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第56戦 VSイェイソー

「あ・・・」


版書を間違えて【アウストラロピテクス】を【アウトロウピクルス】と書いてしまった。

退屈な授業でボーっとしていたとはいえ、我ながら酷い間違え方だ。

是非とも食べたくないピクルスだ。

心の中で「スティッキーフィンガーズ!」とほざきながら、筆箱のチャックを開ける。


「あ・・・」


消しゴムが影も形も無い。

そういえば昨夜に勉強したとき机に置きっぱなしにしていたような気もする。

机の上にポツンと置き去りにされた寂しい思いをしている消しゴムを思うと、胸が締め付けられる。

わけがない。

仕方ないので隣の席に座っている欅から借りさせていただくとしようか。


「悪いが消しゴムを貸してくれ」


と声を潜めながら聞いてみると、同じく潜めながら返ってきた答えはNOだった。


「嫌よ」


「何故だ。三十文字丁度で答えよ」


「私の消しゴム、買ったばかりの一度も手をつけていないヤツなのよ」


本当に句読点を含めて三十文字ぴったりで答えやがってくれた。

新品なら仕方ないな。

あのカドを使う快感は、他の誰にも使わせたくないものだ。

それだからこそあのカドケシといった商品がヒットしたのだろう。


「ちょっと消しゴムを貸してくれ」


今度は前の席の丼モノに聞いてみる。

ちなみに私の席は教室の一番下の列、右端から二番目だ。


「ごめん、僕はボールペン派なんだ」


「そうか・・・」


どこかの本で読んだが、ボールペンで版書を取った方がよく覚えられるらしい。

私も前に一回試してみたが、余りの誤字の多さに修正液の使用頻度が多すぎて、シャーペンを使ったほうが効率的だろうという結論に至った。


「ちょっと待ってて」


「ん」


代わりと言ってはなんだが、どうやら隣から借りてくれようとしている。

だが何故だかその隣の女子は渋っている。

ほほう、私に消しゴムを貸すと穢れるとでもいうのかい?

しかし良く見ると若干顔を赤らめ、うろたえている。

・・・・成る程、わかったぞ。

後ろから丼モノをつつく。


「左隣から借りるからいい」


「え、いいの?」


「誰から借りようとも変わらんさ」


そう・・・といって丼モノは授業へ戻った。

隣の女子は私にはにかみながら、手刀を突き出した。

とはいえ攻撃宣言ではなく、多分謝罪と感謝の意なのだろう。

私も手をふって「良い良い」と返してやる。


あの女子は丼モノが好きな子のうちの一人だと聞いたことがある。

そして少し前に消しゴムに好きな人の名前を書いて、誰にも見られずに使い切ると両思いになれるというおまじないが流行った。

ついでにあの反応。

以上の三つから導き出される結論は簡単だ。

消しゴムには恐らく丼モノの名前が書いてあるのだろう。

まあ見られたら嫌だろうな。

なんて考えながらにやける、青春しているなぁ。

っと欅にでも見られたら気持ち悪がられる。


「というわけだ、A君。消しゴムを貸してくれ」


「ちゃんとした名前で呼べよ」


いや、一発限りのキャラに迂闊に名前をつけるのはどうかと思うのだ。

無駄にキャラ数が多いから読者様も「こんなヤツいたっけ?」となっているだろう。

適当にクラスメイト出すと健児とキャラがかぶりそうになるし。

とか危ない発言は置いといて。


「松井デラックス、頼む」


「松井がすごくなったのか、マツコデラックスの親戚か・・・ってどっちでもいいわ」


「じゃあルドル・フォン・シュトロハイム」


「何処の国籍の方だよ」


「ドイツの国籍の方だよ」


「どうでもいい」


怒ってしまったのか、シカトし始めた。

今のは私が悪いか。

次は斜め前だ。


「谷山、消しゴムを貸してくれ」


「だが断る」


「・・・・山谷、消しゴムを貸してくれ」


「あいよ」


どうやら名前を逆に言ったのがいけなかったらしい。

ニックネームのようなものなんだから、そこまで気にせんでも。


「あ・・・」


このリアクションから察するところは一つしかあるまい。

というか五人に借りようとして、五人とも駄目という私の運は素晴らしいものがあるな。

畜生!


「はあ・・・全く」


「何呆れてんだよ。そもそもお前が俺を違う名前で呼ぶから消しゴムがどっか行ったんだよ!」


「最近の消しゴムは自我が芽生えているのか・・・って馬鹿か?!そんなワケ無いだろ!」


「うるさい!それがモノを頼んだ人間の態度かッ?!」


ガンッ!


「・・・・・・」


「・・・・・・」


そういえば今の授業は日本史Aのじじいだったな。

先程のは教卓を思い切り叩いた音のようだ。

第8戦以来の一年以上たってからの再登場だ。

何かストレスでもたまっていたのか、80%以上の生徒が騒がなくてもきれた。

もっともアレだけ騒げば普通の先生でも怒るだろうか。


「手前ら、表へ出ろ」


「「・・・はい」」


くそっ、絶対に今日の私はついていない。

私はただ消しゴムを借りたかっただけだと言うのに。


「はあ・・・」


谷山と仲よく廊下に立つ。

この年になってまで、こんなことをするとは思わなんだか。


「つかさ、家人。今思ったらシャーペンの頭に消しゴムついてなかったっけ?」


「あ・・・」







ノートをとるときは、消しゴムを使うより二重線で訂正した方が時間が短縮できていいらしい

と言って置きながら私はボールペン派で、いちいち修正液を使っているのですが。


小学生の人は、友達のケシゴムに女子の名前が書いてあったら、十中八九その子が好きなんだと優しい目で見てやって下さい。

小学生がこの小説読んでたら読んでたで驚きますが。

私も友達のケシゴムに同じクラスの女子の名前を見つけてテンションMAXになっていた時期がありました。

今では友達に好きな子がいることを知ると、落ち込みます。

青春できて良いな・・・と。


男友達からは女性恐怖症なんじゃ?とか言われますよ、ハハッ。

1年たっても顔と名前が一致するクラスの女子が2人、ハハッ。

そんなんだからたまにゲイと疑われることすら・・・、ハハッ。

この程度、まだまだだな、と誰か言ってくださいorz

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