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 ゴーンゴーンと壁に取り付けられた大きな古い時計が重そうでいて軽い音を図書塔に響かせた。ちょうどお昼の時間帯。

 ここは王都で一番というよりここしかないのだが、塔とかを付けられるほどの天高く聳える建物。古い時代から今日に至るまで数々の書物が集められている。地方で調べられなかった物はここに足を運べば判明すると言われる場所。国内最高峰と言われる図書館なのだ。

 そんな場所に朝から来ていた淡い色の金色の髪を机に垂らし文字を追うように宝石のように輝くパールグレーの瞳が忙しく動かされている。

 お昼の鐘が鳴った時にはほとんどの人達は席を立ち固まった体をほぐしながら移動をしていて、彼女の周りのは誰一人として姿がない。

 白く細い指が次のページへと紙に手をかけた時、ピクッと指が止まった。肩に温かいわずかな重みに手を止めたのだ。ゆっくり髪を揺らし温かい重みがある右肩へとパールグレーの瞳が振り向きながらその人物を映しこんだ。

そこに立っていたのはこの建物の司書であるメアリー・アンジュラ・ミラーだった。茶髪のサファイアの瞳でサイドテールをした黒縁の眼鏡をかけた女性だ。

「メアリーさん…」

どうしたのかと首を傾げた少女の淡い色のキラリと光る金色のたっぷりとした波打つ髪がさらりと重力に従い滑り落ちる。

「もうお昼よ?ご飯食べてらっしゃい。いつものところ空いてるわ」

片目を閉じまたかと言いたげな顔で薄く笑う。

(ああ、もう、そんな時間!!呆れられてるぅ……)

パッと時計に目をやると周りに人がいないのも確認できもう既に時計がほぼ半分に行こうとしていた。

「あ、あの、いつもごめんなさい!!」

ガバッと頭を下げた少女にクスクス笑うメアリーはどこか楽しそうだ。

「いいのよ。ここは読書を楽しむ場所集中していることはいい事よ。でも、生活習慣きちんとしていないとね」

パチっとウィンクをして見せられた時キュルルと可愛らしい少女からなる。カァーと顔を赤くする少女に目を瞬かせた。

「アイリスお嬢様でもお腹は等しく鳴るものね」

本人より素直とニコニコしながら出口の方は背中を押した。

「あ、えっと、お昼食べて来ますね。それと……」

言葉を切り足元近くにある荷物置き台からバスケットを持つと布をめくり、ごそごそと中身を漁り綺麗にラッピングされた包みを取り出した。

「これ、クッキーです。良かったら皆さんで食べてください……」

恥ずかしそうにおずおず差し出す少女の手から包みを受け取ると嬉しそうに顔を綻ばせた。

「いつもありがとうね。アイリスの作ったクッキーとても美味しいから人気なのよ?」

顔を真っ赤にして俯いた少女は逃げるようにその場から立ち去る。

「あ!結界に気をつけてね!」

そんな声が聞こえ恥ずかしくて息の上がった呼吸を整えるために階段付近で足を止めた。

「褒めてもらうのは恥ずかしいよぉ」

パチっと頬を叩き、さぁ、お昼を食べよう!と意気込み階段を降りていく。慣れた道をゆっくりとした足取りで、お日様が気持ち良い中庭のある方向に足を進めていると、誰かが走ってくる音が聞こえた。角を曲がろうとした時ドンっと何かにぶつかった

(えっ!?)

驚き目をぐっと開き、いつもとは違う体の反動に思考が真っ白になる。

いつもと違い柔らかく、ゆっくりとした衝撃にスローモーションのように見えた。手をつこうと床に手を出したとき、ふわりと風が吹き倒れそうな体が浮き、引き寄せられる動きにさらにわけがわからなくなる。

「え?え?う?」

とんっいう衝撃に体が固まり、上から知らない声が振り込んで来た。

「すみません、驚かせてしまったね。怪我はない?」

倒れる前の体制にゆっくり戻された。

「え、あ、えっとないです……」

頭が追いつかず反応がそう返答させてれた。

「そう、なら良かった。お詫びに目的地に送っていきたいところだけど急いでいてね」

ごめんねという顔の茶髪の爽やかに切られた髪が風に揺れ同色の瞳が見上げる少女をじっと見ていた。

「いえ、その、大丈夫です。急いでいるところを止めてしまいすみません」

「いいんだよ」

手を軽くあげ走り去っていく背中を見て呆然と見送る。

「ああ、結界にぶつかったわけじゃないのね……」

やっと理解できたのかそんなつぶやきが静かな空間にゆっくりと消え溶けていった。

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