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15

よるの静けさがレンフォード公爵家を包み込んでいる。しかし、屋敷内は灯がともされ辺りの静けさとは無縁だった。

屋敷内で最も広い大ホールでは、沢山の暇を持て余す招待を受けたか僕たちが思い思いに会話を楽しんでいた。

「聞きまして?公爵様の嫡男であるアレクシス様がご婚約なさったと聞きましてよ?」

「ええ、お聞きになりましたわ。どんな女のなのかしらね?」

「きっと、身分もわきまえない女に違いありませんわよ」

未婚の貴族(レディ)たちの陰口に一般民であるメアリーは引きつった顔で隣にいるクラレンスの腕をキュッと握る

「怖っ!本当怖っ!」

「それでは俺との婚約取りやめますか?」

「っ!それは絶対しないから!」

小声で力強く否定するメアリーにクスクスと可笑しそうに笑うと腰に腕を回した。

「俺達には、後ろ盾があるから。それに今は女性(レディ)達は知らないとはいえ彼女に陰口を言っているけど、大半は押し黙る」

「え?」

「名門貴族であるレンフォード公爵家、そしてまた王族として隠れた力のあるエアルドレット伯爵家。二つの家を敵に回すというのはパワーバランスから考えも避けたいと考える。馬鹿は突っかかり居場所がなくなる。というわけですよ。そして、俺達はその2人とは親友だ。彼等を怒らせる真似は避けたいという心理が働く。最も君は貴族じゃないし陰口は言われないですよ」

「あ、そうだったわね」

安心して微笑みを見せた時、クラレンスが話しかけられた。

「これはこれはフィッツロイ侯爵家の四男、クラレンス殿ではありませんか」

「クロフト伯爵、お久しゅうございます」

初見はちょび髭を生やしたにこやかに笑う男性、しかしどこか怪しいと頭によぎる。

クロフト伯爵と名指された男性を見た瞬間、クラレンスはさっとメアリーを庇うように自然に体の位置を変えた。

それはもう早々に挨拶をしたいと言う表れのように。

普段の彼ならしない行動に、もしやとチラリと視線を送るが、当人はクロフト伯爵を見据えていた。

「この度、レンフォード公爵家から招待を受けましてな、久しくぶりに参ったのですが一段と力を入れているように思えますな。何かご存知で?」

クラレンスはすぅと目を若干細め、ふっと口元を和らげた。

「いいえ?嫡男であるアレクシス殿とは士官学校からの友ではありますが、詳しくは聞かされてません。ですが、ですが、名のある貴族のご令嬢と婚約したという噂を法務課の女性から聞きました」

クラフト伯爵にとって思わぬ発言だったのかピクリと眉を動かした。

「……ほう………その様な噂わたしは耳にしていないのだが。レンフォード公爵家の嫡男が婚約したとすれば、お若い女性はその噂を持っていても不思議ではない。さて……そちらの女性を紹介して頂いても宜しいかな?」

クロフト伯爵は人の良さそうな笑みを浮かべるが、その笑みがその意味ではないと知っているクラレンスは彼女の腰を引き寄せ名前を言う。

「彼女は親しくさせても頂いているメアリー・アンジェラ・ミラー」

ぺこりと頭を下げるメアリーを優しい瞳で見ているからにはただ、親しいというだけと単語では収まらない。

そして何よりこの会場にいるという理由で2人の関係は明白だろう。

「……リアをお持ちでない女性ですか」

「ええ、わたしは四男ですからね。自由ですし、何より母と仲が良くて」

ぐっと何かをこらえた様子にしたりと心の中で笑みを浮かべ、家族とも良好ということも伝えた。

安易に攻撃をすればどうなるか、わかるだろう?という含みを気付かないわからない。

「それはそれは喜ばしいことですな」

理解したからの言葉が得られた。上面でもこれを聞かれば完璧だ。

「今度我が家での催しにも是非」

「勿論だとも、では私はこれで失礼させてもらおう」

踵を返した後ろ姿にクスクスと可笑しそうに笑う。

「何がおかしいのよ?クロフト伯爵があの家でしょう?」

親友を虐める男に笑っているクラレンスが信じられずため息が出る。

「そうですよ。それにしても、メアリーの名前を聞いているにも関わらず名前を名乗らず立ち去るとはね」

「私、別にあの人の名前知りたくないから結構よ」

「まぁ、落ち着いて。クロフト伯爵は一般民が大切だとも思っていませんからね。平気に庶民という言葉を使う」

殆どの貴族たちは一般民たちのおかげで貴族の地位やお金の周りや物流が成り立っているということを理解している。そして、それらを口や手にしていることも。

彼らが耕し作り商品へと齎しているおかげで生活できている。もし、彼らがいなければ食べ物も着る服の布もないのだ。

敬意を表して一般民と呼んでいる。

「意味さえ理解してなさそうですがね。仕方がありませんよ。自身の家が王家を助けていると思ってますからね」

「助けている?」

「そこの君、アルコールと何か口当たりのいい飲み物を彼女に」

「助けている?」

飲み物を配給している使用人を呼び止め注文すると向き直り困った顔をした。

「ええ、押し付け逃げたにも関わらず、今も尚権力を振りかざし王族を意のままに動かしている悪い家からですかね」

メアリーは絶句した。どうやらあの男は自分にとっていい様にしかとらえないのかもしれない。

そんな、家から攻撃を受けつつ暮らしているアイリスが、強い女性だと感じた。

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