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よく晴れた日、久しぶりに図書塔以外の場所へ訪れようとのんびり街を歩いてた。

(会ったことないけれど、どこかに誰かいるとは思うけれど……)

護衛が何処かにいるだろうが、そこの運営だ兄達に任せきりだ。誰が誰についているかなどはよく知らないのだ。

バスケットに一冊本とクッキーを入れマイペースに優しぶり街中の様子を見る。

「夜会か、こんなに頻繁参加したことないから辛いわ」

今回、図書塔以外訪れる理由は三週間後にレンフォード家で開かれる夜会、婚約を他の家族に示すための急遽開くことにした夜会。もともとレンフォード公爵家嫡男アレクシスの元には毎日のように縁談の話が持ち込まれる。その為、いつまでも縁談を持ち込まれても困るということで早々に発表を決めた。しかし、準備期間が短い故に貴族などに開いて死なれている新調に短い期間で納品、呼び出しには仕立て屋は屋敷に呼ぶ事は可能でも彼女が贔屓にしている装飾品のお店に今回呼びつけを躊躇った。

「作って……もらえるかしら…………」

思いため息を作り顔が少しイカツイ店の主人を思い浮かべた。顔に似合わず、気を許した人には気前が良く情に熱い男。

三週間という短い期間で納期を頼んだことは一度もなかった。唯一彼女の体質に反応――と言うより魔法や(まじな)いを使わない装飾品を製造販売をしている店で、下が申し分なくいいが、魔法や呪いを行わないという理由で貴族はほとんど贔屓にしていない。中には魔法が使えて自身で魔法などを施す者達には贔屓にされているが、そのほとんどが自分の足で出向いている。アイリスがここを贔屓にできている理由はユールの父がいい装飾品のある店と教えてくれたからだ。そのおかげでアイリスはお茶会や夜会などの装飾品に困ることなく問題を解決できていた。

理由を知った店の主人は良いものができると連絡してくれる。店にとっては一番贔屓にしてくれるお得意様になったわけである。

ただ、問題なのが家族経営なのだ。間に合うかが一番な不安な要素だ。

「きっとブラッドリーさんならなんとかしてくれる……」

うんと強く手を握り店がある角を曲がり店の扉を開ける。店内には1組の男女がいた。

「……え?」

ドサっと腕にかけていたバスケットを滑り落とすも唖然と立ち尽くすアイリスには拾うことができなかった。

音に気がついた立ち尽くす原因を作った人物は振り向くと目を見張りざっと目を逸らした。異変に気がついた女性もこちらを向いて口に手を当てた。

「レンフォード様……メアリーさん……」

二人が一緒にいる姿に足が震え扉の取っ手に縋るように二人をパクパクと楽に挙げられた魚のように口を開閉させ見ている。

―――お兄さんとは近衛担当としては顔は合わせてるかもしれないわね。第一騎士団だけどね

そんな先日の会話のメアリーの声が頭の中で聞こえる。目の前にある男は第一騎士団所属近衛担当でもある騎士アレクシス・エセルバード・リオ・レンフォードだ。

メアリーにとってもったいないぐらいの人だろう。そして何よりアレクシスのことを知っているようにあの時思えた。

「メアリーさんの恋人って……」

「ちがっ……」

メアリーが何かを言おうとした時アイリスが動いた。

「聞きたくないわ!……信じていたのに!……………さようなら……」

涙を溜め、彼女らしからぬ大声で叫んだ。そして、今までにないほどに酷く傷ついた目をしていた。メアリーは言葉につまり息を呑むしか無かった。

落ちたバスケットを拾うことなく飛び出していったアイリスを見て店の主人ブラッドリーはアレクシスの胸ぐらを掴んだ。

「おい?!お前婚約者に渡すものを作りに来たって言ったよな!?嬢ちゃんをたぶらかしてたのか!?」

力無く無抵抗で胸倉を掴まれているアレクシスを助けるようにブラッドリーの手を掴んだ。

「違います!坊っちゃまはアイリスのことを想っています!私のせいで勘違いしたんです!私が……恋人がいると答えたから。答えた内容が坊っちゃまと一致してしまったんです!」

ブラッドリーはメアリーの力強い勢いに面食らったように驚き、アレクシスの服装から手を離す。アレクシスは支えを失って床に呆然と座り込んでいる。

「坊っちゃま!早く追いかけてください!勘違いさせたまま良くありません!私も追いますから!」

「……ああっ」

無理矢理立たされたアレクシスは我に帰り、アイリスが走り去って言った方向へ走っていく。

「私のせいだわ……名前言ってなかったもの。別の人なのに」

「お、おい、姉ちゃん。本当に違うんだな?」

「ええ…」

ぐっと唇を一文字に噤んだメアリーはゆっくりと肺に溜まった勇気を抜く。

「ブラッドリーさんもう一個追加注文をお願いします」

「……はぁはぁ……あと、くっ…宝石変更です……」

辛そうに肩で息をするアレクシスは絶望した顔だった。どうやら見つからなかったらしい。

「今……から家に行ってもいいけど、弁解しても悪化するだけだと思う。だから…」

「当日……ですか」

一部始終と二人がここに来ていた理由を知っているブラッドリーはガシガシと乱暴に頭を書く。

「わぁーったよ!いいやつ三週間以内に作ってやるよ!そのかわり迷惑料もらう。それと!アイリス嬢ちゃんを悲しませたら次はボコる!」

「ありがとうございます!」

ポキポキと手の鼻を鳴らしたブラッドリーに二人頭を下げた。

全ては愛する人、親友に誤解を解くために。

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