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ブックマーク、総合評価ありがとうございます。

拙い文章ではありますがこれからもよろしくお願いします

あの苦しいほどの視線に晒された夜会から3日後、なぜか親友に拉致されました。

今、アシュクロフト侯爵家の蝶々が舞う中庭の東屋に来ていた。甘い香りがアイリスを誘う。

(お茶会のお誘いと言う名の強制連行……帰りたい)

お茶会、世の中のお嬢様方は毎日のようにしているだろうものだ。だが、人目を避けているアイリスには殆ど縁がない。一人の友人が誘い、それに応じる。それがアイリスにとっての通例だ。しかし、レイラ・エミリー・リア・アシュクロフトに連れてこられた彼女のお屋敷には綺麗に着飾った令嬢が彼女以外に3人いた。氷の魔法で氷付けられたように固まるアイリスにレイラはため息をつき、後ろに控えていた侍女に目配せをし、にっこり微笑んだ侍女は片耳が垂れたウサギの真っ白いぬいぐるみを手に取るとアイリスに渡す。

固まったままのアイリスは手だけ溶けたように動かすと変形するほどの力を込め抱きかかえた。

このウサギは知らない女性(若い女の人)見ると固まるため、ぬいぐるみがあれば動ける彼女のために用意されている代物だ。

「さあ、主役も登場したことだし、早速本題……と行きたいところだけれど、まずは自己紹介が先よね」

「ええ、そうね。先ずはわたくしから。私はパーセル候爵家長女のシャロン・アン・リア・パーセルと申しますわ。これから仲良くしましょう」

ピーナッツバター色の毛先をふわりと巻いた髪がふわりと揺れ、アイリスより濃い瞳が慈愛に満ち微笑まれた。優しげな笑顔だった。

凍りついたように固まっているアイリスはグルグルと頭の中が回っていた。名前だけは知っている。

(侯爵の中でもお家柄が高い上位のところだったはず……私やっぱり死ぬのかしら)

ちらり横目でレイラを見るが優雅にティーカップを傾けていた。

「あらあら、そんな顔なさらないで。わたくしたち貴女に酷いことをしようと思っているわけではないのよ。ただ、お兄様が気にかけた令嬢が気になっただけなの。それに、わたくし達ずっと貴女とお友達になりたかったの」

アイリスのぬいぐるみを抱く指先の筋肉が動いた。

「………レンフォード侯爵家……やっぱりその関係ですか……」

「ええ、わたくしはルーナ・ミッシェル・リア・レンフォード。その節は兄がお世話になりました」

アレクシスの妹と名乗った彼女は、兄のアレクシスの髪色に赤みをさした紅茶色のようで綺麗な色だった。そこに、ペリドットのような瞳が美しい。異なった二人だがどこか似ていて兄妹だというのは分かる。

「い、いえ!こちらこそ助かりました。アイリス・セリーナ・リア・エアルドレッドと申します。レンフォードさまが居なければ夜会に参加できませんでした」

「あんな兄でよければ好きにしてくださっていいの」

そう言い、微笑んだ顔はそっくりで、夜会のアレクシスの顔がルーナの横に浮かんで恥ずかしくなり消えそうなボソボソとした声でそう答えるアリシアは蒼白な顔だ。

「大丈夫よ。本当に友達になりたいってずっと言ってたのよ。ただタイミングがなくてね?今回のこと、巷で噂になってるもの。ちょうどイイかなって思って今回お誘いしたの」

「そう……ですか…」

「これからは友達ですわ。困ったことがあったら言ってくださいな。シャロンで構いません」

「わたくしのことはルーナと呼んでくださいね」

「……はい。シャロン様、ルーナ様……」

顔をうさぎに隠してしまう。そんなアイリスにため息をまた一つつくレイラ。それに肩が反応し揺れるアイリス。

「アイリスが抱える問題が事の発端なのでしょう?」

コクンと頷くとやっぱりという風に息を吐いた。

「アイリスさんが抱える問題ですか?」

「それが表に滅多に出てこない理由ですのね?」

レイラは小皿に焼き菓子を取り分け小盛りにされたクッキーやフェナンシェをアイリスの前に置いた。するとぬいぐるみから離そうとしなかった指がバタークッキーを摘み口に運んだ。

