388話 偶然
「(我の名は、バルナール。矮小な小娘どもに殺された名だ。努々忘れるなよ)」
「何で名前を聞いてないのに言ってるんだよ・・・」
「(話すときは先ず、名を先に言うのではないのか? 我はそう聞いたが?)」
「礼儀としてはそうだが。これからお前は殺されるのに、名前を聞いても意味ないんだが」
「(何、我は殺されるのか!? 転生の準備をするから、少し待ってろ小娘!)」
「さっきから俺の事を小娘って言ってるが、俺は男だが。もう一度殺されたいのか?」
「(矮小な小娘ではなく、矮小な小僧だっただと!? 何の冗談だ!?)」
コイツ本当に殺されたいんだな。
俺は右手を握り拳にして、バルナールを殴ろうとする。
「(やるか小僧っ! 小僧に勝てなくとも、一矢報いることぐらいは出来るわっ!)」
バルナールは反撃が出来る体勢を取る。
「いや一矢報いる前に、普通にユウヒ君に殺されるけど。ユウヒ君も少しは抑えて。殺すのは、コイツが色々喋った後でも出来るから」
「・・・それもそうだな」
「(ふん。命拾いしたなぁ小僧)」
「それは俺の台詞だ。―――で。俺がお前を殺した後、その黒猫に転生したのか?」
「(そうだ小僧。小僧に殺された後、我が目覚めた時は見知らぬ森だった。我の親はネコだったから我もネコだと確信した。その後我がメスネコだと分かった時は絶望をしたぞ・・・。急いで転生をしたのが悪かったのか、時間や種族や性別などの設定をする事を忘れていた)」
「ちょっと待て。転生って設定とか出来るのかよ。聞いたことないぞ」
「(ふっ、我くらいになると。転生など、自由に出来るわ)」
「ユウヒ君。こいつ上位の転生持ちだったよ。上位の転生持ちなら、時間や種族や性別なんて設定する事は普通にできるね」
「(知っておったか小娘。まぁ我ぐらいだろ、この大陸で転生を持っておるのわ)」
「私は特級転生を持っているけど」
「(なっ・・・!)」
「転生ってそんなに種類があっていいのかよ・・・」
「メアリー様が創ったから、しょうがないよ」
「(―――まぁいいだろ。しかし我は安心したぞ。小僧たちがまだ生きてる時代で。一体どれくらいの時が過ぎた?)」
「お前が死んでまだ半年もたってないよ。約3ヶ月ぐらいだな」
「(我が死んでそのくらいか・・・。意外と早く転生が出来たか)」
「気になったんだけどさぁ。お前がいつ自分がミミックキャットだと気付いたの?」
「(我の母が教えてくれた。我々は擬態して人や魔物を騙して殺す魔物だとな。何なら今ここで見せようか?)」
「あぁそれはいいや。お前の擬態を見たら殺す自信がある」
「(つまらんなぁ・・・。いや、悩殺されるのが怖いのか。小僧?)」
コイツ・・・。いや、我慢だ。
「アリアナ。ミミックキャットって成長が早いのか?」
「早いよ。半年もあればもう大人になるし長生きもするよ。長くて50年くらいは生きてるね」
「猫の寿命を超えているぞ。流石魔物って言うべきか。ところで、お前の親はどうした? お前が帰ってこないから、心配してるんじゃないのか?」
「(親は1週間に殺されたわ)」
「あぁ・・・。悪い」
「(ふん。それぐらいで、我が気にすると思ったか? 人も魔物もいずれは死ぬ。それがただ早かっただけの事だ。そういう小僧たちも親がいないではないか)」
「確かにいないな。まぁ元気にやってると思うけど」
「(まぁ小僧たちの親などどうでもいいわ。で、小僧たちは人族か?)」
「どう見ても人族だけど。ちゃんと目、ついてる?」
「(ちゃんとついておるわ! 我が言いたいのは、小僧たちが人の姿をした別の種族かと聞いておる!)」
「最初からそう言え。別に俺達は変装とか擬態とかしてないよ。正真正銘人族だよ」
アリアナは違うけどな。
「(ぬぅぅそうか・・・)」
「なぁお前はどうやってここに来たんだ? ここに来るには、門番の目を盗まないとここにはこれないが」
「(親と一緒に逃げてる最中に、鳥に擬態をして飛んで門を越えたが。先回りをしていたエルフ族たちに、親は殺されたな)」
「悪かった・・・」
「(ええい一々これくらいで謝るな! 我は気にしておらん!)」
「そうか。で、その後どうした?」
「(我の親を殺したエルフ族を皆殺しにした後、我はこの森で修業をしていた。最初は何度か死にかけたが、今は問題なく殺せるくらいにはなったわ。今日は違うところに行こうと歩いてると、このような家を見つけてな。邪魔だったから壊そうとした)」
「俺の家を壊そうとしていたのか・・・。まぁその前に結界を壊せなかったようだが」
「(そうだあの結界! あの結界は小僧が張ったのか? それとも小娘か?)」
「残念ながらどっちでもないよ。この結界を張ったのは―――言う必要はないな」
「(そこは言わんのか。まぁいい、我は聞きたいことは聞けた。我は帰る)」
そう言ってバルナールはテーブルから下りて、結界の外に出る。
「あっ殺し損ねた。まぁいいか。それにしてもまさかあの黒猫が、前に殺したダークドラゴンだったとは」
「凄い偶然だよね~」
「バルナールも帰ったことだし、スキルのレベル上げでもするか」
球体(水)を起動させて、耐性スキルのレベル上げをする。




