第42戦 VS最強の漁師「母」
「家人、そもそも釣りは生活のための糧を得る・・・」
「わが父よ、今魚がかかったところなのだ。邪魔をするな」
ゴールデンウィークということで、一家で釣りに来ている。
なにやら寂しげな父さんを放って置いて、釣りにいそしむ。
む、ぅおう!
「お兄ちゃん、餌持ってかれちゃうよ」
「く・・・・のっ・・・!」
なんだこの重さは?!
カジキマグロレベルだぞ!
釣ったことはないが。
「手伝ってくれ母さん!」
「了承した、わが息子よ!!」
2人でさおを握る。
母さんが足を踏ん張ると・・・
「うらぁあああああ!!!」
「わっ、母さん強すぎ・・・・!」
さおの方が耐え切れなそうだ。
しかし流石は大和家特別製。
母さんの馬鹿力に悲鳴を上げるが、折れはしない。
「おおおおおおおお!!」
ザパーンと釣り上げたものが中へ舞い踊り、ドカァ!と品無く着地する。
さおはどこかへ吹っ飛んでしまった。
「釣れた釣れたぁ!渡部が」
「ああ、渡部がな・・・・・ってえええ?!」
「家人様、こんにちはでございます」
落ち着け、落ち着くんだ私。
渡部が釣れた。
整理すればそれだけのことなのだ。
それだけのカゴテリーに入るかどうかは微妙だが。
口からだらだらと流れて出る血は見ていて痛々しいが、顔に痛みが出ていない。
恐るべきポーカーフェイスだ。
「別に構ってもらえなくて、寂しかったわけではありません。ただ主様たちの身を案じここに参ったのであります」
「「普通に来たかったと言えばいいだろう」」
秘儀、父子ツッコミ。
父さんが渡部を叱り始めた頃、母さんが歓声をあげる。
「良し、キタ――!!」
「お母さん、さおが折れるって・・・」
「ちゃぁあああああ!しゅぅうううう!!めぇええええええん!!!」
水しぶきが・・・否、水柱があがる。
周りの水面も、波で大荒れだ。
シャチが釣れるか、鯨が釣れるか・・・・
あたりが闇に包まれたコンマ数秒後、ありえないものが宙を舞っているのを認識する。
「ふぃい、流石にきつかった〜」
「って船が釣れたぁあああ?!」
あ・・・ありのまま今起こった事を話すぞ!
『私は母さんがなにか大物を釣ったと思ったら、沈没したらしき船が釣れていた』
な・・・何を言っているのかわからないと思うが、
私も何が起きたのかわからなかった・・・(わかっているが、信じたくないものはある)
頭がどうにかなりそうだった・・・気の力だとかテレキネシスだとか、
そんなチャチなもんじゃあ断じてない。
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぞ・・・
(この間、わずか数秒)
バシャァアアアアアアア!!!
追い討ちをかけるように、もう一度水柱が出現する。
母さんが釣り飛ばした沈没船は、泊まっていた漁船を巻き込んで海に再び沈んでいった。
ノアの洪水を連想させるほど、海は荒れた。
「お兄ちゃん、人間の力って普通さ・・・・」
「何も言うないでくれ。わが妹よ、頼むから何も言わないでくれ」
勘違いのないよう補足しておく。
母さんが釣り飛ばしたのはそこいらの漁船とは違う。
タンカーだ、タンカーなのだ。
「息子よ、よく見ておけ。あれがお前の母親の姿なのだ」
「現実逃避くらいさせてくれ」
自分の妻を見る父さんは、全てを悟りきった少しすれた仏を思わせた。
母さんの足元は軽く陥没して崩れ落ちている。
何秒後かには崩れ去って跡形もない。
更に発生した津波が私達に襲い掛かりずぶ濡れだ。
ぬれた程度で済んだのは、母さんがとっさに障壁のようなものを張ったからだろう。
・・・・・んなわけあるか。
「少し張り切りすぎちゃった、アハハハハハハ」
「タンカーを一本釣りするような人間は、危険物として処理した方がいいと思うのだが」
「ふぇーん、あなたー家人がいじめるよー」
「そうか」
母さんを抱きとめる呆れたともさめたとも取れる目をした父さん。
何故平常心を保っているのだ。
「ヒトはすぐに慣れる生き物なのだよ」
「お兄ちゃん、慣れって怖いね・・・・・」
「ああ、そうだな・・・・・」
「蓮が私に告白してきた時はこんなものではなかったぞ」
更に枯れる父さん。
魂がどこかへ逝ってしまった様だ。
「アタシの愛の力って素晴らしい」
母さんに聞いた話はこうだ。
幼馴染の父さんに大和高校に入ってから、自分の懐いていた気持ちを自覚したらしい。
父さんに近寄る他の雌豚どもを排除するため、大和高校美少(以下略)を影で手を回し設立。
結果自分の首を絞めることになったが、団員の首を絞めることで解決。
母さんの告白は毎回負傷者、建物全壊といった惨劇を毎回巻き起こした。
100回目の告白でやっと承諾。
「99回断り続けたのか・・・・父さん、尊敬してもいいよな?」
「ボクもそうするよ・・・」
「・・・・・蓮を抑えることができる男は私ぐらいだからな」
父さんは尻に敷かれつつ、手綱を握っている。
ちなみに母さんは今、シャチを尻に敷きつつシャチを喰らっているが。
「父さんは・・・・父さんは何故母さんの告白を受けたの?」
確かに。
99回しのいだなら、それ以降も大丈夫そうだが・・・・
「そうだな。不器用で馬鹿力で猪猛突進だが、意外ともろい部分があるからな」
もろい部分か。
普段の母さんを見ているとそうは思えんがな。
「蓮は少し精神的にもろくなる時がある。だから近くにいて、その時守ってやりたいと思ったから・・・と言うところだな」
「なんだか素敵だなぁ〜」
「それでも99回断ったよな」
「それに私自身途中から意地になっていたからな、その告白戦争すら日常の一部と化していたし」
単に100回だったからそろそろいいか、と思って付き合い出したらしい。
今回は普段聞けないエピソードが聞けたので、いい休日だったとしておくか。
「お兄ちゃん、渡部さんは?」
5時間後渡部が溺死寸前で発見
釣ったシャチは水族館に寄付
半分食われた状態だったが、何とか生き延びた
どうやら橘蓮になんらかの影響を受けたらしい
更新が遅れ気味だったのは短編書いてたからです、なんていい訳。
気が向いたら読んでくださるとありがたいです。
以上、広告でした。
もう後書きのネタがないのでキャラについてるろうに剣心っぽく書いて見ます。
題して「キャラ製作秘話」
・・・・まんま、るろ剣からとってますが。
キャラ製作秘話第1回「橘家人」
一人称が私の男キャラ、というだけでできました。
・コードギアスのゼロ(ルルーシュではなく)
・HELLSINGのアーカード(たまに俺とか言ってるけど)
・ハンター×ハンターのクラピカ、等
他にも上げればキリがないんですけど、そこら辺に憧れて・・・
書いてる内容のベクトルが違うからアレですけど。
性格は特になし。
その場の流れのままなので。
名前に関しては何でこんな変な名前なのかわかりません。
けどこの名前がちょっとした・・・・
言葉で表現しにくいのでその時が来たら。
文章力ないなぁ。
個人的には気に入ってます。
実際にこんな人いたら違和感バリバリですが。