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第54戦 VS町内会会長

戦後からずっと取り替えていないという、大分年季の入った畳の上で60人くらいの人数がひしめき合っている。

方々では「3丁目の山谷さんのせがれが・・・」「この間変なばあさんにひったくられかけた」などと井戸端会議が。

しかしこの公民館はいい加減改築したほうがいいと思う。

古臭さはそれもそれで情緒があると思い込めばよいが、この人口密度だけは我慢できん。

今も髪の毛が風前のともし火といった年寄りが「すいません、ちょっと通してください」と連呼しながら部屋を出ようとしている。

トイレに行くのも一苦労だ。


「おぅ、家人じゃねぇか」


「マイケルか。商売の方はどうだ?」


「まあ最近は何処のしけちまってンだ。なんとか生活できる程度にゃか稼がせてもらってるがな」


ニヒヒ、と彼は笑った。

ねじり鉢巻に浅黒い肌、黒い前掛けといい伝統的といってよい程に全身で自分は魚屋と自己主張している格好だ。

仕事以外のときぐらい普通の服を着たらどうだと前に言ったら、本人いわく「これが俺のアイアンティティよ」だそうだ。

多分アイデンティティのことだろう。

彼の名は魚沼マイケル。

詳しくは第32戦参照だ。


ちなみに敬語を使わないのは私のアイデンティティである。

良くも高校の面接を無事に通過できたものだ。

と思ったがそういえば、相手はあの校長だった。

敬語どうこう以前に暴言を浴びせ、挙句の果てにスリッパを投げつけてお開きにしたな。

しかしあれは「まだ童貞なのか、ん?」とか「1週間平均何発だ?」とか関係ないことを聞く校長が悪い。


「つかアレだな。華の高校生が町内会に真面目に出てんの今日日珍しいモンだ」


「華の~」という言葉を男子高校生に使うのもなぁ・・・。

使わないことも無いかもしれんが、男を華に例えるのは微妙な気がする。


「私だってそんな毎回出るほど律儀でもないし暇でもない。しかし今日の議題はアレだろ?」


そういってニヤリと笑ってみせると、彼も「そうだな」と言ってニヤリと笑った。

写真を撮ったら「悪代官と悪徳商人」という題名が良く似合うだろう。

それほどに私もマイケルも心底楽しそうに笑っていたと思う。


「んで、そっちの嬢ちゃんは誰だ?」


「・・・森林葉です・・・」


「俺ぁ魚沼マイケルっつー魚屋だ。宜しくな」


「・・・宜しくお願いします、魚沼さん・・・」


「そんな堅苦しくなくていい、いい。マイケルで頼む」


「・・・マイケル・ジョーダンさん・・・」


「ってどっから苗字きた?!」


「はははは、面白ぇお嬢ちゃんだ!」


彼は膝を打ちながら大爆笑していた。

ツボがよくわからん。


しかし林葉も昔と変わったものだ。

出合った頃はこんな人数の集団にいるだけで苦痛だったろうに。

やはり彼女は少しずつ成長していたのだろう。

その後3人で取り留めの無い話をしていると、前のほうから「静かにしろー」と声が聞こえてきた。


「大体集まったようだな。そろそろ町内会議を始める」


「おー」「待ってましたぁ!」「よっ、大統領!」「明日は特売だぁ!」「Ya,Fu-!」「俺の歌を聞けぇえええ」「光差す道となれ!」

会長が出ただけで室内が一気に盛り上がる。

どうやら既に酒が入ってしまっているようだ。

後半はもう自分の好きなことを叫んでいるだけで、全く関係ない。


「・・・・・」


会長が手を挙げて制止すると、皆大人しくなった。

さて、このように大人気の会長について説明しよう。

風貌はどてら姿にさらし、顔は斜めに目を横切る傷とそれを隠そうとしているが隠せていないサングラス、といったものである。

その上白鞘のドスのようなものを抱えている。

何処からどう見ても完全に「や」のつく自営業の方だ。

