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騎士と勇者の戦記譚  作者: くらくら海月
第一章
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第1話 不穏な気配

 ロシクアナ帝国。肥沃なれど狭い島国に人間や妖魔、魔獣などが犇めき各部族ごとに生活圏を主張し、その為異種族間での争いが続いていたが初代皇帝エグゾニル=ゼオ=ロシクアナが国として平定し種族問わず力ある者なら国民として纏め上げられ一大帝国が建国された。それから50年余りを過ぎた現在まだ若い国ながら多くの亜人に加え、より繁殖力の強い妖魔などの人口増加が進み新たな領土を求めていた。


 春が訪れたある日の事、白髪が混じり出した黒髪に豊かな髭を伸ばし穏やかな表情ながら威厳を感じさせる初老の男性と、その後ろに控える長身でいて明るい茶色の髪に黒い瞳で鋭い目つきの青年が宮廷内の執務室へと向かっていた。


 青年の名はアムス・ベオフィオルド、23歳と若いながら類稀な武技の実力で第3騎士団副団長の座に就いていた。周囲に他に人気がいないのを確認し前を歩く初老の男性にアムスはやや緊張した面持ちで話しかける。


「団長、先ほどの報告…帝国は本気で大陸に進軍するつもりなのですか?」


 話しかけられた初老の男性はゴルムド・アスターフェン。アムスの所属する騎士団の団長である。


「うむ…儂の耳に届いている情報によると、どうやら帝国魔法技師団が革新的魔法具を開発したらしい、それを使っての進撃を目論んでいるとの事だ。アステーシャ陛下は此度の遠征に必勝の意気込みで作戦を推し進めているようだ」


 そう言うとゴルムドは歩みを止め振り返り、あまり気乗りしない様子でアムスを見やる。開戦となれば帝国の数十倍以上の広さのある大陸への遠征となる。沿岸のどの国に仕掛けるというのかは不明なれど不安は拭えない、だが帝国の進退を思えば領土拡大は必須であるのも事実である。


「魔法具ですか…それはどのような物なのかご存知ですか?」


 この世界には魔法という不可思議な事象を引き起こす力がある。だがそれも付与魔術という技術士がその秘術を用いて作られた魔法具と呼ばれる物がなければ力を発揮できないというものであり、その発動体がなければ魔法は使えない。しかしその魔法具さえあれば起動用ワードを唱える事で誰にでも魔法を扱うことは可能であった。ただし魔法具一つに対し施された一種類の魔法しか使う事はできないため、複数の魔法を使うのであればそれだけ多くの魔法具を用いなければならず万能という訳ではなかった。しかも付与術師の技量によりその性能はピンキリであり、また作成に用いられる素材の貴重さも合わさり数自体が少なく一般に普及する事もない物であった。


 帝国では国家を上げ付与術師を国内外から集め育成し帝国魔法技師団という組織を作り運営させ、主に軍事関係に使用できる魔法具発明に心血を注いでいた。


「なんでも簡易化した転移魔法を展開するポータルゲートというものだとか…それで大陸の国家主要都市に同時攻略作戦を行うとの事だ。すでに各国へ調略実行部隊が動いているらしい。作戦が実行されれば我が騎士団も出兵する事となろう、お前もその腹積もりいろ。団員達にもその旨伝えておいてくれ」


「わかりました。団員達にも出撃に備える様伝えておきます」


 そう返答しアムスは帝国が平定されてから初の海外出兵へと思いを馳せるのだった。

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