第49戦 VS球技大会「なサッカー」
「それでは2年〆組と3年D組の試合を始めます、礼!」
『お願いしゃーす!』
汗臭い感じの声の挨拶。
それに続くかのように放送が入る。
[さあ、いよいよ始まりました決勝戦!実況は放送部部長、ハイテンション伊藤がお送りします!!]
今年は決勝だけ放送がつくらしい。
それにしても売れない芸人みたいな名前だ、ハイテンション伊藤。
「ついに決勝か・・・」
「長い道のりだった・・・」
聞いての通りこの試合は決勝戦だ。
展開が早い、などの類の苦情は一切受け付けない。
そもそも一回戦からだとネタが尽きるし、見て誰が楽しいんだ。
この小説はコメディなのだ。
省略しても構わんのだろう?
って誰かが言ってた。
[解説は人気No.1セクスィー教師、高峰麗香先生です!]
[ど~も~]
・・・・どうにもあの方は暇でおられるらしい。
実況には突っ込まずにいよう。
それよりも試合だ、試合。
「それでは行くぞ!」
『YAAAAA!』
ふむ、我がクラスの危ないテンションは健在だ。
よく続くものだ。
「家人君」
「ああ」
私がボールに触れ、丼モノが谷山にパスする。
そして私にマークがつく。
イケメンだ。
「キャー、池沼先輩!」
「頑張ってー!」
黄色い声がワンキャン頭に響く、やかましい。
羨ましくはない、断じて羨ましくはないと自分に言い聞かせていたら、イケメンに話しかけられた。
「君、にしても地味な格好だね~」
「あ?」
言葉に嘲りが含まれていたのでイラっとしてガラの悪い返事になる。
実際、馬鹿にしたような笑い方なので無礼どうこうは言わないで欲しい。
「そう突っかからないでよ。染めろとは言わないけどワックスぐらいはつけたら?まあボクほどにはならないだろうけど(笑)」
大きなお世話もいいところ、単にワックスにさける金が無いだけだ、チクショー。
にしてもこの男・・・
「わかりやすい死亡フラグだな」
「家人!」
「それどういう意味・・・へぶらっ!?」
一瞬、辺りがスローモーションになる。
イケメンの顔にボールが食い込むぐらいに命中する。
顔面と一緒に面子を叩き潰す。
[これは・・・っ!]
[イケメン君から見て、ボールを家人で見えない位置から蹴って、家人が当たる瞬間ギリギリに避けるという後ろに目があるかのようなチームプレイね]
あの男にしてみれば、相手が急に動いたと思ったら、いきなりボールが出現したといった具合だろう。
前にも言ったが私の場を読む力をなめないで貰いたいものだ。
後ろから飛んでくる物体の気配を読むなど造作もない。
空気は読めないが。
[あーっと、痛快な一撃でしたがイエローカードです]
「悪い家人・・・あのイケメンのツラを見たら自分の中に沸々と黒い感情が・・・」
判定を取られた谷山が謝る。
もっとも顔は良い塩梅に歪んでいる。
怖い。
「いや、良くやった。相手の士気はそこそこ下がったはずだ」
逆に怒ったとしても、こちに有利な要素だ。
イライラした連中程ハメやすい奴はいない。
「大丈夫かー池沼(棒読み)」
「ざまぁないな、ハハ」
「て、てめぇら・・・」
いらぬ考察だったようだ。
中々に愉快な仲間達からフリースロー。
ちなみにサッカーのルールは非常にアバウトに設定されている。
球技大会なんてそんなもんだ。
「もらったよ」
「この・・・っ」
[おっと点呑選手、ナイスカット!]
[流石はサッカー部2年生エースだけはあるわね~]
放送席のマイクにお茶を啜る音が入る。
解説者としてそれはどうなんだ。
「丼モノ!」
「はい」
ボールが足に吸い付くような良いパスだ。
そろそろやるか。
「総員、上がれぇえ!!」
[おおっと、開始早々〆組は橘選手以外が敵ゴールに突進したぁ!]
[なだれ作戦ね]
[ほほぅ、なだれ作戦とは?]
[キャプテン翼においてふらの中が使った技よ。ま、解説は見ればわかるから要らないわよね~?]
