第37戦 VSガーデニングと箱
空は雲ひとつ無い晴天。
今日は絶好の昼寝日和だな。
ヌヌ猫は早速、屋根の上で昼寝を堪能中だ。
そんな日に不釣合いの表情をした人物が。
「家人さん、おはようございます」
麦藁帽子に軍手という農家スタイルは別に良い。
ただ口調こそ静かなものの少し不機嫌そうに見えるのだ。
怒っていると言うより、いじけていると言った方が正しいか。
「おはよう、ユカ。で、何故私を呼び出したのだ?」
「はい。今日はガーデニングをしようと思いまして。家人さんが元気になるのを待ってたんです」
顔が笑っているが目があまり笑っていない。
「えと・・・何故怒っているのだ?」
「いいえ!怒ってなんかいませんよ!!」
と言いつつ怒る。
ふぅむ。
「・・・ユカ、私が何か悪いことをしたのか?なら謝る」
「・・・・・・・・・・・・はぁ」
呆れた目をした彼女は、少し何かを考えた後目を閉じてため息をつく。
更にボそりと独り言をつぶやくと、少し呆れた様子で微笑む。
「ま、家人さんですからね。そのくらいは覚悟してます」
「?」
「何か自分が悪いことをしたと思うなら、ガーデニングを手伝ってください」
「ああ、わかった」
とりあえず大きめのスコップで穴を掘る。
機嫌をなおしてくれたユカと他愛の無い世間話をしながら20cmくらい掘り進めると、スコップに何か固いものがぶつかった感触がした。
「む?」
「これなんでしょうか?」
埋蔵金だったりしたら嬉しいのだがな。
未知の物体を掘り出してみるとそれは古びた箱だった。
大きさはランドセル程度で、中世ヨーロッパ風の怪しい装飾が施されている。
「何が入ってるんですか!?」
「そう急かすな・・・・む、鍵がかかっていて開かないな」
「あ、ちょっとここを見てください」
「ん?」
ユカの指差した場所を見ると、そこにパズルがあった。
パズルは鍵の部分についていて、正方形の形の中に8つのピースと9つのスペースがある。
カシャカシャと上手く動かしていけば、1つの絵が完成しそうだ。
「このパズルを完成すれば、蓋が開くと言うことですね!」
「じゃあ私は花壇作りの方を進めているから、ユカはこのパズルをどうにかしてくれ」
「わかりました!」
ユカが眉間にしわをよせパズルを解いている横で、私は花壇作りを進める。
しかし土いじりとは良いものだ。
何処か清々しい気分がする。
そういえば昔は砂場で遊んでいたものだ。
一緒になって遊んでいた母さんが、泥団子を私に無理やり食べさせた思い出が強烈なのが残念なところだが。
その後、下痢で3日3晩苦しんだのは本当に辛かった・・・
「む〜」
私が花子おばさんから貰った土を穴に入れ替え、周りにレンガを積み始めた時点でユカにとうとう飽きが来たようだ。
「家人さん、ギブアップです・・・・交代お願いします」
「ああ。では後は頼んだ」
適当にそこら辺に腰掛け、パズルの攻略に取りかかる。
ふぅむ。
風化していて見にくいが、絵はどうやら何かの建物のようだ。
ここにこのピースを入れるとこっちが動けなくなってしまうから・・・ああもう!
パズルを睨みつけていると、我が家の住人が帰ってきた。
「・・・ただいま・・・」
「あ。おかえりなさい、リンちゃん!」
「おかえり、林葉。何処へ行っていたのだ?」
「・・・図書館・・・」
ユカに花壇について2、3質問をすると、今度は私の持っている箱に興味を移した。
「ああそうだ。林葉、これを解いてくれないか?」
「・・・ん・・・」
林葉は箱を受け取った後、数秒の間パズルを見つめる。
何かがピンと来たらしくカシャカシャとピースを素早く動かしていく。
「・・・はい・・・」
「おお、ありがとう」
ユカが長い時間をかけても解けなかったものを、林葉が1分もかからずに解いてしまうとは・・・・
努力賞の方に目をやると、案の定いじけていた。
「・・・・私も頑張ったんですよ?うぅ・・・」
「・・・えと・・・」
林葉は少し困ったような仕草をしながら、ユカを慰めようとする。
さて、パズルの絵はどうやら宝蓮荘の絵だったようだ。
ということはここに縁があるものが残していったものか。
中身あるものは何だろうか?
カチリ、と鍵を外し蓋を開ける。
「これは・・・」
どうやら私が勝手に見てはいけないもののようだ。
後で本人に渡してやるとするか。
「あ、家人さん。中身はなんだったんですか?」
「んー内緒だ」
にやりと笑う。
しかし2人は納得がいかないようで、ブーイングを受けてしまった。
「そ、そんなのずるいですよー!」
「・・・閲覧を所望する・・・」
仕方ない。
中身が何かくらいは教えてやるとするか。
「なんてことは無い。ただのタイムカプセルだよ」
へぇ〜とユカは爛々と目を輝かせる。
林葉も控えめだが少し見たがっているようだ。
「駄目だ駄目だ。こういうものは無闇に他人が見ていいものではない」
「えー」
「・・・不満・・・」
2人ともまだ納得がいかないようだ。
ユカはともかく、林葉も意外と好奇心旺盛だな。
「まあまあ。2人とも交換日記やメールの内容はあまり他人には見られたく無いだろう?その人たちだけの少し恥ずかしい話などもあるわけだしな」
「夢を語り合ったり、好きな人の話を人に見られるのはちょっと嫌ですね・・・」
「・・・なら諦める・・・」
おもちゃを買ってもらうのを諦めた子供のようだ。
その光景に思わず口元が緩む。
「さぁ、花壇をさっさと完成させてしまおう!」
「は、はい!」
「・・・支援する・・・」
林葉も手伝ってくれるなら大助かりだな。
ありがたい。
皆で花壇を作り始めると、あのタイムカプセルの箱に少し目がいく。
中にあった手紙に名前が書いてあったので、誰のものかはわかっている。
息子に泥団子を食べさせるようなあの馬鹿は、渡したらどんな顔をするだろうか。
タイムカプセルは橘蓮や曲尺、高峰麗香達のもの
久々に集まった彼らは、それを杯に居酒屋で盛り上がったようだ
新生活が始まり、多忙になったため更新が遅れました。
すいません。
・・・まあ欲しかった某シューティングゲームを友人から貸してもらったのも原因の1つですが。
本当にすいません。
更新は遅いとは思いますが、思い出した頃にお付き合いいただけたら幸いです。
で、今回の話について。
思うようにギャグが出ず、結局ギャグが少なめになってしまい失敗かなーと思ったんですが、終盤のあたりは書いてるほうは楽しかったです。
ほのぼのを書いているときが一番かもしれません。
私だけが和んでいるのも微妙ですが。
読者様と一緒に楽しめたらいいなぁと。
にしてもエイプリルフールを逃してしまったのは大きな痛手だった・・・