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第57戦 VS餓えた料理下手

人にはやはりどうしようもない欠点というものがあるものだ。

私は敬語を使えないし、欅はすぐ手を上げるクセは直らない。

しかしそれは欠点と一口に言い切ってよいものではない。

敬語が使えない分、裏表が無くてよいと言われることもあるし、欅は痴漢にあっても大丈夫だろう。

つまりはどうしようもないなら、ポジティブ思考でいるしかないのだろう。

どうせ最終的な意味づけをするのは本人なのだから。

それに欠点の奴にだって一長一短とはいかなくても一長百短位でいさせてやって良いと思う。

・・・ただ真木の調理だけは例外かもしれんなぁ。


「先輩、通い妻みたいですねっ♪」


「そして通い妻は男に愛想をつかして会いに来なくなるのであった」


「冗談ですって、まあまあ」


エプロンのまま台所から華麗な動作で帰ろうとすると、目が笑っていない真木に袖を掴まれた。

このスピードについてこれるか・・・・ッ!

何故通い妻どうこう呼ばれなければならんかと言うと、真木に拉致られて料理を無理やり作らされるという強制労働を強いられているのだ。


「今日は麗香先生もカンナちゃんもいないからご飯をたかる人がいなくって、アハハハハ」


口だけ笑ってみせるが、目はガチだ。

獲物を絶対に逃さないという餓えた獣の目だ。


「インドの方には断食の習慣があるそうだ。お前も試してみたらどうだ?」


「別にいいですけど、空腹の余り先輩の冷蔵庫の食材を勝手に使って、尚且つ先輩の口に間違ってこぼしちゃうかもしれませんね☆」


「・・・・チクショー」


こいつ自分の料理の下手さを利用しやがった・・・!

導入部でどんな欠点も長所に成り得ると言ったが、真木の短所も例外ではなかったようだ。

食べ物ではなく生物兵器として使うなら中々に有用らしい。


「というか未だに麗香にたかっているのか」


「材料費はちゃんと、一緒に買い物に行ったときに出してますよ」


「・・・毎日か?」


「ほぼ毎日で」


あ、少しだけ軽い頭痛が。

真木ならきっと、いい奥さんになれるだろうな。

勿論皮肉だ。

いくら料理が作れないからって他人に全面依存なのは考え物だ。


「カップラーメンくらいは誰でも作れるだろ?」


「お湯を注ぐことしかしてないのに、スープが紫と白のマーブルに変色する人は【誰でも】に入らない、か・・・」


フフ、と顔を俯かせて自嘲気味に彼女は笑った。

正直に言ってなめてた、すまん。


「まあ別に食費が出るのなら少しくらい料理人になるのも悪くない」


「ありがとうございますっ!」


とりあえず冷蔵庫の中のモノを、雑炊にする作業を続けようか。

私が調理している後ろで、真木はドラクエに興じていた。


「せんぱーい」


「ん?」


カチャカチャとモンスターを虐待する手を止めずに、とんでもないことを言い出しやがってくれた。


「先輩って童貞ですか?」


「真木、包丁の持ち手が壊れてしまった。二本目はあるか?」


「どんな握力してんですか・・・」


別に童貞であることをコンプレックスに感じているわけではない。

いいじゃないか、童貞。

三十歳を迎えれば魔法だって使えるようになるんだぞ?

むしろ一度だけ童貞を失いかけたことに問題があるのだ。

相手は男だったから、捨てかけたのはもしかしたら処女だったかもしれんがな!!


「もしかして先輩、そっちの気があると・・か・・・」


「真木、手が滑ってしまった。そこに突き刺さった包丁を取ってくれ」


「・・・ごめんなさい」


何故謝るのだろうか。

私はただ単に手が滑って、包丁を投げ飛ばしてしまっただけだというのにな。


「そういう話題もいいがな。勉強の方は大丈夫なのか?」


「あ、レベル上がった♪」


「おお~そうか!じゃあこの間の中間考査はどうだった?」


「ちっ」


「下がったんだな」


「はい・・・」


勉強云々に私が首を突っ込むことも無いんだがな。

赤点を取られてると補習になって、ウチの妹と遊ぶ暇がなくなって、暇になった妹が私の邪魔をしに来るという最悪の未来が見える。


「とにかく、わからないことがあったら私に聞けよ?」


「はーい」


画面から目を逸らさない生返事だ。

来るときは言わなくても来るか、と結論付けて雑炊をちゃぶ台の上に置いてやった。

ついでに茶を注いでやる。


「雑炊ですか・・・もっとエレガントで豪勢なご飯が欲しかったなぁ・・・」


「あの冷蔵庫で何を期待してるんだか。早く食べないと冷めるぞ」


「はいはい」


なろう。

作ってもらったというのに何たる言い草。

それでは・・・


「「いただきます」」


パクリとさっそく一口目を食べる。

流石は私、美味だ。


「やっぱ先輩の料理はおいしいですね~」


「そうそう。我ながらこの舌がしびれるような辛さが・・・・えっ?」


視界がゆがむ。

頭がぼんやりと痺れ、力が奪われて激しい嫌悪感のような・・・


「な・・・・何故・・・・・」


「ぐ・・・多分私が買ってきた材料だったから・・・・」


「食材ですら・・・侵食されると・・・いう・・・の・・・・・・か」


ばたんきゅー







翌日、お泊り会から帰ってきた橘カンナに発見され、その後病院に運ばれる

最近、偶然にも「X月X-1日」更新なのでわざと合わせてみました。

次も合わせるかというとどうだか・・・

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