私の一声でタガが外れたように闘牛の群れが相手ゴールに向かって突撃する。
キーパーは今すぐそこから逃げ出したい恐怖にかられているだろう。
タイムセール時の戦乙女並みの気迫だ。
「ちっ」
急いで戻る、がもう遅い。
スライディングしてきたイケメンをかわしてから、大きく前へパスを蹴り出す。
「くっそぉおお!」
ロングパスは上手く通った。
まずは一点。
多少の小競り合いを経て、ゴール前まで上がった丼モノにボールが渡る。
「・・・っと!」
〔ゴォオオオル!]
ネットに色々とおかしな軌道のシュートが突き刺さる。
どう回転をかけたらSの字に曲がるのか。
キーパーは舌打ちを小さく打ち、センターサークルにボールを送る。
「なめた真似しやがって!」
「やれるものならどうぞご自由に、先輩殿」
なんて洒落てもみたりする。
我ながら小ざかしいなー。
「喰らえ!」
イケメンが大きく振りかぶる。
どう考えてもボールを私にシュートするつもりだ。
そうは行くか。
「丼モノ!」
「了ー解っ」
「んなッ!?」
[これは・・・流星のような速さのスライディング!その姿はまるで芝生を駆ける白馬のような華麗さ!]
脳内でその輝かしいスライディングとやらは補完してくれ。
上手いが別段そんなすごくない。
[ウチのグラウンドは芝生じゃないけどね]
[いいんですよ、細かいことは]
実況が話す間にボールは進む。
多少の小競り合いを経て、私は仕方なく山谷にバックパスする。
と、同時にシュートできる位置まであがる。
「またロングパスか・・・そうは行くか、皆動け!」
3年D組のリーダーと思わしき人物の声で、チームが身構える。
しかしどちらにせよやることは変わらない。
「家人ッ!」
ボールが何故かジャイロ回転しながら飛んでくる。
そんな技いらんから、取り辛いだけだ
心の中でぼやいていると敵チームが動く。
[なんと・・・何故かD組がゴールをフリーにした?!]
[これはオフサイドトラップ・・・!まさか球技大会でこんな高度な技を見ることになるとは驚きね]
[なんですかそれ?]
[知らないのね・・・簡単に言うと相手キーパーとの間に他に、もう1人敵を挟んだ状態じゃないとパスしちゃいけないってルールがあるのよ~それを意図的に起こさせることをいうの]
そして私視点へ。
ボールはまだ移動中だ。
長くないか?という疑問ももっともだがそうでもない。
キャプ○ン翼なんかの実況と比べればまだまだ現実的な時間だろう。
なんて考えている間にボールをキャッチ。
キーパーとの間に誰もいないのでモロにオフサイド判定だ。
「が」
「?」
「そもそも学校の球技大会なんかでいちいちオフサイドなんて取るかぁああ!!」
[ゴォオオオル!無論オフサイド判定無し!]
〆組歓喜、D組絶望。
頭をヤカンにしたイケメン君が抗議に出る。
「ちょっと待ってくれ、あれくらいマジなオフサイドならとるべきじゃねーのか?!」
しかし現実は非常である。
丼モノの一言で残された僅かな希望は崩れる。
「第23条、サッカーにおいてオフサイド判定をとらない」
「ふざけるなぁあああ!」
「落ち着け池沼。まだここから逆転すれば・・・・」
グラウンドの真上の青空に、悲しげなホイッスルが響く。
あっけに取られるリーダー。
[試合終了~!]
「早ッ!」
「だって球技大会だからなぁ・・・」
この後〆組とD組は乱闘
その場を高峰麗香が治める
お互いにいい汗をかいたらしく友情が芽生える
点鈍曰く「少年漫画でありがち感じ」とのこと
お待たせしました。
リアルでの用事が新たか片付いたので何とか更新できました。
今回の書いた感想。
「二度とスポーツ系は書くものか」です。
サッカーボーイズとか本当に尊敬します。
そもそも私のサッカー知識は弟からと翼君のみです。
むしろテニス経験者なんでそっちにすりゃ良かった・・・
中々にツッコミどころがあると思いますので、容赦なく教えて下さい。