実際そうだったりする。

我らが会長【蒲公英極龍】そんな人物だ。

そしてその会長が頭目を務める一家が蒲公英組・・・ひらがな表記で【たんぽぽ組】である。

名前だけ聞けば幼稚園の学級なのだがなぁ・・・


「そいじゃ会議を始める。今日は大和祭についてだ」


「おー」「待ってましたぁ!」

以下先刻と同じ流れ。

会長も大変そうだな。


「ショバ代は祭りが終わった次の町内会で回収する。とりあえず当日の日程だが・・・」


普通にショバ代とか発言する町内会会長とはいかがなものか。

ウチに新しく越してきた人とかどういう反応をするのだろう。


「出店の申し込みは今日で最後だからな」


ちなみに宝蓮荘も毎年やると大変なので、隔年だが出店させてもらっている。

そして今年がその年なわけだ。

大和祭は少し大きめの祭りなため、儲けもがっぽりと・・・もっとも打ち上げの費用にほとんどが消えるのだが。


「一応去年と大して変わってねーが、注意書きみたいなのを紙にまとめて置いた」


がやがやと雑談を交えながら前からそのプリントが回ってくる。

そもそも列などなく入り乱れて座っているので、結構に適当だが。

・・・先程、プリントと形容したのは間違いだったな。

ワープロでうったというようなものではなく、それは見事なまでの達筆で書かれていた。

極道もデジタル化しているかと思いきや、少なくともたんぽぽ組はそうではない様だ。

にしても字上手いな。


「にしても組長は字がうめえな!」


「・・・・ぉぅ」


照れた。

ウチの会長は皆にマスコットキャラ的に愛されるのもわかる。

彼は強面だが、そこそこかわいらしい一面を備えている。

趣味は園芸と手芸ときたもんだ・・・まあ多少引いたけど。


「続いてこの近辺で最近ひったくりが多発しているが」


「林葉急用を思い出した」


これ異常ないという程に無駄のない完璧な動作で立ち上がり、全身の五感をフルに活用し現在位置を確認する。

ここから出口まで恐らく飛べば7秒位・・・止めるような人物は・・・


「・・・何・・・?」


「荷物が重いのに腰を痛めてしまったお年寄りの助ける声が聞こえた」


「変な電波受信すんなよ。最近って言ってんだから花ちゃんじゃねぇって」


マイケルにどうどうと諌められる。

引ったくりというと、それを趣味にしている私の親戚しか頭に思いつかない。

とばっちりを喰らう前に逃げようとしたが、確かに魚屋の言うとおりだ。

なんだかんだで慣れた町民は、花をある種のイベントとして楽しんでいるしな。

とか思ったら組長から呼び出しが。


「そこら辺含めて家人、お前は少し終わったら残れ」


ほらぁあ!







結局話の内容は大和花子と関係なかった

まだ俺のバトルフェイズは終了してないぜ!

お久しぶりです。

更新スピードが遅い作品でも質も量もある良作は多いですが、両方ともないウチはどうしようもないですねww

結局2月末に更新するつもりが話が詰まって3月に・・・

最終話のためにストーリーに制限があると、キャラが動かし辛いです。

適当にうだうだやってるのは楽ですが・・・オチさえつけば。


一応明日から暫く何もない休みが何週間か続くのでそのうちに1、2話位は更新したいと思います。

ただpixivで底辺をうろついたり、たまった小説(同人誌ですが・・・)があるのでどうなるかわかりません。

司馬遼太郎とか何冊かこの休みに読む予定なので。

ラノベみたいに軽いのはガンガン読めますけどね、最近読んでるのは刀語りくらいなモンですが。

あれラノベでいいんでしたっけ?

昔はハリポタとか2日で上下巻読破とかできたのですが・・・時間のなさと老いは恐ろしいです。

あんまり期待しないで待っててくださいねw

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