430話 飛ばされる
帰って来たらテントを再度設置して、中に入ってテーブルと椅子を置く。今回はこの辺にしてテントから出て、テントを畳んでアリサが空間の中にしまう。その日は他の事をして終わる。
8月下旬。朝から台風が直撃をしている。
「・・・俺の知ってる台風じゃない」
リビングの窓から外を見ていると、雷が次々と落ちてくる。そのせいで魔木が黒焦げになるわ、火事が起きるわ。とにかく酷い状態になっている。
「前も言ったけど、この台風は普通だからね。これよりヤバい台風は、地面を普通に抉るからね」
「それもう台風じゃなくて、違う自然現象だろ・・・」
「ユウヒさんはこっちの台風は初めてですか?」
「いや前にも来ていたが、前はまだ直撃しないでアリアナが台風を消したからな」
「じゃあ今回が初めての台風直撃ですね」
「そうだな・・・。今まで体験した台風の中で、過去最高記録が―――」
すると近くに雷が落ちる。俺達は一度窓の方を見て外を見る。
「かなり近かったな・・・。こんな近くで雷が落ちるのは初めてだな」
「あぁ~、魔木が黒焦げになってるよ。それと同時に火事も広がってるね」
「火事を消した方がいいか?」
「外に出たら風圧で飛ばされるのでは?」
「あぁ確かに飛ばされそうですね~。何本か魔木も飛ばされてるので、人なんて飛ばされるどころか細切れになりそうですね~」
「こわ・・・。いくら何でもそこまではならないだろ」
「でも昔、ゴブリンやオークが台風の風で細切れになっていたけど」
「それアリアナが風魔法で殺したんじゃないのか?」
「いややってないけど」
「・・・本当に?」
「うん」
何本の魔木だけで済むのに、ゴブリンやオークは細切れになるのかよ。ここの台風本当に怖すぎだろ・・・。
「あっ、リゼットさんの所ってかなりヤバくないか?」
「そうですね。ですがあの場所にいると決めている以上、何か対策でもあるのでは?」
「そうですね・・・。多分結界でも張っているんじゃないですか?」
「えぇー? あのリリスだよ。そんな高度な結界は張ってないと思うけど」
「複数人でやっているんじゃないのか? ほら何百年前に魔物と戦っている時に、複数人で結界を張ってそれで維持していたって言っていたから、それをやっているんじゃないのか?」
「あるいは一度家を解体して、一時的にどっかに避難しているのでは?」
「そんな面倒な事をするの?」
「避難は普通はするじゃないか? 流石に家を解体するのは無理だが、避難はするだろ」
「やはり貧弱なのでは?」
「そんなもんだと思うが。それにしてもまだ台風の目に入らないな」
「多分少しズレてるんじゃない?」
「少しズレているとか最悪だな。もう少しこっち側に来てくないか?」
「流石に無理だと思いますよ。それよりこの台風の影響で、当分肉が取れないと思うのですか」
「肉って言うなよ・・・。オーク系とかラビット系が台風の影響で、会う機会が減ると思ってるのか? オーク系は無理でも流石にラビット系は会えると思うが」
「そうかなー。ラビット系は穴を掘ってその穴で暮らすけど、大雨で穴の方に流れて溺死してるかもよ」
「今来てるのは台風だろ。流石にこのくらいの規模じゃあ、穴にいっぱいの水が溜まるとは思えないけど」
「ユウヒさんはそう思うかもしれませんが。意外と溜まるんですよ。昔に台風が来ていた時に、たまたまラビット系が掘った穴を見つけて。その穴を見たら、ラビットが浮かんでいて溺死してましたよ」
「お前、台風が来ている時に外に出たのか?」
「用事があったので外に出てましたよ。おかげでその日はびしょ濡れでしたよ」
「そう言う日は台風が去った時に行くべきだと思うけど」
「どーしても行かないといけなかったんですよ」
「アリサがどうしても行かないといけない用事・・・」
メアリーさんは考え始める。
「まぁ想像できないよね。アリサが用事があるって事に」
「そうだな。用事が出来るような知り合いがいないって感じがするし」
「1人いますよ! 人族ではないですが」
「「いたのっ!?」」
「まぁ」
「皆してその反応ですか!?」
「まぁこの反応だと思うよ。今まで行動とか聴いていると、とてもじゃないけど知り合いなんて・・・。ね」
「・・・そこまで言うなら、明日が明後日。その知り合いに会いに行きますよ」
「へぇー、その知り合いは何処に住んでいるんだ?」
「住んでいる場所はラインディガー共同王国ですよ」