「お菓子は好きなのよ、この子。でも、この皿からは取れないのよ」

この皿と指したのは中央に置かれた大皿だ。

「これがどうかしましたの?」

「ただの魔法食器ですわよね」

魔法食器は味や温度が落ちないよう魔法がかけられた食器だ。

「ええ、アイリスの使ってる食器を見てちょうだい」

そう言われてよく見てみると、魔法がかけられていない食器だ。あるべきものがないのだ。

「魔石がありませんわ」

あまり見ることのない食器に唖然とじっと見ているシャロンは瞬きを数回繰り返し驚いたように口に手を置いている。

「魔法食器や魔法具などアイリスが触れると割れるか壊れてしまうの」

「エアルドレッド令嬢は何かに跳ね返されたように数メートル飛ばされた…………もしかして……」

「…………」

ルーナが何かに気がつき目を見張る。当の本人は手にしていたバタークッキーを口元で止めて固まっていた。

「ええ、あの屋敷には結界が貼ってあったらしいの。それを知っていれば、アイリスのお兄様方は名代を頼まなかったはずだもの」

「ですが、その後お兄様と入られたと噂では……」

「そう、そこが不思議なのよ。昨日今日あったばかりの方と結界内に入ることができた事自体がよ」

手にしていた食べかけのクッキーを咀嚼する音がしてルーナの言葉を必然的に遮ってしまったが、重ねるようにレイラが話す。

「わたくしは…珍しくはありますが、いないわけではないのですが……その…魔力を持っていません」

「だからといって魔力を持ていなくとも、魔力を借りる事で使えるのは知っているでしょう?」

アイリスから発せられた言葉に息を飲む。珍しいが100人中の1人の割合でいる魔力を持たない人は、他人から魔力を供給してもらい使う事が可能だ。

「誰からでも供給出来ますわね」

「ええ、そうですわね」

ルーナの返答にシャロンが同意する。すると濡れた手拭きで油分を拭ったアイリスがゆっくりとルーナに差し出した。

「え?」

「まあ、言うより見た方が早いですわね。いいの?」

「もうやけです」

うんざりしたような瞳がレイラに投げ出された。それには苦笑いでしか返さなかった。

「シャロン様……魔力…を…」

蒼白した顔で途切れ途切れにそう言うアイリスの声色は怯えを感じシャロンは手を取ろうか迷っている。

「シャロン様……お願いですから…早く…」

顔を背けながら言うアイリスの手をそっと白く細い手がゆっくり掴み魔力を流した。

魔力を流すと痺れの魔法を使ったときのように手の周りに紫電が走りアイリスの手に電流が流れた。

「……っ!」

声にならない悲鳴をあげ、もう片方の手でその手を撫でた。

「アイリスは魔法関連全てに対抗してしまうのよ。体質なのか呪いなのかそれがアイリスの力なのか定かではないわ」

「シャロン様には痛みはありませんの?」

「ええ……紫電が走ったのは見えましたけれど、なにも……」

口を元を隠すのも忘れアイリスを見る。

「………ご覧の通り誰でもではありません。……ですから…レンフォード様の魔力をすんなり受け入れられたことが不思議だと言うことなのです」

うんうんと頷き返すレイラは少し遠い目をしていた。

「ご家族と私ぐらいしか今は魔力を供給できませんの。わたくしだって流せるようになったのは、幼い頃から共にいるけれど二年前?ぐらいだったかしら」

「両親やお兄様達でも………流せるようになったのはわたくしが………8歳……」

「え?お待ちになって?お兄様ったらそれを1度目で?あの日会っただけですわよね?」

「はい……正確には一週間前に……少し前に会っていますが……」

「「「そこの事くわしく!」」」

息ぴったりに3人に言われたアイリスは溶け始めた氷に再び凍り付いてしまった。

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