被害を被ればこの様な状況になるのか気にならないではない、ある種異常とも言える。現戦況報告時でも戦魔兵団を退けた剣士が防衛に加わったとしか聞いていなかった。


 部下に突撃の指示をだす。槍を構え突撃していく騎士達。相手は怯む様子もなく青紫色に明滅する不思議な光を灯した剣を構えたままだ。不気味なまでに不敵だ。


 槍で突くまでもなく馬で引き潰そうとしたであろう迫る騎兵を薙ぎ払うように稲妻が走る。驚いたように後ろ足で立ち上がる馬と次々と落馬する騎士達。倒れた馬も口から泡を吹き痙攣するばかりで起き上がらない。だが後続の騎士達は立ち止まる事無く押寄せる。何度目かの稲光を見たあと部下を一時下げる。その跡には倒れ付した部下達のうめき声が聞こえる。


「…やってくれたな!小僧!」


 そう口にするとアムスは相手に一人で馬を寄せると下馬して剣を抜く。周囲は戦場であるはずなのに二人を中心にするように静まり返っていた。


(妙な技を使う…あの稲光は何なんだ…こいつは油断ならないな)手に汗をかき剣の柄を構え直すと一気に間合いを詰め切り伏せる。相手は一瞬驚いた表情を見せたがこちらも驚いたのは一緒だ。剣でその身体を傷つけることは出来なかったからだ。


(どういうからくりだ…?剣が通らないだと?)短い思考の間に相手が稲光の剣で切り込んでくる。咄嗟に剣で受け流そうとしたのが致命的なミスであると判断するには既に遅かった。


「ぐぁぁ…」


 剣から伝わる電撃に身体が強張る。これが味方の兵が接近しなかった理由か…と思うも、今は直ぐにでも体勢を立て直す必要に駆られる。


「副団長をお守りしろっ!」部下達が間に差し込むように馬で駆け込んでくる。


 投擲の腕に自信のある部下がジャベリンを投げつけるも不思議な膜に覆われているように軌道を逸らされていた。


「化け物め…っ!」思わず口ずさむ。


 それに反応し声変わりもしていない声で言う。


「化け物…?あなた達帝国兵がこの地でどれだけ非道を行ったか知っているの?化け物と呼ぶにはあなた達の方がよっぽどお似合い!!」


「ここは一旦お下がりをっ!」部下に手を取られ馬に引き上げられる。


「…隊の指揮をスピーゲルに任せる!彼奴は相手にせず周りの雑魚を切り崩せ!」それだけ言うと部下に支えられその場を去ったのであった。

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